当たり判定ゼロ

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MMOと、人と人と

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FF14にはLodestoneという日記を書けるサービスがあって私もちょくちょく書いてるのですが、あるとき画面のスクリーンショットをアップロードして日記を書いたら「画面狭すぎでは」「カメラを引け」「モンハンでもやってるの?」と各所から大変暖かい励ましのお言葉をいただきました。ありがとうございました。
 
日記、ちょくちょく書いてってるんで良かったら監視していってください。 
 

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で、最近も引き続きFF14やってるんですが、今日はMMOのコミュニケーションの話をしたいと思います。

FF14ではリンクシェル的な内輪でのコミュニケーションが多めになりがちで、UOジェネレーションっ子(UOで初めてMMOを遊んだ人の意)にありがちなのかもしれないけど、どうしてもギルドチャット的なクローズドなコミュニケーションにMMO的な手触りはないよなーという感じがあって。今どきの若い子にはこの感覚わからないかもですが、昔話をすると、戦前から昭和にかけてのMMOでは今で言うところの「Say」によるコミュニケーションが基本で、例えばブリテイン第一銀行前でたむろしながら隣にいる人の会話を見ながらダラダラ過ごすというのが仕事を終えた前世紀のサラリーマンの一般的な夜の過ごし方だったんですよね。
その中で、近くの会話に加わってみたり、知らない鍛冶屋さんに武器の修理をお願いしたりするという出会いが発生して。オープンチャットであるところの「Say」から発生する隣の人との出会いは、さながら新宿のゴールデン街のバーみたいなもんでした。たまたま隣に座ったお客さんは一期一会の飲み仲間。私も初めてギルドに誘われたのは、自分のいかにも初心者っぽい会話を近くで見ていた人から誘われたものでしたし。そう、大事なのは「偶然」なんだ。
 
偶然隣りにいたとか、偶然知り合いと話してるのを見たとか、偶然ダンジョンで助けられたとかの、「偶然」から始まってゼロから人間関係構築のフィージビリティを探っていく感覚は、独特の心理的高揚感があって終始ドキドキします。人間関係においても信長の野望と同じで序盤の構築戦の盛り上がりのようなものはあるわけです。ただしこれにはストレスが伴って、人間同士が文脈を共有するためには相手に配慮しながら徐々にパーセプションギャップを埋めていく流れを消化していく必要があるので、この手続きを踏んでいくのが面倒で好きじゃない人もいるだろうなーというのも理解できます。
 
一方で、ギルドチャット的な(FFで言えばリンクシェルとかの)クローズドチャットであれば、そりゃもう絶対的な安心感があるわけですよ。
クローズドチャットは一種の「ムラ」ではあるので、「ムラ」で事件を起こして村八分になったり、苦手な村人ができて足を運びづらくなるリスクはあるものの、基本的には勝手知ったる人ばかりなのが原則。そこには仲間がいて安心があっても、ムラの外の人は排除されている。
 
FF14の町中にどれだけ人がいても会話がほとんど見られないのは、基本的にソロで成り立つゲームというのもありますが、リンクシェルが便利すぎて(あとゲーム外だとディスコードもあるし)みんながそこに引きこもっているからというのがあります。ただ、それが直ちにダメというわけではなく、文明って多分そんなもんなんですよね。テクノロジーが発達して距離の離れた知人とローコストでコミュニケーション取れるようになると、距離の近い知らない人とコミュニケーション取る必然性って下がるんでしょうね。
 
みんな確かにそこにいるんだけど、お互いコミュニケーション取ってないように見えて、実はそこにいない誰かとコミュニケーションを取っているという光景、どこかで見たなーとおもったらこれ通勤中の満員電車ですよ。電車の中で人が無言でLINEしているように、黙ってつっ立っているように見えるリムサ・ロミンサの人たちは実はリンクシェルで会話してる。
しかし、多分これは現実世界の我々の未来の姿。スマホさえ持つ必要がなくなったとき、きっとこうなる。テレパシー会話は内輪のコミュニケーションを強化して、外部とのコミュニケーションを遮断する。リムサ・ロミンサの不気味な人々は、未来の我々そのものだ。
 
でも、はたしてそういう方向でいいんでしょうかね。
 
だって、だって……知らない外人と出会って「Fack!」と言ったら「oh,Miss spell,Fuck!」と指摘されてその後一緒に冒険したエピソードとかめっちゃうらやましいじゃんよー!あとラグナロクオンラインの『あるアサシンの物語』とかさー。うえーん、私だってそういう経験したいよー!
人は、そんなことありえないとわかりながらも、心のどこかでは自分を巻き込んで冒険に連れて行ってくれる「誰か」を探しているんだ。
 
だったらいっそ、人間のフリをして「出会い」を提供するNPCをブッ込んでみたらどうだろう。
今流行りの「AI」とやらを使えばそういうのができるんだろチミィ(重役の顔をしながら
 
 
あなたは町中を歩いていると、後ろから声をかけられる。
振り返ると「そのファッションいいですね!どこで買ったんですか?」と話しかけてくるミコッテの女の子(のAI)がいた。
別に大したことじゃないと説明しても「センスがいいです!」とべた褒めしてくる女の子(のAI)。いつからかダンジョンに一緒に行こうかという流れになり冒険に出る。女の子(のAI)はあまりゲームが得意でなく、度々ピンチに陥ることもあって冒険は大盛りあがり。「また遊びたいです!そうだ、よかったらうちのフリーカンパニーに来ませんか?」と声をかけられる。
行くあてもなかったので誘われるままにカンパニーハウスに行く。そこいたのは、リーダーシップ溢れるヒューランの青年であるマスター(のAI)、口下手で不器用だけど優しい人柄のルガディン♂(のAI)、自分が中心じゃないと気がすまないのであなたが来たことに少しイラッとしているララフェル♀(のAI)、態度には出さないけどあなたがこれから上手くやっていけるか気にしている心配性のアウラ♂(のAI)、そしてあなたに声をかけてここまで連れてきてくれたミコッテの女の子(のAI)。
彼らのフリーカンパニーに加わることになったあなたは、FCのみんなと厳しいダンジョンをクリアし、何度もリトライしながら難しい蛮神を征伐し、ときにはカンパニー麻雀大会を開いて笑い合ったりしながら、親交を深めていく。そして1年が経ち、あなたはプロポーズに成功し、エターナルバンドで永遠の愛を誓うことになるが、あなたの傍らに佇むのは、あのとき声をかけてくれたミコッテの女の子(のAI)だった。最高……。ファイナルファンタジー14最高……。
 
 
以上の物語体験をプレイヤーに与えることが、ファイナルファンタジー14の開発コンセプトとなります。
 
気が付きましたか?FF14のパッケージの裏側には「プレイヤー人数:1」と書かれていることに。
このゲームはAIにあたかも人間がプレイしているように振る舞わせることで擬似的にオンラインで遊べるように見せかけていますが、本当は1人で遊ぶためのゲームなのです。ゲームの中にはあなたしかいません。
 
最近常時接続が当たり前になったので気がついてない人も多いと思いますけど、試しにルーターの電源を抜いて、そのままもう一度ゲームを起動してみてください。いつもと同じ画面が表示されて、いつもと同じ人達と遊べると思いますよ。

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