モゲマス経済通信特別号：大統領に訊く、復刻Sレア放出祭りと今後の展望

よう、俺だ。前大統領だ。引退してからはテキサスでぼちぼちとゲームを楽しむスローライフを送っている俺だが、最近イチオシのゲームは『アイドルマスターシンデレラガールズ』だ。

このゲームは、従来のアイマスキャラのみならず、100人を超える新規アイドルキャラクターも登場し、自分好みのメンバーを編成できるとてもエキサイティングなゲームなんだ！　それに自分の好きなキャラを強化・合成して強力なキャラクターに育てることの奥深いゲーム性が魅力で、仲間と協力してプロダクションを育てたり、ほかのプロデューサーのユニットとLiveで戦ったりしてナンバーワンを目指すことができる激アツなゲームなんだ！　こんなゲーム見たことない！！　今ならお正月限定のお得なガチャで期間限定の強力アイドルがGetできるぞ！　今すぐ下のリンクを押してゲームを始め……ハッすまない。招待の話じゃなかったな。つい癖で、スマンな。

プロデューサーのみんなはもう知っていると思うが、『アイドルマスターシンデレラガールズ』では、年末から年始にかけて10連レアガチャが無料で回せたり、復刻Sレア10％チケットの濫発、挙句の果てに復刻Sレア確定チケットまでガチャで当てることができた。まるでオバマの公共事業のような大盤振る舞いじゃないか。……ああ、君たちの国もこれからそうするんだったな。

これらの公共事業により、コンプ春閣下やコンプ美希などの対象Sレアは軒並み50％程度価格が下落しており、まるでウォルマートのブラックフライデーセールのようだ。利益を得られたのは、これまで限定Sレアに手が出なかった微課金・無課金層だろう。一方、既に限定レアを所有していた富裕層は手持ちの資産価値を大きく目減りさせたほか、微課金・無課金層の強化により保有アイドルの性能の差も縮まった。

消費税という税がある。消費税は消費に対して平等に課税するため、富裕層に優しく貧困層に厳しい逆進性が指摘されているが、無料のレアガチャや限定Sレアの大量配布は、言ってみれば消費税の逆であり、富の再分配の効果をもたらしている。君たちの国で言えば……そうだな、地域振興券や子ども手当がそれに近いだろうか。俺は嫌いだがな。勝ったものが全て持っていくのがスジだろうが。

大衆への優遇政策は、新規移民の流入政策とあわせて考えるとさらに適切だ。今、テレビをつければ『アイドルマスターシンデレラガールズ』のインパクトあるCMを頻繁に目にすることができるだろう。同時に、カムバックキャンペーンも開催しており、これら新規流入層及び復帰層はピラミッドの裾野の拡大をもたらす。彼らは、無料10連レアガチャや復刻Sレアにより一気に富裕層との差を詰めて、ゲームを楽しむことができるわけだ。

ソーシャルカードゲームは、時間を追うごとにステータスの差・ユニット性能の差として広がっていき、新規参入の難易度が徐々に上昇していくモデルを備えている。つまり、次第に開いていく格差を、適所でガス抜きして縮めてやる必要があるということだ。
新規への優遇政策はまさにこのフェーズにおける対応であって、昨今の運営政策は、元を辿ればすべて人口拡大政策に一貫して整理することができる。

しかし、これまでオウンリスクで多くの投資を行なってきた富裕層に対する配慮はもうちょっとあってもいいと俺は考える。君たちは、何万円、何十万円というカネを電子の海に惜しげも無く瞬時に放出する資産家を見たことがあるだろうか？3000円を上納する貧民が10人集まったところで、彼ら一人の納税額のほうがはるかに高額だ。やはり政府は富裕層に対する手当を厚くするべきだし、実際にそうしていくだろう。やはり、政府は経済を牽引する富裕層を無視することなんてできやしない。

1年前と違い、今や通常レアはノーマルほどの価値しかない。微課金・無課金層の主力が強レア、Sレアになってくるにつれ、それを圧殺する権利を富裕層に与えるためには、かつてコンプ春香がレア小早川社長を蹂躙したような力関係が必要だ。すなわち、かつての1万に対する1万5千。これからは貧困層の1万5千に対する富裕層の2万というバランスがスタンダードになるだろう。

牧場へ羊を誘導する時間は終わり、これからは狼が羊を蹂躙するフェーズに移行するだろう。アイドルの性能インフレは、ハープーンのように加速を始める。手元のガチャチケットは、旧時代の戦力を手にするよりは、しばらく保管しておいた方がいいのではないのか？

最後に、俺の嫁について語っておきたい。
俺のイチオシは、言うまでもなく池袋晶葉ちゃんだ。かわいらしいツインテールと裏腹な自信満々な表情、そして何より科学技術っ娘！科学技術はアメリカを先の大戦に勝利させ、科学技術により生み出された核兵器の抑止力は結果として世界の安定を導いている。まさに科学技術こそが現代アメリカの象徴であり、研究する晶葉ちゃんの姿は、まるでロバート・オッペンハイマー博士が女の子になったかのようだ。
アイドルプロデュースに晶葉ちゃんが登場しないことについても、運営は適切な判断ができていないと言わざるをえない。「千枝と半分こしたせんべい」なんてアイテムを作るよりは、「晶葉と半分こしたウラン235」の方がアメリカ的でよりエキサイティングになるのではないかと思う。次回のアイドルプロデュースに期待したい。