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今さら聞けない『アイドルマスターシンデレラガールズ』とは?

モゲマス経済二年史、あるいはスタドリ思い出話

asakura-t

このへんの歴史も興味深いのですが、モゲマスのゲーム性とかゲームフロー的なものを知らないのだけど今更聞けなくてつらいので誰か教えてください…。こんな感じのでいいので>http://d.hatena.ne.jp/asakura-t/20140209/kancolle

リクエストがあったので、がんばって答えます。Wikiの記述等と少し違うかもしれませんが、その辺り個人的な解釈が入っているかもしれませんのでご容赦ください。

アイドルマスターシンデレラガールズ』とは、アシスタントの千川ちひろさんを通じてバンダイナムコホールディングスDeNA及びCygamesに貢ぐことを目的とするゲームです。プレイヤーはアイドルのプロデューサーとなり、定期的に更新されるガチャでアイドルを買ったり、イベントで走るためにドリンクを買ったりすることができるなど、自由度の高いフリー課金システムを採用していることが特徴です。

一度のガチャで目玉のSRを1枚得るために必要な投資額は、日本円にして約5万円。1回のイベントで上位報酬(1200位以内)を獲得するために必要な投資額は、日本円にして約2万~5万円程度と言われています。

イベントは、サービス開始から2年間断続的に開催され続けてきており、前のイベントが終了してから次のイベント開始まで中2日以上空くことはほとんどなく、プロデューサーは常に働かされ続けます。イベントは様々なものが手を変え品を変え提供されますが、代表的なところでは、APのような時間経過またはアイテムで回復できるポイントを消費して敵を殴ったポイントを競うイベントや、日本円で買えるアイテムをアイドルに与えて得られるポイントを競うイベントがあります。

最も盛り上がる「フェス」と呼ばれるイベントは、プロダクション同士の対抗戦で、回復アイテムを消耗して相手を殴り続けてたくさん殴ったほうが勝ちとなります。「札束で殴りあう格ゲー」という異名で呼ばれているのがコレです。上位報酬を取って目立ったり、フェスで仲間のためにたくさんお金を払うとまわりの人が褒めてくれますが、承認欲求がどーたらこーたらとネットでインテリの皆さんから言われて嫌な思いをするデメリットもあります。

しかし、本作においては「ソシャゲは重課金無課金を一方的に殴って優越感を得るゲーム」という理解は当てはまらず、重課金プレイヤーが無課金プレイヤーを殴る必要性はほぼ皆無な構造であり、仕組み上、重課金者は重課金者同士で順位を争うことになります。また、多くの無課金はライトユーザーであり、そんな上位の争いにそもそも興味が無いため、結果的に重課金同士で争い、称え合っているのが実情です。

カードの性能だけでなく、プレイヤーであるプロデューサーの性能も育てることができます。

プロデューサーには「スタミナ」「攻撃」「守備」の3つのステータスがあり、「スタミナ」は仕事を進行させ経験値を稼ぐために使用します。「攻コスト」は他のプレイヤーを攻撃するため、「守コスト」は他のプレイヤーから攻撃を受けても弾き返すために使用します。ただし、前述のフェスなどで回復アイテムを使わせてたくさん攻撃させることが課金に繋がることから、守備にイベントなどでの優位性は設定されておらず「守コスト」は実質死にステとなっており、2chの本スレなどで「モバマス始めたんだけど、どのステータス上げていったらいい?」と尋ねると「最初は守備上げてガード固めておけ」などと親切なアドバイスをいただくことができます。なお、一度振ったステータスは、プロダクションに所属してもらえるボーナスポイントを入脱退して振り直しする以外は、振り直すことができません。

アイドルにはそれぞれ「10」「16」のようにコストが振られており、プロデューサー(プレイヤー)の攻コストの範疇でバトルに参加させることができます。たとえば攻コスト100のプロデューサーはコスト16のアイドル6人でほぼ一杯となってしまいますが、コストが200あるプロデューサーは12人と少し(端数は本来のコストから按分して能力を発揮)参加させることが可能です。

このシステムには問題があって、プロデューサーの保有コストが多ければ多いほど有利になってしまいます。すると、先行者有利に歯止めがかからないため、人口の新規流入が期待できません。ネトゲは多かれ少なかれ先行者有利なものですが、後発参入者でも不利とならない施策を打ち出して流入の活性化を図る必要があります。

