当たり判定ゼロ

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アニメ化の『八月のシンデレラナイン』、無駄に闇が深い美少女でスタメンが組める

美少女は大人気じゃないですか。
野球もたくさんの人が見ているじゃないですか。
 
ならば「美少女×野球」なんて、マスマーケットとマスマーケットの相乗効果で一見無敵の組み合わせみたいに見えるんですけど、なぜかヒット作の出ない死屍累々の修羅道なのですよね。美味しいとんかつと、美味しいパフェを組み合わせたら美味しいのかと思いきや、マズイ、みたいなもんですかね。
その中において、今もっとも美少女が野球やってるコンテンツとして熱いのは、ハチナイこと『八月のシンデレラナイン』でしょう。美少女が野球やってるゲームなんて他にほとんど無いので、時代を代表するゲームと言っても過言ではありません。しかも普段セルラン200位くらいをウロウロしているのに、何をトチ狂ったかアニメ化までしてしまう点でまさに唯一無二の野球ゲーと言えましょう。
 
まぁ、建前上は。
 
実際ハチナイをやってみると美少女ゲーらしく、イラストの良さと読ませるシナリオという、野球ゲームというよりもキャラゲーとしての側面が強いことに気付かされます。というより、結局ガチャ引いてスタメン強化してCPUを殴り続けるというゲーム性に、若干「野球かこれ?」という点もないではないですが、まぁ一応野球ゲームではあります。ヒットとかホームランとか書いてるし。守備位置とかもある。
 
で、そのハチナイなんですが、このゲーム、キャラクターにスポットを当ててシナリオを書くと変に闇が深くなるという謎の傾向があって、今日はそのあたりの話をします。
闇が深いと言っても「あははははは、私に生きている実感を感じさせてみせろよぉぉぉ!!」みたいなファンタジーな性格しているキャラクターが出てくるわけでもなく、登場人物はわりと喜怒哀楽のハッキリした普通の女子高生だし、なんかシナリオで無駄にレイプとか出てくる暗い話というわけでもないのですが、家庭環境に問題があったり、イジメだったりと地味に暗い。
 
「~で打線組んでみた」は一時期よく見たフォーマットですが、ハチナイは1ポジションに3~4人程度キャラクターがいるので、まさに当初の意味合いどおり選手で打線が組めてしまうんですよね。見ていきましょう。
 

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1番右翼手 倉敷 舞子(家庭崩壊)
俊足で投手も務め、攻撃に守備にと頼りになる倉敷先輩も、家に帰れば家庭が崩壊している。父親は他に女を作って家を出ていき、母親は娘に精神的に依存をして生活をしている。家族の関係改善を図りたい舞子が、せっせと貯めたバイト代で食事会をセットするも、スマホを気にする父親に母親が罵声を浴びせ大喧嘩。絵に描いたような家庭崩壊を見せられて金八先生かよと思うけど、本当にこれ野球のゲームなんですか?
 
 

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2番遊撃手 直江 太結(虚像の自分)
中学の頃の友達に再会して「今、投手をしていて皆から頼られていて…」と話してしまい、友達が練習を見に来たときにチームのみんなからリーダー扱いされることを演じてもらう羽目になる。口は災いのもと。ネットの世界でもハンドルネーム「棚尾ゆえ」を名乗り、頼りになる自分を演じる生活をしている。なぜかHR率が上昇する「一発の極意」のスキルを持っており、バントでホームランの絵が出てきて別のゲームを再現してしまう。
 
 

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3番投手 有原 翼(主人公)
本作の主人公。野球のことしか頭にない野球星人。その実力は高く、対戦した相手、肝心の有原は対戦した相手の存在自体を忘れていて心を傷つけることがよくあるナチュラル畜生。彼女の興味は野球という概念そのものにあるのであって、対戦した人間のことではないので仕方ない。ゲームにありがちな「設定だけ強いがゲーム上の能力は微妙」こともなく、設定同様どのレアも強い。現実は残酷である。
 
 

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4番三塁手 東雲 龍(有原翼被害者の会1号)
3人の兄のうち2人がプロ入りしている野球家族に生まれた野球エリートで、ぬるい練習をするチームメイトには厳しくあたる癖があり、「お前と野球するの息苦しいよ」と言われるタイプ。シニア時代は強豪チームに所属していたようだが、どれだけリードしても笑顔でプレイする有原翼のチームに逆転負けを喫したのがトラウマ。が、肝心の有原翼はそのことを忘れており、東雲が指摘しても全く思い出すことはなく、いたく傷ついた。
 
 

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5番左翼手 柊 琴葉(有原翼被害者の会2号)
東雲と同様、かつて有原翼のチームと対戦して破れている。その際に「世の中には才能というどうしようもない壁がある」と絶望し、一旦は野球を辞めている。クラスメイトが野球部に入ると言うので練習を見学した際に野球部を主宰する有原翼と再会するが、有原からは完全に忘れられており「はじめまして!」と、ひどいことを言われる。地を這う蛇の気持ちは、空を飛ぶ鳥にはいつまでもわかりはしない。
 
