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ゲーム業界各社決算まとめ - 2011年秋

キャベツという食べ物があります。キャベツは食べ物であると同時に、胃に入れると胃酸で溶けるという特性があります。
たとえば、あなたが誰かを憎くて憎くて仕方がなく殺してしまいたいとさえ思った場合、キャベツのこの性質を利用することが可能です。すなわち、キャベツを喉につめて殺害した後、胃に流し込んで溶かしてしまえば良いのです。サツが気が付いたとき、凶器は既に被害者の胃の中で消化され、この世界から消えうせているというわけです。なんという完全犯罪。
私は今、このライフハックを広くインターネットに公開してしまったのですが、模倣による犯行が起きた場合、犯罪幇助の罪で逮捕されてしまうのでしょうか?今から心配でなりません。

さて、前回のまとめから半年が経過しましたので、ゲーム会社の決算について半期分を踏まえたまとめを作成しました。
今回から、任天堂ソニーDeNAGREEの4社を追加しています。同じゲーム会社といえど、ハードメーカーとソフトメーカーではビジネスモデルが全く異なりますので、これまでハードメーカーは除いていたのですが、ゲーム業界の俯瞰という点で見るとやはり入れておいたほうが役には立つかと思いまして。DeNAGREEについては、これだけソーシャルゲームがゲーム業界の焦点となっている以上、ソーシャルのモデルを代表する2社を外してゲーム業界を語ることはできなくなった感があります。

前回までは貸借対照表(バランスシート)も掲載していましたが、今回からは損益計算書のみを掲載しています。どうせゲーム会社って資産状況が良好な会社が多すぎて、語ることないんですもん!
ファルコムとか歩く現金すぎてマジヤベェ。資産状況は毎年そうそう変わるものじゃありませんので、気になる方は2011春のまとめで確認してみてください。

一般的にソフトウェア製造業は、経費のほとんどが人件費をはじめとした固定費となります。反対にハードウェアメーカーは原材料費が加わりますので、変動費が大きくなります。
先に述べた、任天堂ソニーとほかのソフトウェアメーカーとのビジネスモデルの違いというのはここにあります。

今回は売上原価率(変動費)と販売管理費(固定費)の割合がわかりやすいよう資料を作成していますので、注目してみてください。
ただし、正確には売上原価の中に労務費(固定費)が入っている会社が多くあるため、売上原価率はそのまま変動比率だと思うと間違いなのですが…。まぁ大体ということでご了解ください。

ここに気を払ってもらえれば、ソーシャルがいかにビジネス上で独特のものであるか数字面でも理解してもらえると思います。

企業の決算期が違う関係上、半期決算のものと通期決算のものがありますが、右側のグラフの営業利益率(オレンジのライン)を見ていただければ、その企業の概ねの調子を見ることができます。忙しいときはそこだけ見ると粗々で掴むことができます。

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リーマンショックによる経済の落ち込みと歩調を合わせるかのようにここ数年は不振が続いていましたが、ようやく回復の兆しを見せています。んで、もちろんここで「なんで?」となるのが当然なところ、ゲーム・おもちゃ・ゲーセンがバランス良く改善してきててこれといった推進力がないのですが、こういった大黒柱に頼らない改善って足腰しっかりしてて好感が持てますね。
個人的には『AKB1/48 アイドルとグァムで恋したら…』が38万本売れているというのがマジで!という感じ。アイドルオタ恐るべし。

