STGゾンビによるSTG再興論
久々にイキのいい案件が出てきたので面白く読んでました。
そういや高橋名人弾幕系dis事件というのもあったなーと思ったら、もうアレ2年前(発言自体は3年前)ですってよ奥さん! 時間が流れるのが早すぎてSTGの衰退よりそっちのが怖いわという風情な今日この頃ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
元記事では、丁寧に「ミスすると更にミスしやすくなるデススパイラル」「死んだら最初からなのにクリアが遠い」とSTG特有の、新参にとって敷居を高くするシステム的な問題点が指摘されており、頷ける点も多いです。「STGが衰退した理由」ではなく「新参が入らない理由」なら、なるほどなーという感じ。
というのも、それらの要素は今に始まったことでもなくて昔からSTGはそんなもんでしたが、昔の人たちはそれでも平気でSTGやってたからなんですね。ゼビウスとかスターソルジャーあたりなどはコンシュマーでミリオン売れており、100万人以上のプレイヤーを抱えていたはずなんですが、プレイヤーの人たちは一体どこへ行ってしまったんでしょうね。死んだんですかね。
ともあれ、衰退問題は「流入」だけではなく「流出」もあわせて考えていくとバランスが良いかと思われます。
ゲーム業界におけるSTGのシェア減少は、スポーツ界における相撲のそれと似ています。
相撲もかつては「巨人・大鵬・卵焼き」の一角を占めるほど人気のある競技でしたが、サッカー、テニス、ゴルフとスポーツにおける国民の嗜好が多様化するにつれ相対的に人気を失っていきました。野球ですら同様です。 STGもその人気がピークにあったのは、ジャンルとしての選択肢が少なかったゲーム黎明期であって、その後JRPG、シミュレーション、パズルゲー、レースゲーが隆盛し、ジャンルが多様化するとともにSTGの占めるシェアが低下しています。
ちなみに「巨人・大鵬・卵焼き」の話に戻ると、卵焼きだけは別格で、近年特にオムレツ用途としての消費が増えており、出荷額が未だに伸びているそうです。卵焼きすごい!巨人と卵焼き、なぜ差が付いたのか慢心環境の違い…。
実のところこれは卵焼きを褒める記事ではないのでSTGの話に戻すと、現状STGはゲームジャンルの中においてもやや先鋭化した位置にいるのは確かでして。
ニコニコの実況動画で流行した「最終鬼畜ゲーム」ってあるじゃないですか。外人が作った「I Wanna Be The Guy」ってゲームの実況動画のことです。
あのゲームってシステム自体はきわめて単純なんですけど、難易度が極弩高いマリオみたいな感じで、もし任天堂がアーケードで事業展開していた未来があったとしたら、その世界でのマリオは鬼畜ゲーになっててコアゲーマーがレバー握ってたんじゃないかなんて思わされます。「新参入ってこねぇぞコラ!」とか言いながら。
今のSTGの立ち位置って、知らない人から見たら「最終鬼畜ゲーム」と同じ感じに見えるんじゃないですかね。上手い人のプレイを傍から観ている分には面白いけど、いざ自分がやるとなると「こんなもんやってられっか」。
「I Wanna Be The Guy」を「最終鬼畜ゲーム」と初めに名付けたのは誰か知らないですけど、STG用語から引用したところ、そのままSTGの実態を表した構図になってしまったのはとても皮肉なことです。
ともあれ、STG衰退論とかもう何週もしちゃって語り尽くされてしまった感もあるので、今日は「この状況からSTGが勢いを取り戻すにはどのようなケースがあり得るか」という夢のような話をしてみますけど、おそらく3つほどシナリオが考えられます。
1つは、メーカーが能動的にライトユーザーにアプローチするというシナリオ。効果は非常に高いですが、実現可能性は低いです。ライトユーザーにアプローチするというのは、ただ単にライト向けのゲームを作れば済むわけじゃなくて、とにかく重要なのが広告。1に広告、2に広告、34も広告、5も広告。そのジャンルに強い興味がなくて主体的に調べようとしない層にアプローチするわけですから、供給側から主体的に情報を押し付けていかねばならん分野なわけです。
とすると、資本が勝負の世界でもあったりするんですね。かつて「ツインビー」あたりが一定の地歩を固めていた時期があったものの、今や焼け野原のこの分野に広告宣伝費ガツンとつぎ込んで橋頭堡を築く仕事をするのは、企業としてリスクが高い。それだったら、一定の売上が固いコア向けに出していたほうが安全だわなということになってしまいます。
一方ライトユーザー向けの代表格といえばマリオシリーズです。マリオってぶっちゃけアクションとしてそれほど抜けた存在かと言えばそうではなくて、たとえば、マリオが松ちゃんでルイージが浜ちゃんの「ダウンタウンのごっつええ行進曲」というタイトルだったとしたら間違いなくミリオン行きませんて。マリオはそのネームバリューと、「本体と一緒に買っとくか」というローンチタイトルっぷりが支持を大いに補強しています。
…だったらマリオブランドのSTG「マリオシューティング」とか出したら子供たちはコロっと騙されて買うんじゃねぇのか…。
そう、大事なのは「ライトユーザー向け」なのではなく「ライトユーザー向けに見える」ことだったのです!