そのため、最近のイベントではイベント用に手持ちのアイドル10人を選んで参加させる仕組みが採用されています。いくらコストがあっても11人以上参加させることはできません。Sレア10人を参加させる程度のコストであれば、その気になれば1ヶ月もかからずに確保できますので、後発参入者でもすぐにイベントで上位に食い込むことは可能です。必要なのはちょっとした覚悟と札束だけです。このようにヒエラルキー的にどのポジションにいても、課金で一気に上位に食い込むことができる仕組みが維持されているため、すべてのプレイヤーがどのタイミングでも自由に課金を楽しむことが可能となっています。

人口の流入は、モバゲーお得意の「招待」という手法でも担保されました。モゲマスを始めていないお友達に招待メールを送って始めてもらうと、お互いに利益があるという仕組みです。最盛期は聖教新聞の勧誘もこれほどではなかろうというほど目の血走った人たちが招待特典を求めてさまよい歩きました。親兄弟が見ていない間にケータイを失敬し、ポチポチと番号をモバゲーに売り渡した外道も少なくありません。

売り渡すのは人間そのものではなく番号であるというのもポイントの一つで、特別な方法で友達をたくさん作って招待する方法もあったようです。モバゲーのプロフィールの友達欄に、食べ物の種類が並んでいたり、魚の種類が並んでいたり、ずいぶん変わった名前の友達をたくさんお持ちの方なんだなぁと思われる人たちも存在します。

ただし「バンナムDeNAに貢ぐ」というゲーム本来の遊び方から外れた一種のバグのようなものであるため、不思議なお友達を持っている人たちは、見つかり次第みな殺されました。

不要となったアイドルは「フリートレード」という市場に出品することができます。そこでは、ゲーム内のスタミナ回復アイテムである「スタミナドリンク」(通称スタドリ)が主要通貨として機能しています。スタドリは通常購入の場合、1本100円。もっとも高いSレアはスタドリ1000本弱の価格帯となっており、「アイドル1枚10万円」の由来はここから来ています。ただし、スタドリを1本100円の正規の値段で買っている人はほぼおらず、セットでまとめ買いすると割安であったり、ガチャのおまけでついてきたりするので、実質的には1本100円未満で調達可能です。

フリートレードに出品するためには、トレードチケットが必要ですが、手持ちのチケットが3枚以内の場合、3枚を上限に毎日無料で付与されます。トレードチケットは、ガチャを回してもおまけでついてくるので、数千枚持っている人もザラにいます。2012年7月以前は、フリートレードというシステムがなく、外部掲示板で条件を交換してトレードを行う商法が主流でした。トレードチケットという売買回数のキャップがないことから、相場の流れを上手く読めば課金なしでスタドリを増やして成り上がることも可能であったため、多くのプロデューサーが人身売買の道に堕ちました。しかし、現在でも値動きの激しい高い価格帯のアイドルに絞って投資するなどすれば、トレードチケットを多く消費することなく利ざやを稼ぐことが可能です。

レア以上のアイドルが引けるガチャは通常1回300円ですが、スタドリが15本ついてくる10回3000円のセットなど、様々なセット商品が常時提供されています。ガチャの確率は、SR1.5%レア98.5%という良心的な比率なので安心です。SRを引いたとしても、トレードに出してもスタドリ1桁にしかならない、いわゆる「ハズレ枠」も多く存在するため、万が一、SR確定演出が出ても最後まで安心できないスリルを楽しむことができます。

もし仮に1セット3000円だけの投資で目玉アイドルを引き当てることができたものは「あんたん」と呼ばれ蔑まれます。「あんたん」とは「安心の単発ID」の略で、すなわち他のプロデューサーに「3000円で引けたんだからお前も引けよ!イケるよ!」と単発IDで報告して射幸心を煽ってくる工作員のことを指します。実際は、3000円で引けるわけないですし、引いたという報告はすべてウソです。ガチャにはせめて3万円は握りしめて望みましょう。

最後に『アイドルマスターシンデレラガールズ』でプロデューサー生活を始める魅力を。

どうしても課金ばかりに目が行きがちな本作ではありますが、1時間で消費ポイントが全回復してしまうイベントに2週間ほど張り付くために生活を失う苦痛、上位を目指すために数時間張り付いて回復しては殴り回復しては殴りしなければならない労働感、手持ちのアイドルが時間とともにどんどん値下がりして自動的に資産が目減りしていく悲しみなど、お金で買えないたくさんの価値をマスターカードばりに得ることができるのです。

いつか訪れる、ゲームを終える未来に「あぁ……自分は一体なんということをしていたんだ……」というかけがえのない思い出を約束します。