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三国志14、蜀の天然の要害が再現され過ぎてエモい

「問題です。三国志で蜀を建国した…」ピンポォン!!
「中山靖王劉勝の末裔!!」
「正解!早かった!問題は『三国志で蜀を建国した劉備は、一体誰の末裔と名乗っていたでしょうか?』というものでした」
 
冷静に考えれば2000年以上も昔の人物で、しかも皇帝でもない「中山靖王劉勝」なる人物が外国である日本でかなり知られていることは異常な光景じゃないですか。例えば平安時代の関白、藤原基経の次男の藤原仲平のことを中国人が知ってたらわりと怖いし、劉勝も皇帝の息子という点で似たようなポジションではないかと思うのですが、なぜか日本人は知っている。
 
あぁ、これが三国志脳…。
武漢」と言われてもどこかわからないけど「荊州」と言われると「あの辺りか」とだいたいわかるし、「北京」の位置は知ってても「幽州」と言われると「思ったより北にあるんだな」というイメージに変わる。現代でも日本で一番有名な中国人はと言われれば習近平ではなく諸葛孔明のような気もするし、日本文化の結構深いところまで三国志のDNAは入り込んできているんじゃないですかね。陳寿裴松之らが伝えた世界に吉川英治横山光輝シブサワ・コウが道を築いて今の我々が歩いていることは、先人たちが繋いできたちょっとした奇跡です。
 
そんなわけで三国志ですよ、三国志。久々に三国志シリーズ遊んでるんですよね。
三国志は1~9まで皆勤賞だったんだけど、なぜか10を買わなかったら13まで遊ばずに、この前発売された三国志14を久々に買いました。
 
結論から言うと、三国志14は最高の戦略ゲームではないかもしれないけど、最高の『三国志』ゲームでした。
 

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今作は中国全土の一枚マップが採用されていますが、勢力はそのマス目ごとに分かれていて、出兵したユニットは敵の陣地を塗りつぶしながら自分の陣地を増やして進むことになります。このとき、ユニットの兵糧の供給は「自分の城と繋がっている限り供給される」ルールなので、必然的に兵站の確保が重要になります。逆に言えば、一直線に敵の城に突っ込んで兵站を切られたら死ぬので、敵の城を攻めるときは兵站が切られないように周囲からジワジワ敵の勢力を削っていく攻め方が王道の動き方になります。
それに加えて、自勢力以外の領土を進むときの行軍速度が遅いので、「敵が領土内にちょっかいかけてきた」というのを見てから動けるというのもあり、攻城戦ではなく平地戦が発生しやすい感じ。
 
いや、なんでわざわざこんなゲームシステム説明したかというと、「自勢力以外の領土を進むときの行軍速度が遅い」というところに最高のエモポイントがあるんですよね。加えて、地形効果もあって高い山を進むと更に行軍速度は遅くなるし、士気はガンガン削れていく。CPU同士の戦いでも「主力が山を超えて敵の領地を攻撃してたら、本城が落とされて主力が戻りきれず滅亡した」ということがありがちなくらい山道の行軍が厳しい。そんな地形の厳しさがある。
 
と、なると三国志脳に真っ先に思い出すのがあれですよ。『蜀の桟道』。
蜀という国は魏の4分の1程度の国力とされながらも、長年に渡り他国の侵略から免れてきたのは自然の要害があったからです。
西暦263年に魏の大将軍司馬昭が蜀征伐の軍を興し、鍾会・鄧艾の大軍を差し向けても、この堅牢な自然があるからこそ国家として衰弱していた蜀でさえある程度は持ちこたえられたわけです。
結果として蜀に押し寄せた魏軍は剣閣を攻略できず、鄧艾の別働隊が陰平から綿竹関に抜ける険しい山岳地帯を進み、山に穴を開け、谷に橋をかけながら700里進んで、ついには成都に辿り着き、これを直接急襲することで蜀は滅亡に至りました。
それほど自然の要害を攻めるのは大変だし、山道で要塞を固められたら落とすのは難しいということですね。
 
三国志14,これを完全再現できる。
 

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三国志14では虎牢関や陽平関などの関の耐久度が、城よりも高く設定されていてとにかく硬い。
剣閣も同様に高い耐久度になっていて同様の条件で見ても堅牢なのですが、虎牢関と違ってそもそも剣閣は山奥にあるので、まず辿り着くのすら時間がかかって士気が落ちる。しかも漢中からは遠いのに剣閣の裏の梓潼はすぐそばなので、攻撃側は補給が困難で防御側は補給が容易。全体的に三国志14で最も攻略しづらい関となっていてそりゃ鍾会がキレるのも納得ですわというレベル。
 
しかし、案ずるなかれ、マップの左端を見ると細く険しい山道が一本だけ通っていて、補給無視してそこを通れば剣閣を抜けなくとも直接綿竹関にたどり着くことができて、そこを抜ければいきなり成都を急襲できるようになってるんですよね。まさに鄧士載の山越えルート。こ、これだよ…コーエー
 