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ここ2,3年絶好調のセガですが、ようやく(表見上)減速の兆しを見せつつあります。…が、あくまでこれはサミーの話。スロットが勝手にバカ売れして、スロットのバカ売れがようやく止まっただけで、セガ(コンシュマー事業)は営業利益部門で好調時にトントンくらい。今期?もちろん赤字ですよ。60億程度ですからかわいいもんです。
んで、そのサミーですが、年末に出るパチスロ北斗の拳の受注が半端ネェ感じらしく、実は減速なんて一切無く依然としてフルスロットル。
セガ(コンシュマー部門)も下期にはマリオ&ソニックの発売が予定されているので、黒字転換予定です。去年、確変起こしてたので、今年はさすがに減収減益かなぁと思ってたら大間違いでした。
実力のある敵キャラが手を抜いて一方的にやられたフリをして「ん?貴様の実力はこの程度か?」とか言ってるみたいな感じです。こんなのセガじゃない!今期の決算予測は売上高4,400億円、営業利益770億円と上方修正を行っています。稼ぎ過ぎてて怖いです。
やはりここはサミーが稼いでセガが使うという永久機関の構築(新しいゲーム機とか怪しげなCM)が求められるところでしょう。

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阪神の鳥谷選手は毎年同じような打率を残す謎の安定感で知られていますが、このコナミこそゲーム業界における鳥谷。毎年毎年似たような業績ばかりコピペのように残すものだからコメントに困る…と思ったら今年は違います。
コンシュマー的にはプロスピウイイレ等スポーツゲーのシリーズ新作がメインでしたが、今年は昨年から配信を開始した『ドラゴンコレクション』が大ヒット。これで利益率が一気に改善し、売上高はほぼ昨年比で変わらないにも関わらず、去年の決算値に匹敵する数字を半期で稼ぎ出しました。ソーシャルの利益率の高さはコナミほどの企業の決算をも動かします。

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DeNAGREEがソーシャルの申し子ならば、スクエニはコンシュマーの申し子。今の小学生が怪盗ロワイヤルやドラゴンコレクションを遊ぶように昔の小学生はドラクエやFFを遊び、時代がスクウェアエニックスを育てました。
もちろんスクエニもソーシャルにゲームを提供はしているのですが、DS版ドラクエ9以降のパッとしなさは時代を象徴しているようだなぁと思ったりもします。今でもドラクエ・FFの過去の資産に頼りっぱなしではありますし。ブランドを持っているのは強みでもありますが、一方で旧守的なイメージにも繋がりかねません。スポットライトを一身に浴びているソーシャル系の企業もいつかこうなるのかと思ったら、今からゾクゾクが止まりませんね。
あと、生まれる時代を5年ほど間違えている気がするドラクエオンラインも今から楽しみでなりません。

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カプコンのIR(投資家向け広報)には以前から定評があり、私もたびたびカプコンのIRは絶賛していますが、またしても「2011年度IR優良企業賞」を受賞したそうですカプコンのIRページはマジで見やすいです。資金を集めたくて集めたくて仕方のない新興企業だったらわかりますが、これで辻本一族のオーナー企業だったりするのだから謎です。
決算内容としては前期比で落ち込んでいるのですが、前期はモンハン特需ですので落ち込みは想定内ではあります。一応現在のところ計画通りの進捗ではあるようなのですが、通期予想(営業利益120億円)の達成はDSのモンハン3G次第って感じではありますかね。とはいえ、この会社はデッドライジングとかロストプラネットとか、強力タイトルを突然ポンと生み出してくるから侮れない。

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最近ビッグタイトル出てないですからねえ。当たり前のように無双を出して当たり前のようにそこそこ売れるみたいな感じです。資料を読むと今後はソーシャルゲームに軸足を置いていくようなのですが、それじゃ困ります(私が)!
コーエーのゲームって信長とかウイポとかいわゆる固定客の期待できるゲームがメインなので、それだと成長余地がないからそれらのブランドを活かしてソーシャルに出て行くという方針みたいですが、そうじゃなくて大型タイトルのウイポが遊びたいんですよ(私が)!!うがー!
元々歴史ゲーを本拠地に据えてコアユーザーにアプローチしてきた企業だと思うのですが、最近の方針転換は少し寂しいものがあります…。

