生涯を添い遂げるゲームはありますか
年を食ってくるとご飯を食べる量が減ってきますが、代わりに昔に思いを馳せて暮らす時間が長くなって来るというバランスが設定されているのが人生というゲームです。
「物質的な食事」と「精神的な食事」の合計値は常に一定であり、子どもはたくさんご飯を食べて過去を振りかえることに人生を費やさず、老人は食の楽しみの代償に思い出話の楽しさを知ることができたわけです。
ゲームとともに生まれ育ったからには、それぞれの人間には一生遊び続けるゲームのシリーズというものは存在して、我々が死を目の前に迎える頃には20作も30作も遊び続けたシリーズがあり、その思い出話が残りの人生の精神的な食事になるのではないかと思うことがあります。自分の上の世代とかを見て考えても、おそらく人間は世代によって思い出話の内容が変わるだけで、思い出話をすること自体はおそらく避けられない生き物…。
未来に待ち受けるのが思い出話しかできない老人ライフであるならば、せめてその思い出話をしながら自分たちの人生を彩ってきたコンテンツに囲まれてそのまま死にたいじゃないですか。死出の旅には花なんていらない、ただコンテンツがあればいい。ちょっと前にやってた『セハガール』なんてのは未来のゲーマー老人ホームを疑似体験させてくれたアニメでしたけど、ああいう未来をこそ我々は獲得したい。
ついでに老人話をすると、今の老人ホームって趣味が混在している色んな人を押し込んでいるから、いわゆる「会話のプロトコル」が合わない人たち同士になっていて楽しくないんじゃないですかね。なので最大公約数的な娯楽である「歌」とか「トランプ」とかでしか楽しみを提供できない。非電源系ゲームを提供したところで「今更ルール覚えるのも面倒くさい」と興味ない人が殆どでしょう。 まだ若い大学生ですら「サークル」という形で趣味で分断することにより何とか集団を形成しているのだから、嗜好が硬直化した老人にとって趣味も人生もバラバラだった人たちで群を形成するのはさぞ辛かろうと思います。
ですので、サークル活動のように趣味で分断されたコンセプト老人ホームのような形態の方が人間は幸せになれると思うし、ニーズは実際にあると思うので、起業家の皆さんはぜひ未来のためにそういうビジネスを頑張っていただきたいです。ゲーム老人ホームに入ってダラダラ暮らせる未来が待っているならば年を取るのも怖くなくなるね! いいな、コンセプト老人ホームだぞ!
長くなりましたけど、おそらく自分にとって生涯添い遂げるゲームになると思われるのがパワプロで、初代パワプロからずっとやり続けてきていますが、この度めでたく2018版もリリースされるに相成りました。おめでてぇですね。 あと何年生きるかわからないけど、生きてたら絶対将来実況パワフルプロ野球2050とか遊んでるんだろうなぁ。というか書いてて思ったけどパワプロ2050とか数字増やしただけなのに語感ヤバいな! 言葉的には完全にサイバープロ野球感ある。めっちゃエレクトロであり、アンドロメダ高校の世界観だ。いや、実際その時が訪れれば普通の野球やってんだろうけど…。
まぁそんなわけでパワプロ2018ですよ。ゴールデンウィークどこにも行かずに、家でプロ野球見ながら終わったらスマホでハチナイの試合を走らせながらパワプロやるというバトルスタディーズもびっくりの野球漬けの毎日やってたので、今回もざっと感想入れていこうと思います。
パワフェスは、ほぼ前作の2016仕様そのままながら、余計なルーレットとか付いてきて、運が悪いと「大差付けて勝ったのに仲間になるのは敵のキャプテンのみ」みたいなことが起きるのがストレス。
回避法としては、全部同時停止させずに左と真ん中のルーレットを一つずつ止めながら、一番右のルーレットを止める際に「勝ったら3人」が9時の方向にあるタイミングで「option」ボタンを押せば、目押しで「勝ったら3人」を止められるくらいですかね。
ただ、そういう回避法使わないといけない時点で苦行ポイント高い。目押しめんどいねん。倒したチームのキャラを仲間にしながらトーナメントを進んでいくという冥球島方式の時点で面白いので、余計な要素は料理が油っこくなるだけという悲しみ。
ただ結局その冥球島方式自体が面白すぎるので、何周も何周も遊んでしまうですのよ。
パワプロをずっと遊んできたプレイヤーにとっては、過去のパワプロキャラと戦ったり仲間にしたりできるのは、それだけで思い出老人ホームの世界として楽しすぎるのよね。打席に立つたびに実況に読み上げられるキャラクターのエピソードとかつい聞いてしまう。友沢vsみずきの対戦だったら対戦中に特殊な実況が読まれるなどの演出もあり、キャラゲーとしての完成度は高い。
それだけに最近パワプロ遊びだした人にはわけわからんところはあるかもしれないけど、むしろ昔パワプロ遊んでて今遊んでいない人こそパワフェスを一度遊んでみてほしい。自分の脳にある過去の思い出とミックスして遊ぶゲームですよ、これは!
