当たり判定ゼロ

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生魚のようなウォッチドッグス

ウォッチドッグス遊んでるんですよ、ウォッチドッグス。 最初の1時間ほどは「うげぇ、車の操作感が悪くなったコンパチGTAやんけ……ファックファック」とcv.トレバーで罵りつつ遊んでいましたが、システムの一つ一つを見てみると、GTAというよりはアサシンクリードそのままで、その実態はGTAのガワを着せたアサシンクリードでした。世界樹のシステムにペルソナのガワを乗っけて、はいペルソナQ、みたいな。フリーランニングで障害物かき分けて街を駆けまわり、ところどころ置いてる塔に登って、鷹の眼……じゃなかったハックをすると周辺エリアのアクティビティが見えるようになったり、潜入ミッションでは物陰に隠れて進んで、見張りの後ろから近づいて物音を立てないように絞め落としたり、マップを隅々まで駆け巡ってチェックリストを埋めるみたいにアイテム集めに勤しんだり。突然「エイデン、あなたは被験者だったのよ……」とか言われて現代編が突然始まっても納得の感じでしたが、最初から現代編だったのでそのへんは安心でした。ライブアライブみたいに未来編が始まったらそれはそれでお得ですし。 んで、さらに最初の3時間まではそう思って遊んでたんですが、マルチプレイのオンラインハッキング要素が入ってくると化けますね、これ。オンラインハッキングがなければ凡百のオープンワールドの砂塵の歴史に埋もれるところだったんじゃないでしょうか。 その辺の人の端末をハックしてカネを稼いだり、信号機止めれたり、停電させたりできるのも、ギミックとして1回は面白いですが、ゲームとしての継続的な面白さには繋がらん気がします。変わった味のラーメン屋に行って「おぉ、これは面白い味だな!」と納得するだけして、二度と行かないあの感じに似ています。   オンラインハッキングってのは、要は「相手の周辺から相手の端末にバックドア仕込んで、ゲージが100%になるまで見つからないようにする」というゲーム。侵入された側はその逆。「どこかに潜んでいる相手が自分にハックをかけてくるので相手を見つけて追いかけて殺す」というゲーム。 侵入は、他のミッション進行中でなければ、いつでもどこでも突然行われます。いつでも侵入できるし、いつでも侵入されます。オー、これがユビキタスでやつデスねー。ミッションをいざ開始せんとす、という絶妙なタイミングで侵入されることもまれに良くありますが、「ちっウゼェなぁ」なんて思わず、せっかくわざわざ殺されに来てくれたのですから「ウォルター、私は命令を下したぞ。何も変わらない。見敵必殺。見敵必殺だ!!」みたいにモードを変えて遊ぶと良い感じです。ユグドラ・ユニオンユグドラ王女系の、相手を探して絶対に殺すマンにとっては良いゲームとなるでしょう。 最初は相手を見つけきれずに逃げ切られることも多かったのですが、最近は相手が車の中や、車の陰にいる確率が高いことがわかってきたので、終了間際まで見つからなかったら車に爆薬を撒き散らすようにしています。車は爆発してあたりは炎上し、市民は逃げ惑って通報して、パトカーがウーウー走って銃撃音が聞こえてくるような世紀末が目の前で展開される、人間うっかり出てきてしまうものです。あとは警官に殺されるまでに侵入者を殺せるかどうか…。何となくこんなゲームじゃなかったような気もしますが。 一方、自分が侵入した場合、相手の状況にかかわらず入ってしまいますので、このようにいきなり目の前に警官の死体が転がってたり、カーチェイスしていたり、何かが爆発していたり、中の人がトイレに行ってて魂抜けたキャラが立ってたりします。警察と銃撃戦してる横でコッソリ隠れてハッキングしたのは申し訳なかったです。あのとき一緒に警官を撃っていれば「……お前は!?俺の命を狙っているのではなかったのか!」「お前を殺れるのはこの俺だけだ……」「ふっ……この野郎……」みたいな展開になってお友達の一人でもできたかもしれなかったのに…。 