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あたしの名前はインデックス。そんな大きな会社というわけでもない普通の上場企業だけど、コンシュマーやったり携帯向けアプリやったりネトゲやったりアニメやったりSNSやったりと大忙し。そんなあたしの元に一人の悪魔使いがやってきた。コイツったら頼んでも無いのにキャサリンとかいうゲームをヒットさせたり、ペルソナを多角化展開させたりとメーワクなんだよね!。もーっ!あたしのカワイイ赤字が減っちゃうじゃない!でも、そんなアイツの様子が最近少し気になってきたり…。うう……あたし風邪でもひいたのかなぁ……うー!あたしの未来、一体どーなっちゃうの!?

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歩く現預金の塊こと立川の雄ファルコム。全資産の9割が現預金というワケのわからない資産構成をしています。だから少々どころか適当に毎年赤字出してても大丈夫!のハズですがPSPに進出したおかげでこれ以上儲かっちゃってどうするの!?状態。社員にたくさんボーナス出てるといいですね。
ファルコムは、昔から良ゲー出していたもののプラットフォームと情宣力のなさで損をしていた印象があったので、ただでさえ天使のファルコムゲーがPSPという舞台を得て神ゲーになろうとしているという感じです。胸が熱くなるな
ファルコムゲーって主人公が強くなっていく様を楽しめる、和ゲーならではの育成の楽しさみたいなのがありますし、案外ソーシャルにも向いてるんじゃないかなぁと思いますが、これ以上儲かってしまうとただでさえ金持ってるファルコムが資産という翼を得て銀行になってしまうのでタイヘンなことです。

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5月の決算なので少し古いですが、続きましては軍産複合体のEVAC社。
この会社はやってることはオカシイですけど、決算は毎年コピペのごとく安定しているので、こんなもんです。利益率も高く、すばらしい優良企業です。(去年は一過的に悪かっただけ)
しばらく新作STGが出てないですし、この先もソーシャルに力をいれるようで、当面はSTGを出す予定がないようなのでシューターとしては寂しいですね。STG作るメーカーもそんな多くないですし、STGというジャンルを代表するメーカーと言っても過言ではないのでがんばって欲しいところです。

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PSPディスガイア2が売れたり、ディスガイア4のDLコンテンツが売れたりとわりと調子が良くなってきました。2010年のように、変にオリジナルタイトル乱発しないでディスガイアだけ出してりゃ安定するという、数字的には身も蓋も無い感じになってきました。これだけ特定のコンテンツが屋台骨になっている状況は往年のコーエーにおける無双シリーズのポジションを思い起こさせますね。ラストリベリオンなんて最初からなかったんや……。
ところでフーカかわいくて大勝利って感じですが、箱でディスガイアは出してくれんのでしょうか…。2年位前にxbox360のソフト頒布ライセンスを取得してた気がするんですが…。ダメですか。ぐぬぬ

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なんつーか盛者必衰状態でマジ平家物語。耳なし法一もウハウハ。
前期も期中は赤字だったのですが決算寸前で3DSを発売したこともあり、何とか黒字転換に成功しています。今年は下期にマリオカートが控えているものの、前年度の本体新機種のようなインパクトは無いと思われ、当社の着地予想も赤字となっています。とはいえ、多少の赤字は手持ちの現預金6,000億の前には知れたもんですけどね。貯蓄が好きなのは結構ですけど、ここまで溜め込まれてしまうと、任天堂を潰そうと思えばもはやハイパーインフレしか手段が無いような気がします。

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ビジネスモデルがソフトウェアメーカーと全く違うというのもありますが、ソニーを入れると売上7兆とか出ちゃって、異世界感があるのが今まで外してた要因の一つです。
というわけで、電機屋さんです。ここまでデカいとゲームだけ改善したところでどうこうなるものでもないのですが、Vitaの成功によって家電も併せて謎の復活を遂げる可能性が微粒子レベルで存在する…と思ったが気のせいだったぜ。
ちなみにテレビ事業がクソでグループのお荷物なのは有名ですが、現在のソニーで一番儲かってるのは金融事業です。「金融屋」なんて揶揄される要因でもありますが、余った金でソニー銀行やってて良かったですね。

