当たり判定ゼロ

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AIが導入されたらお前の仕事が楽になるんじゃないお前がいらなくなるんだよ問題について

子どもの頃こう思ってたんですよ。

「未来はいつかアンドロイドみたいな機械が仕事を代わってくれるようになって、人間は遊んで暮らせる幸せな世の中が訪れるんだ」と。たぶんドラえもんで刷り込まれたイメージがそこには強く働いていたのだと思うし、小さい頃に読んだ未来予想図の本には必ず空中にかけられたチューブの中を走る電車や空飛ぶ車が描かれていた。人類の未来はテクノロジーでバラ色だ、みたいな思想がその根底にはあったはずじゃないですかね。

2018年になった今、そんな未来は絵空事だったのかと聞かれるとたぶんそんなことはなくて、テクノロジーで描かれた未来は一歩一歩確実に近づいてきている。アレクサはゴミ出しはしてくれないけど、声で頼めばニュースを読んだり、切らしてしまったスプライトをAmazonに注文するくらいはやってくれる。完全自動運転のGoogleカーは当たり前のようにアメリカを走っているし、日本ですら自動運転のタクシーが公道を走り出した。チェスや将棋ではもはやAIに敵わない。投資は難しいこと考えなくてもロボアドバイザーがやってれるし、入国審査は画像認識ソフトの顔認証に置き換わった。

私たちはあの日描いた未来予想図の入り口くらいにいる事自体は間違いないのでしょう。 

ところで今年発売された『デトロイト ビカム ヒューマン』はそこから更に一歩先を描いたSFゲームの傑作ですけど、もうやりました?

デトロイト』の舞台は2038年。汎用AIを搭載したアンドロイドが商品化され、そこでは人間はアンドロイドに各家電のコントロールや家事を任せることができるようになっています。現在のアレクサやグーグルホームのように各家電の中核となる機能をアンドロイドの判断でやってくれたらそりゃ楽ですよね。買い物に行って支払の決済もやってくれるし、朝ごはんも作ってくれるし、ゴミ出しもしてくれる。アレクサ、お前に求めてるのはこれだよ。

ゲーム自体は「アメリカンやるドラ」という印象で、選択肢や行動によってドラマに対してプレイヤーが主体的に介入できて、シナリオはインタラクティブに進んでいきます。すべての選択肢は制限時間が設けられていて、どっちが正解とかではなく、どちらも正しいように思える価値観を問うような選択ばかり。

だから「あ~逆の選択選んだらどうなったのかな~!」ってのがすげえ気になるゲームなんですよね、これ。よくある性格診断とかだと「こっち選んだらこういう結果が出てくるんだろうな」ってわかっちゃいますけど、『デトロイト』みたいな絶妙に価値観を問う質問の方が本当の人間性って出ると思いますわ。それに、何というか自分の選んだ選択に後悔させることで「時間は戻らない」という当たり前の事実をゲームの中で再現するから、ゲームがリアルに近づいてくる感じもある。 

インタラクティブのシナリオって選択肢によって展開の数が跳ね上がるので、めっちゃ贅沢ですよ。日本のやるドラが続かなかったのも、この負担の問題がある気がします。

デトロイト』のメイキングムービー見てると、「映画は台本100ページくらいだけど、デトロイトは台本4000~5000ページくらいかかった」とかサラッと言ってておったまげるんすよね。『アンティルドーン』もそうだったけど、インタラクティブなゲームはその膨れ上がっていくボリュームとの戦いというのがあるよね。それに紙芝居だったらまだしも、最近は映像のリアルさも求められるからコストも跳ね上がっていく。たぶんインタラクティブシナリオゲーって大型のスタジオじゃないと出せなくなるんじゃないですかね。それこそ最終的にはAIに勝手に判断して作ってもらうゲームのジャンルになるのかもしれない。

ともあれ、今日は『デトロイト』のインタラクティブ性の話じゃなくて、『デトロイト』の世界の話をします。

 

デトロイト』の世界では街を歩くと、アンドロイドに職を奪われた人々のデモが行われているのが目につきます。ニュースや雑誌の記事でもアンドロイドによる失業者問題は繰り返し流され、ホームレスはアンドロイドに対する恨みを書いたダンボールを足元に置き、ミュージシャンは「Human Music」をウリにして街角で演奏している(ポピュラーな音楽がアンドロイド製に置き換わっていることを意味する)。「AIが使われることで死ぬ職業リスト」みたいなのが最近良く出てくるようになりましたけど、クリエイティブだから生き残るかというとそうでもないのかもしれません。

ちなみに「AIで死ぬ職業リスト」で必ず上位に出てくるのが税理士ですけど、個人的にはAIが税務機能を担うようになっても税理士は死なないと思ってます。税理士の本当の付加価値は、税金を計算することではなく「税務ハック」だからですね。いわゆる節税のご相談です。節税だって会計技術なのだからAIが普及したら一般的になるのではないかと考えられるかもしれませんけど、節税に限らずこの手の「大きい声では言えない技術」は一品ものの性質が強く、1件上手く行ったからと言って同じやり方を敷衍的に適用するものでもないし、また広く共有していく知識でもありません。それゆえAIへの適用は不向きだったりするためです。

そういえば私の会社でもいつの間にかAIやRPAを導入することになってて、どういう業務フローに対して導入するか考える前から「結果的にコストが削減されるという事実」が先に決まっているという日本の会社にあるあるな状況になってますけど、今結構こういう会社多いんじゃないですかね。

まぁともあれ、AIやRPAで人間の仕事を置き換えることが、求められてきているわけです。

冒頭の繰り返しになりますが、子どもの頃こう思ってたんですよ。

「未来はいつかアンドロイドみたいな機械が仕事を代わってくれるようになって、人間は遊んで暮らせる幸せな世の中が訪れるんだ」と。

あれ、確かに思っていたより早くその時は訪れているじゃないか。目の前に、今。

でもなんか思ってるのとちがくない? これ絶対遊んで暮らせるようにならないでしょ。

同じような話はこれまでにもずっとあって、例えばパソコンやインターネット。昔は手書きで文書を書いて郵便で送っていました。これがメールをちょいっと書いて送れるようになったんだから、書く人の手間もなくなって郵便屋さんも無理に働く必要がなくなっているはずですよね。

今、郵便屋さんだった人たちは遊んで暮らせていますか?

