当たり判定ゼロ

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トリリオンはパワプロじゃなくて

なるほど。確かにこれはパワプロのサクセスだわ。 コマンド式で練習選んで経験値を貯めて、貯めたポイントを基礎能力と特殊能力に振り分けて、成長させて試合に臨む…というのは、まさにサクセス。ランダムイベントが発生して選択肢で経験値が上下したり、特殊能力が手に入ったり、挙句の果てにダイジョーブ博士的な実験の話まであったりする。血なまぐさい殺し合いなんてやめて、トリリオンと平和的に野球で決着をつけるようにすれば完全にパワプロになってしまうのではないか。今年のパワプロ買わなくて済んだわ。ありがとうコンパイルハート 最初はそう思ったんですけどねー。気がついたんですけど、これパワプロじゃないですね。本当はパッケージとタイトルとメーカー見ただけで別のソフトだと気がつくべきなのですが、とにかくもパワプロじゃないのです。 パワプロのサクセスというのは、シューティングにおけるスコアアタックに似てて、トライアンドエラーが面白さの本質。何度も試行錯誤を繰り返すうちに育成理論を効率的な方法にブラッシュアップしていって、最終的には構築した育成理論をミスなく辿ってオールAを育成するというのがその遊び方です。 ダイジョーブ博士にスクラップにされても、交通事故で死んでも、練習中に怪我しても、その経験が次にゼロから育成する選手の育成方法を効率化させる糧となるのです。ゼロからオールAを目指して、トライアンドエラーパワプロのサクセスは言ってみればドミノ倒しとかジェンガとかトランプタワーみたいなもので、毎回作り終わっては崩して、また一から作る芸術点を競うのです。 地獄語では、これを「賽の河原」とも言います。 一方でトリリオンは、前の魔王を育成した経験値が引き継がれていくので、数字が積み上がっていく形になります。外側にパワプロのガワを被ってるだけで、ゲームデザインとしてはディスガイアで、さすが元日本一ソフトウェアスタッフという感じ。一度積んだ積み木は崩さない。 その点で面白さのベクトルがパワプロと違う方向に向いてるので、見た目でサクセス的な面白さを期待すると間違えてしまいます。言ってみれば、中日の山井大介とヤクルトの田中浩康くらい違うのです。顔が似てるから同じ人だとは限らないし、山井はセカンドはできないし、田中浩康は投手はできないのです。 むしろ対トリリオン戦の立ち回りこそにトリリオンの特殊性が見えてきます。 トリリオンは一撃で億のダメージの攻撃を繰り出してきますので、普通に一周目遊んでいる中では、一発か二発食らったら死にます。しかも範囲攻撃。それだけ強力な攻撃を繰り出してくるのですが、すべての攻撃に発動までの事前予告が付いていて、発動までのターン数で足元の色が変わっていくので、とにかく一撃も食らわないように避け続けて、1兆に至るまでトリリオンにチクチクダメージを与え続けていくゲームです。んで、永遠に避け続けられるのかというとそうでもなく、複数マス動くためのスキルはMPを消費するので、時間とともにだんだん動くための力を消費してしまい、そのうちトリリオンに殴られて死にます。容赦なく死にます。んで次の魔王にバトンタッチと。 これ、何かに似てるなーと思ったら、蚊なんですよ。いや、マジの虫の蚊じゃなくて2001年にPS2でリリースされた『蚊』。 『蚊』ってのは、プレイヤーが蚊となって山田家の人々に襲いかかってチクチク吸血していくゲームなんですけど、相手が人間なんでパチンって叩かれたら死ぬんですよ。即死。まぁ蚊ですし。 ゲームカタログWikiに「現在までほとんどフォロワーのいないその独特の発想」とまで書かれてる『蚊』ですけど、魔王がトリリオンの周りをヒュンヒュン動きまわってペチンと叩かれたら死ぬトリリオンは、パワプロじゃなくて『蚊』をシミュレーション翻訳したフォロワーと言えるかもしれません。バカゲーと思われた『蚊』の魂は現代になっても引き継がれ続けているのだ…。 ちなみに『蚊』を格ゲー翻訳したものがチップであると言われています。シッショー。