私がプレイしてるときも、CPUが蜀を占有している場合は後方の兵を国境に置くので、剣閣に5万もの敵の兵が駐在してて何ヶ月経っても落ちず困って、しびれを切らして山越えルートやってみました。
武都・陰平から山岳地帯に入って綿竹関に向けて進み続けること3ヶ月。1ターンに3ヘックスくらいしか進まない行軍を続けて、ようやく綿竹関が見えてきた……というタイミングで綿竹に到達した自分の兵の士気を見ると約1/3まで落ちてました。敵の兵は万全で、味方の兵は弱っている。しかし、もう戻れない。眼前の綿竹関を落とすしか生きる道は無い、という鄧艾の気持ちまで完全再現。これだよ、コーエー
 
このあと綿竹関を落として全然兵が駐在してない成都もそのまま陥落させたけど、それでもまだ剣閣は落ちる気配すらなくて、横山光輝三国志60巻のシーンそのままでちょっとエモすぎた。これは「三国志」だ。我々の頭の中に染み付いた「三国志」がここにあった。
 

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武将の個性についてもメリット・デメリット含めて設定されていて、黄忠はそもそもステータスが高いけど老年になるとステータスが加算される「矍鑠」という個性がついてて更には一騎打ちも優遇されているので結構強い。一方で、「癇癪」持ちなので挑発食らったら治らなかったり、「功名」によって「追撃不可」「事後退却」の設定ができないので敵が退却したらひたすら誘い込まれていったりする。
馬超も「猪突」がついてたりするので、敵を見たら必ず突撃していく。退却するべき局面でもひたすら突っ込むので兵の消耗が大きいし、わりと平気ですぐ壊滅したりもする。
 
この「強いけど使いづらい」感。これでこそ黄忠であり、馬超なんだよな。
本作では呂布も鬼のように裏切るので、捕らえたら史実どおり切るのが正解。裏切り覚悟か、裏切らせないような場所で使ってもいいんだけど、結局内政もできないし「猪突」「悪名」「短慮」とバッド個性多いので扱いに困るんすよね。いやぁ、まさに呂布だ。
  

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そして、三国志といえば公孫瓚ですよ。兀突骨と並ぶ人気キャラですね。三国志が好きな奴に公孫瓚が嫌いな奴はいねぇ(断言)。
 
簡単に説明すると、公孫瓚は白馬で固めた騎兵を主力として幽州を支配した将軍で、彼の騎兵は「白馬義従」と呼ばれました。後に冀州を基盤とする袁紹と対立し、「界橋の戦い」で両雄は決戦に臨みました。
公孫瓚はこのときも自慢の白馬義従に突撃を命じるも、袁紹軍の将軍麹義の部隊による弩で白馬義従が倒されたことをきっかけに壊滅的な敗北を喫したことで覇権争いから脱落しています。界橋の戦いで破れた後は、連戦連敗を重ね、ついには易京に巨大な城塞を築いて引きこもりますが、袁紹に城塞の下に地下道を掘られて攻め込まれ、最期は妻子ともども自害して果てました。
 
界橋の戦い袁紹でなく公孫瓚が勝っていたならば、官渡の戦い曹操と対したのは公孫瓚だったのかもしれないですが、ともかく「白馬義従」やら易京の巨大要塞やらイチイチ作るものにアクが強い公孫瓚三国志全体で通じてみればわりと序盤でいなくなる人物ですが、キャラの立ち具合では屈指と言えましょう。
 
三国志14には、連環の計や三顧の礼等の歴史イベントのほか「劉備後漢皇帝を擁立する」とか歴史にない出来事の達成イベントも用意されているのですが、「劉備曹操を倒す」「反董卓連合軍で董卓を倒す」という定番のラインナップの中に「公孫瓚袁紹を倒す」もあって、一瞬エッと思うくらい公孫瓚への愛が感じられます。「~で曹操を倒す」が並ぶ中、曹操と反董卓連合絡み以外は唯一公孫瓚があるだけという優遇っぷり…。
公孫瓚は固有戦法まで実装されてて、その名前はもちろん「白馬義従」。シビれる。
 
三国志14は、成都急襲ルートの士気減少バランスとか見ても「三国志」が好きな人が作ったんだろうなぁと感じさせるものがありますが、そうなるとやはり三国志が好きな奴に公孫瓚が嫌いな奴はいない説が真実味を帯びてくる。ぜひ三国志が好きな人から愛された公孫瓚袁紹を打ち破り、絶対中国を制覇してくれよな。
 

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そういや本題とは関係ないんですが、発売前に話題になってた銀英伝の無料DLCがいよいよ実装されるというので見に行ったところ、この能力設定が良い…。
 
ラインハルトはナチュラルに能力が高くて固有戦法も更にバフをかける王道的な強さですが、ヤンはラインハルトに知力以外は劣るものの「回避不能の全状態異常付与」というアホみたいに強い固有戦法持っていて、多分普通に戦うとヤンが勝つ。
ただし、キルヒアイスがいた場合、固有特性に「範囲内の状態異常期間短縮」があるので、多分ラインハルトが勝つんですよね。そうなんだよ、ラインハルトがヤンに勝つ条件は「キルヒアイスがいること」なんだよな。
 
コラボDLCだから単にキャラ入れとけばいいや、ではないところが素晴らしい。
キャラゲーのシミュレーションは数字そのものが大事じゃないんだ、数字で何を表現するかが大事なんだという気持ちがすげえ伝わってくるんだぜ。