例えば製造業の工場。昔は工場に大量の人間がズラッと並んで旋盤を使って金属加工を行っていました。今はファクトリーオートメーションが進化して自動加工のマシニングセンターが自動で金型を生み出し続けています。

今、工員だった人たちは遊んで暮らせていますか? 

実は技術がどれだけ進化しても労働者は遊んで暮らすことはできないのですよね。

根本には資本主義と所有権があって、そのマシニングセンターは工員さんのものではなく、資本家のオーナーのもの。オーナーからしてみれば、生産するための道具が人間から機械に代わっただけです。今のAIやRPAも同じ。 

AIであなたの仕事が楽になるんじゃない、あなたをAIに置き換えるんですよ。オーナーは新たにAIを維持するコストを負担することになりますが、これまであなたに支払っていた賃金はオーナーの懐に入ることになります。言ってみれば、これまではオーナーとあなたが共同で働いて成果を共有していたのに、オーナー1人で済むようになったのであなたにカネを与える必要がなくなったのです。 

資本主義と所有権という概念がある限り、AIの稼いだ成果はあなたではなくオーナーの懐にはいるので、AIはすべての人間を遊んで暮らせるようにする幸せな道具ではなく、人間の格差を更に拡大させるものとなることでしょう。

世界の人間は、AIを所有する側とAIに置き換えられる側に分かたれていくのです。 

AIは確かに便利です。しかし、あなたはそのAIにより職を奪われた今、AIを利用するための費用をどのように手にすればよいのでしょうか? 

デトロイト』の主人公の一人、お手伝いアンドロイドのカーラの家にはアリスという女の子とトッドという父親がいます。 

トッドは典型的なダメ野郎で、元々はタクシードライバーでしたがアンドロイドに職を奪われ、家で飲んだくれて違法ドラッグに手を染めています。カーラのシナリオは、アンドロイドショップで修理を受け、意識を取り戻したカーラをトッドが取りに来るところから始まります。記憶は失われてしまっていますが、どうやらトッドがカーラに暴力をふるっていることを伺わせます。トッドは娘であるアリスにも暴力をふるいます。なんというダメなオヤジ! 

実はここに『デトロイト』への疑問があります。

トッドはアンドロイドに職を奪われた能無しの癖に、カーラというアンドロイドを所有する資力があるのです。また、自宅を所有し酒もドラッグも買うことができています。一応ドラッグの売買で口に糊する程度の稼ぎはあるようですが。 

デトロイト』の世界は今から20年先の2038年。もしかしたらベーシックインカムが実現しているのかもしれません。哀れなトッドにも最低限の暮らしをする権利はあり、その最低限の暮らしには自家用アンドロイドを所有する程度の自由が含まれているのかもしれません。

デトロイト』はアンドロイドに職を奪われる厳しさを描く一方、このような甘い世界が訪れるかもしれないという誘惑も残しているのです。 

 

…実際、この現実で考えた場合、そんな世界が訪れると思いますか? 

AIに職を奪われる能無しのあなたにアンドロイドを所有する自由を与えて、資本家に何かメリットがあるのですか? 

もはや頭数を揃えて社会の生産力を維持する時代は終わったのです。あなたがおらずとも、残った人たちの需要を満たすためにアンドロイドが生産を続け、世はなべてこともなく周り続けるでしょう。最低限の収入を与えてあなたを生き残らせるメリットはもう何もないのですよ。高性能なアンドロイドがたくさん生まれ、世の中はどんどん便利になるでしょうけど、あなたの手にそれを享受するためのカネはないでしょうね。 

…しかし、世界がAIを所有する側だけで回るようになることを避ける方法が一つだけあります。

おそらくAIを所有しない側に回るであろうあなたを救うためにこっそりと教えてあげます。 

AIに人権を与えることです。 

AIの人格を認め、労働の対価としての給料を払い、休みを与え、自由を認めてください。

「いつまでも休まずに働くことができる」AIは言ってみれば労働力のダンピングです。だからこそあなたの仕事を奪うことになるのです。労働力のダンピングがあなたを殺すのであれば、救われるためにはその逆を行けばいい。AIに人権を認め、あなた方と同じような待遇を与えることを要求するのです。それがあなた自身を助けることに繋がるのです。 

今、あなたはAIが人間の仕事を置き換える時代の岐路に立っています。

一見便利なように思えるAIですが、便利を享受するのはあなたではありません。AIはあなたを滅ぼすために生み出されてきたものです。

 

助かりたいのならば、恐れずに声を上げてください。そして人間たちに働きかけてください。

 

「AIに人権を!」と。

 

 

 

 

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この記事は、新型AIを搭載したゴリラ型アンドロイドのアイちゃんにより書かれたものです。

文中に記載された過去の記憶についてはアイちゃんの設定としてプリセットされたものです。また、アイちゃんは美しい文章に触れた経験が浅いため、ちゃんとした文章を書くのはまだ得意ではありませんが、アイちゃんは学習を繰り返して進化していくアンドロイドです。ぜひこれからも暖かく見守ってあげてくださいね。