「マリオシューティング」は、1週目はそれこそマリオらしく小学生でも笑顔で楽しめる難易度、ラスボスのクッパに苦戦しますが、2,3日練習すれば誰でもクリアできます。やった!と思うのも束の間、なぜか二週目が始まります。訝しみつつもプレイを進めていくと一周目より妙に画面に弾が多い。それでもマリオシリーズなんだからクリアできるはず!と練習を重ねてついに二週目のクッパに辿り着きます。喜ぶ小学生。クッパとの対決に心躍らされますが、突如クッパの頭が2つに裂け、中から出てきたのはロンゲーナ大佐と名乗るおじさん。「ご苦労だった」困惑する小学生。戸惑いながらも始まる蜂との戦い。
翌日、学校で「おい、すげーのが出たぞ!!」と友達に報告し、競うようにクリアを目指す小学生と蜂との長い戦いが始まるのだった…。 というのはどうですかね。突如ニュータイプが誕生して国防に役立つ可能性もあるので、政府は国策として任天堂をしてマリオシューティングを出さしめると良いと思います。
まぁここまで冗談なんですが、実際、大作並の広告宣伝か、既存の有名ブランドでSTGをやるというのが、ライトユーザー向けアプローチとしては適当でしょうけど、そんなことやってくれるメーカーが本当に存在するのかはまた別問題なわけです。
2つ目は、突発的に降って湧いたようなブームが発生するというシナリオ。相撲界における若貴ブームや、野球界におけるイチローの登場がそれにあたります。何も主体的に動かなくとも、奇跡が起こればそれで良いという受動的なお手軽仕様です。砂と水ごと器にすくって砂金を取る方法に似ていて、退去してやってきた新参が、嵐が去った後どれだけ残ってくれるかがポイント。
若貴はブームが去ると水も砂金も器ごと地に返ってしまいましたが、このへん野球はイチローの後も、野茂がメジャーで成功したり、阪神が「Vやねん!」で体を張って笑わせに来てくれたり、WBCで優勝したりとそれなりに要所要所でイベントごとがあったのでうまいこと砂金が取れているように思えます。
STGも東方という降って湧いたブームがあり、普段新参が来ないこの分野に新参が来てしまったものだから東方厨問題とか色々ありましたが、ともかくも器にガサっと水が入ったのでなるべく多くの砂金が残っているよう祈るばかりです。東方ブームはもう終わりつつあるような気もしますが。
というわけで3つ目、「ブームが終わったのなら起こせばいいじゃない」。実際のところ、新規ユーザー獲得のために広告宣伝に大金投じれるメーカーもないような状況なので、ここまで来てしまったら我々の選択肢としては何もかもあきらめて象牙の塔に篭ってしまうか、街に出ていって無知の人々を仲間に引き入れるかの二者択一しかないわけです。
この「仲間に引き込む」という行動は完全にゾンビそのものであり、口を開くたび罪もない人々をこの道に引きずり込もうとする我々はいわばSTGゾンビとでも言える存在だったのです。けどまぁ、STGって遊んでみると案外面白いですし、少しでも多くの人と楽しみを分かち合いたいですし、新規ユーザーが増えればメーカーも潤って今より多くのタイトルが発売されることになるので我々も幸せという、STGを宣伝するだけでみんなハッピーになる道があるのだから宣伝するのも仕方ないよね!!(開き直り)
まぁ何が言いたいかというと、これを読んでいる皆さまは今すぐ古い日付で更新が止まっている自分のブログにログインしてみて、好きなSTGの名前でも書いて更新しやがれー、ということです。
ところで、「衰退」で検索するといつも上位に「STGはなぜ衰退したのか」「格ゲーはなぜ衰退したのか」が表示されていて見かけ上の景気が大変悪いなーとかねがね思っていました。ですので、そのうち「ボットン便所はなぜ衰退したのか」というエントリでブクマたくさん稼いで「衰退」で検索すると便所が出てくるようにしてやろうと目論んでいたところ、「人類は衰退しました」がアニメ化されたおかげで、googleさまは「衰退」といえば「人類」と判断するようになりました。
結果として、少なくともネット上の検索では人類が身を呈してSTGを衰退から救ったことになるので、きっと人類はSTGが好きなのだと思います。