ともあれ、侵入する側は相手を攻撃した時点でアウトです。とかく、付かず離れずで悟られないようにしつつ、ハッキングのゲージが100%になるまで耐える必要があります。そのため、物陰に隠れるだけじゃなくて、車の中でエンジン切って寝たふりしたり、交通ルール守ってドライブしてモブの車に混じったり、あるいは事故現場で煙吹いてる車の運転席に座ってみたりとか、とにかく相手にバレない方法を考えて試します。 運悪く見つかったら車に乗ってトンズラ。一定距離を逃げ切れば引き分けになります。それまでに蜂の巣にされれば負けです。 「探して、追って、殺す」「隠れて、逃げる」これがこのゲームのルールのすべて。言ってみれば、かくれんぼとおにごっこですね。 なんでオンラインハッキングが面白いかというと、そもそもかくれんぼとおにごっこが面白いからです。特にかくれんぼとかいうゲームは、大人がムキになって遊べば相当工夫の余地があるゲームだと思うのですが、もったいないことに世間体とかいうのが邪魔をしてなかなか遊ぶ機会がありません。世間体さえなければ、私も東京駅でかくれんぼとかおにごっこやりたいのに…。しかしデジタルかくれんぼたるウォッチドッグスはその憂さをはらせるワンダフル。縦列駐車の真ん中の車両で寝た振りこいてて、相手が1つずつ車の運転席を覗きながら近づいてくるのはホラーゲーム的な怖さみたいなのも思い出しました。ホラーゲームと違って、見回ってくるのは生の人間ですが。ですので、普通に気が付かず見逃してくれることもあったりします。小心者なんで隠れてる間はわりとドキドキしてます。 しかし相手があるというのは一長一短ですよね。この間、時代遅れのデモンズソウルやったときも思ったんですが、せっかくのネットワーク要素なのに人がいないいない。青ファントムとかついに1回しか見なかったですし。ツチノコ並にレア。 昔のゲームも話題として人と共有する楽しさみたいなのはあったのですが、ネットワーク機能がビルトインされている昨今のゲームは、「鮮度」みたいなのがより重たくなってきた感あります。昔のゲームは缶詰みたいなもんで、今のゲームは生魚でしょうか。機能が付加されて、命が吹き込まれたゲームは、同時に腐り落ちる肉体も手に入れたのです、みたいな。 「ネトゲは時代と寝るつもりで遊べ」みたいな言葉を昔聞いたことがあって、「それもそうだな」と納得して遊ぶだけ遊んだ結果大学も留年したりして現在この有り様なのですが、今はコンシュマーも、時代と寝るつもりでいなければゲームを十分に楽しむ機会を逸してしまうのかもしれません。 今はちょっと検索したら進入する相手も見つかりますし、ちょっとその辺歩いてただけで侵入されますが、いずれは人が去り、箱庭だけが残されたピエリ守山が訪れます。ウォッチドッグスの白眉は、オンラインハッキングにこそあると思うので、かくれんぼ好きな人は腐る前に焼いて食べとくと良いのではないかと思います。 ところでシカゴって行ったこと無いんですけど、ちょっと走ったらロスサントスの北側みたいな感じで田舎が広がっているんですけど本当なんですかね。わりと山道のドライブが楽しいです。でもエイデンさん、どれだけ美麗で壮観な景色が広がっているところに行ってもスマホばかりに目をやってポチポチ弄ってるんですよね。食べログで確認してからじゃないと新しい食べ物屋さんに行けないタイプやでこれ。このおっさん、いつかジャパニーズソーシャルゲームにドはまりして課金で身を持ち崩さないか心配でなりません。 余談ですが、エイデンおじさんが信号機をチョイチョイと弄って交差点で大事故が起きたとき、市民の皆さんはヒャーとか言いながら一端は逃げるんですが、しばらくすると集まってきてスマホを手にポチポチ写真を撮りだすのがリアルっぽい演出だなーと思いました。 この後彼らは画像をSNSにアップロードして、拡散されて、知らない人から「写真撮ってないで助けろ!」みたいな善意のレスがたくさん飛んでくるのだろうなぁと思うと温かい気持ちになりますね。