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ここまで見てきた12社の決算と見比べればまず目に付くのが、脅威の利益率。そして原価率の低さ。これではまるで水でも売っているかのようです。
売上の拡大にあわせて販売管理費も伸びてきていますが、これは多分に広告宣伝費が入っていると思われます。最近では電車の中刷り広告でソーシャルの宣伝を見るのは当たり前ですし、テレビCMも入るようになってきました。
横浜ベイスターズの買収でも話題になった同社ですが、買収の成功はこれまでDeNAを知らなかった高年齢者層にリーチできるゲームが開発できるか否かにかかっていると思いますね。
基本的にプロ野球球団を持つメリットがあるのは、新聞や食品などの日用品を扱う会社です。球団保有による知名度向上の対象は全年齢層に及びますが、低年齢層のみにアプローチできる商品しか取り扱っていないのならば知名度向上の恩恵を得られません。
最近の参入で言えば、ソフトバンクは携帯電話を取り扱いますし、楽天はそれこそ何でも扱ってます。つまり、両社とも全年齢層にアプローチできる武器を予め持ち合わせていました。
だから、DeNAの参入はビジネス的な観点からはこれまでの例とは全く違ったケースと言えます。DeNAは低年齢層市場におけるGREEとの競争による利益率低下を想定して、ブルーオーシャンである高年齢層にソーシャルゲームを展開したいように思えるのです。

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DeNAと同様とてつもない水準の利益率を計上しています。まるで水を売っているみたいですね(2回目)。これだけ儲けているのだからオマエラ仲良くしろよと思うのですが、ここで市場の天秤を片方に揺らすと一気に持っていかれる可能性があるから両社とも必死なんでしょう。
少し前はライトユーザーのパイは任天堂のDSとWiiが一挙に持って行きました。電車ではDSのタッチペンを使っている人たちの姿が目立ちましたが、今では怪しげな暗黒儀式でも催しているかのごとく人々はスマホを指でなぞっています。
任天堂が変わったのではなく、人々のライフスタイルが変わったのです。DeNAGREEはそれにうまく乗っかった。時代は任天堂からソーシャルに移りましたが、まだピーク時の任天堂が持っていた独自のライトユーザー層がすべてソーシャルに移ったとは思えません。ソーシャルにはまだまだビジネス的な拡大余地はありそうです。

【総括】

  • DeNAやらGREEを追加したので、ソーシャルビジネスの利益率にスポットを当てた書き方にしてみました。コナミなど既存の大手メーカーでも、ソーシャルにより収支改善している企業があるのが面白い。
  • 任天堂の独占してたパイがソーシャルにそのまま流れたという印象。根の張ってないユーザーは一瞬で取り込むことができても、去るのも早かった。
  • いやもうこれだけソーシャルが儲かるならそりゃ大手でもソーシャルに飛びつくのも道理だわって話なんですが、オールドタイプのゲーマーには少し寂しい話。つーか個人的にはソーシャル遊ばないので、コンシュマーからリソースがなくなるだけぶっちゃけ不利益でうわん。
  • 全体としては春期から引き続き回復基調。ゲーセンも売上を落としつつ収支的には持ち直してきてるし、身の丈にあった手堅いビジネスしてますねーという感じ。
  • 決算期が一緒だとキレイに比較できるんですけどねー。
  • そろそろ次世代機の噂が…というかここ2年くらいxbox720の噂を聞き続けているような気がするんですが、ここらでコンシュマーのカウンターパンチを期待したいです。少なくとも起動ボタンを押してからすぐに起動する本体が欲しい。
  • 寒くなってきました。こたつでぬくぬくと温まりながらゲームを楽しむのが一番の幸せですね!