 

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6番中翼手 永井 加奈子(貪食の罪)
美少女キャラのウェストとしては異例の66を誇る圧巻のデブセンター。ハチナイで最も守備の低いキャラなのになぜファーストでもサードでもなく守備範囲の広いセンターをやらせるのか謎。HRを連発しやすくなる「おかわり」のスキルなど、明らかに西武のおかわりを意識している。昔はさらに太くて周りからも色々と言われていたらしく、男性が苦手な性格になった。ハチナイのことだから拒食症になるエピソードとかやりかねない。
 
 

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7番一塁手 野崎 夕姫(心が弱い)
大きな体に優しい心を持つキレンジャーみたいなファースト。もちろんおっぱいはデカい。足は遅い。ゲーム内では投手をやらせるととにかく直球が速く、最速で170km/hも投げるサウスポー。チャップマンくらい速い。練習についていく基礎体力がないことに加え、気が弱い態度が東雲の気に障るのか「甘えるな!やる気ないなら帰れ!」みたいな少年野球のコーチから言われる罵声をよく浴びせられていてつらい。
 
 

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8番捕手 椎名 ゆかり(カインコンプレックス)
「あはっ」が口癖の、いつも笑顔でみんなの人気者の美少女。しかし内面はスーパープレイヤーだった姉と比較されて育ったコンプレックスでドス黒く染まっており、一旦は野球を辞めている。高校でも野球部に入る気はなかったが、同じく優れた姉を持ちながら意に介するそぶりもない有原翼を見て心を変える。入部理由は「姉と比べて自分が劣った存在であるという、ゆかり自身が苦しんだ劣等感で有原翼も苦しむ姿を見るため」。
 
 

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9番二塁手 坂上 芽衣(イジメ被害者)
中学から野球部に所属しており実力は高いが、当初は野球に関わることを拒む。その理由は中学時代に受けたイジメ。このイジメのイラスト、グローブにハサミ入れられているところまではまだわかるんだけど、更にライン引きの中に捨てられてたっぽい細やかな描写が「お前もイジメ受けてたんか?」と開発に質問したくなる謎のリアリティ。ソシャゲ遊んでただけなのに、なぜかリアルなイジメ描写を見せられる!それがハチナイ!
 
 

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改めて振り返ると、『八月のシンデレラナイン』は長期間のリリース延期を経て、2017年に、8月とか言いながらなぜか6月にリリースされたゲームで、サービス開始から2年弱が経過し、ついに4月にアニメ化されることになりました。
最初は、画面に表示されたスコアボードの前に数字だけが並んでいくだけの「これ本当に野球が行われているのか?」という疑問しか浮かんでこないゲームでしたし、個人成績の表示すらありませんでしたが、2018年3月の大型アップデートで試合画面が実装されるなど、少しずつ「野球かもしれない」というところが出てきています。
 

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今では過去100試合の野手成績を見ることができるようになっているのですが、そこで実装された指標がなぜかRCとOPS。RCというのは走力も含めた総合的な攻撃力を表すセイバー指標で、それはそれで良いのだけど、なぜ防御率や盗塁数のような一般的な成績を実装する前から色々すっ飛ばしてRCから入るのか。おにぎりでも普通は梅とか明太子から商品化するだろうに、先にチーズおにぎりから売り出してきたような感じ。このアンバランスさ、実にハチナイ。
 
 

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ストーリーは、前述のとおり無駄に登場人物が心に傷を負ったエピソードを描いた話が多く、1番の家庭崩壊から9番のイジメまで切れ目のない打線はリーグでも屈指。
特に下位打線ながら8番の椎名ちゃんのエピソードはどれもネガティブで、心の闇マニアにはオススメの一品。椎名ちゃん、いい子なので外向きにはいつもニコニコ笑って明るい性格してるけど、心が病んでて事あるごとにすぐ自分の中でスイッチ入ってネガっちゃうんだよな。野球をしてないときは本当に楽しそうなのに。
 
 

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イラストは抜群に良いです。リリース以来イラストの品質だけが右肩上がりに向上し続けていてもはや怖い。特に「クレヨン絵師」と呼ばれる謎の絵師のイラストヤバイ。何かの間違いでハチナイが流行ったらクレヨンイラストの威力を世間が知って、クレヨンが一世を風靡することになるのにワンチャンあるくらいすごいぞ。
 
ともあれ、ゲームとしてみると、弱いCPUの木偶を殴り続けてポイント稼いでいく初期のソシャゲモデルから脱しきれていないゲームシステムに、これ野球ゲームである意味あるのかな?と思うことは1日に2回くらいあります。アニメだって日曜の深夜1時半とかいう放送時間は決して恵まれたものではないです。
 
でも、一つだけ確かなことがあります。
 
美少女が、野球をやっているんですよ。
それだけでハチナイを始める理由には十分じゃないですか。