あと、過去のシリーズのキャラを持ってくるという体裁にすると、女にモテるキャラ付された選手が多すぎ問題。ミートの高い器用なショート(サブポジでセカンドとかサードができがち)とかエグザイル並に増殖してるし、イケメン属性ピッチャーの数はもはや不明。アゴがデカイ奴は大体パワーヒッター。このまま増え続けるとパワプロ2050のパワフェスとかイケメンだけでファランクスが組めそう。同じ顔の主人公とデブのキャッチャーとヒロインが毎回いるというあだち充現象に代表されるキャラクター構成の繰り返しはサクセスにおいても似たようなものであり、その作りを続けていくことが今後のパワプロに呪いとなって降りかかりそうな気がする。「あだち充の呪い」と勝手に名付けよう。
ちなみにパワフェスは難易度が高いという意見もちょくちょく聞いたので、一種の攻略法みたいなのも書くと、投球は緩急とコーナーです。プロスピやってた人だとわかると思うけど、パワプロも(おそらくだけど)内部ステータスとして緩急ゲージのようなものを持っていて、速い球、速い球と続けると、CPUが内部で持つ緩急ゲージが「速」の方に寄っていって速い球に強くなるんですよね。
そこでチェンジアップのような遅いボールを投げると空振りする確率が高くなります。だから、0-2に追い込んだシーンがあったとしたら、インハイのボールゾーンにストレートを2球続けた後にアウトローにチェンジアップを落とすと良いです。
左右のコーナーも同じで、アウトローが打ちづらいからと言ってアウトローを続けるとCPUの目線がアウトローに寄るので、適度にインハイを織り交ぜると良いです。やりすぎると投球も作業ゲーになってしまうので、左打者にバックドアのシュート入れて遊んでみたりとか、リアルっぽい投球するのが一番野球感あって良いよね。
サクセスはついにボイス搭載ということでテンポ悪くなるかと思ったけど、思ったよりストレスないし、ボイス入って良くなったね。市枝いちごの口癖である「○○、○○です!」のリフレイン表現の良さは、ボイスがあることで味わいが全然違った。ただ、会話フェーズで声ありなのはいいけど、試合まで声ありにしてしまったから、1球投げるごとに「おりゃあ!」みたいな男の掛け声を聞かないといけないのはちょっとつらい。
前にもどっかで言ったことあるけど、自分はパワプロのサクセスやる時間を捻出するために高校で野球部辞めた人間なんで、サクセスにはわりと思い入れがある方だとは思います。その人間から見ても、このご時世になって3年のサクセスはさすがに長く感じる。ここ最近のサクセスが1年間だったんで、昔と比べて物足りなさを感じてたけど、我々は既に短時間で幸福回路を全開にする最近のエンターテイメントに脳が飼いならされてしまっている。パワプロが変わったのではない、変わったのは我々の方だったのだ…。
一方で一番変わったのが、実は栄冠ナイン。明らかにCPUの打撃の思考ルーチンが弱まっており、三振率が高まって全体的に打率が下がったことで投手戦になりがちという大きなゲームバランスの変更がある。かと思えばオートプレイだと打ち込まれたりして、難易度もシビアで甲子園に行くのすら大変なリアルさ。昔こんな難しかったでしたっけ…。『ラストイニング』の鳩ヶ谷監督が神に見えてくる。
今作はエラーの発生確率が高く、捕球Gだと野球にならないくらいポロポロしてしまうので、性格内気の選手を集めて亀のように守備を固め、イニング終盤で魔物に襲いかからせてエラーの発生を祈るという戦法が強い。アフリカの呪術師か。
ちなみに今作から、投球画面で俯瞰視点というメジャーリーグ中継みたいに真上から見る視点が追加されており、良いです。リプレイの際の変化球の曲がり方とか打球の飛び方も見てて楽しい。野球ゲーム部分で不満があるとしたら全力ストレートが球威高すぎて打球が飛ばないから強すぎるというという点くらいですけど、それは今後のアップデートで修正予定らしいんで、全体的に良いバランスに仕上がってるんじゃないかと思います。
パワプロって初期の頃は、ヒットと言えばセンター前ヒットで、一二塁間と三遊間抜けるゴロヒットが殆ど出ないバランスだったりしたのが徐々に改善されて、今ではどの方向でもヒットが出るようになったり、カーブやチェンジアップがただの打ち頃の球だったのが、パワプロ2011くらいあたりから緩急で空振り取れるボールになってたりと、地味に本来の野球部分で細かい進化を遂げてきたゲームだと思うんですよね。
シリーズを続けていく中で新しい取り組みやゲームバランスの変更なんかをやらないわけにはいきません。毎回同じ仕様のゲームを買う人はいないし、変わらないということは自ら死を選んだに等しいので、ゲームというのは生き延びるためには変わり続ける必要があるのでしょう。
時にはクソみたいなゲームモードやクソバランスになることもあるでしょう。今回だって全力ストレート強すぎ問題のほか、栄冠ナインのバランスもうちょっと直してもらいたいし、能力アップの画面で動作がモタつくのも改善してほしいところある。しかし、科学の発展には犠牲がつきもの。逆説的ですが、生き残るためには失敗をする必要があるのです。
そしてパワプロは生き残り、パワプロ2050、パワプロ2060とリリースされるにつれ、SFC時代から遊び続けてきた多くのプレイヤーがその人生に幕を閉じていく。 その時きっと、死ぬ間際こう思うのでしょう。
「何かパワプロやってるだけで人生終わった気がする」と。