ウマ娘がタウラス杯で今度は欧州競馬を教えに来ているという話
みんな~!タウラス杯やってるか~!
タウラス杯の何が良いって馬柱と競馬新聞ですよね。ウマ娘を単なるレースゲームにしないで、ちゃんと「競馬」にするスタンス本当に愛があって好き。
ところでタウラス杯はこれまでのウマ娘のレースと全く違うところがあります。
それは「少人数である」ということ、それから「3人出しで1着を狙うゲームである」ということ。
これはウマ娘が従来モデルとしてきた日本競馬の特徴とは全く異なります。日本競馬ではビッグレースは高い確率でフルゲート(18頭)になるのが当たり前であり、9頭で行われることはほぼありません。また、JRAの競馬施行規約には「第41条 競走に勝利を得る意志がないのに馬を出走させてはならない」とあり、自陣営の他の馬を有利にするために出走することは認められていません。
ところがこの両方が当たり前なのが、欧州競馬なんですよね。
それぞれ見ていきましょう。まず「少頭数」であるということ。出走するウマ娘はたった9人。なんだかゲートも寂しい。
タウルス杯これ本当にビッグレースか?みたいなところあるんですが、少頭数によるビッグレースが当たり前なのが欧州競馬です。少ないときだとGⅠでも平気で3頭立てのレースとかやっちゃう(日本だとレース不成立)。
理由としては、強力な馬が出走してきて勝ち目がないと見たら登録を自重する風土があります。
日本からディープインパクトが凱旋門賞に挑戦したときも、前年の覇者ハリケーンラン、BCターフ勝ち馬シロッコ、そしてディープインパクトの3強と見られていたことから、出走に意欲を見せる陣営が少なく、わずか8頭立てでのレースとなっています。
1度目は、当時マイルGⅠを5連勝していた年上の最強マイラー・キャンフォードクリフスとの一騎打ち状態となり、出走登録してくる馬がいなくなったため。結果は上記動画のとおりで、キャンフォードクリフスを5馬身突き放してフランケルの圧勝。そして2回目は11戦11勝で迎えた状態で、もはやフランケルにマイルで挑戦する馬がいなくなったため。マルゼンスキー状態が世界最高峰で発生したような感じですね。欧州競馬でレジェンド級の馬が出走するレースは出走頭数が少なくなりがちです。
どちらかというとタウラス杯は日本競馬というよりは欧州競馬寄りなんですよね。欧州競馬でのレース展開までオタクに教えようというのかサイゲームス!
というのが1つ目なんですが、本題はここから。
タウラス杯のルールの特徴として「3人出しで1着を狙うゲームである」ということが挙げられます。裏返せば、「誰かに1着を取らせるためにはどうすればよいか」を考えるのが戦略となります。ここでは、3人がそれぞれ1着を狙うよりも、あえて自らは勝負を度外視し、味方を有利にするサポートに徹する枠を作る作戦が考えられます。どうあがいても1着を取れるのは1人だけであり、3人とも勝ちに行く必要は全く無いです。
これをマジでやっているのが欧州競馬。同一オーナーのエースをサポートするために「ラビット」と呼ばれるペースメーカーが出走してきます。
ラビットは、自らの順位のことを全く考えず、先行馬に有力馬がいれば競りかけてペースを乱したり、エースが馬群に包まれないよう配慮した位置取りをとったり、全面的にエースを勝たせるためにサポートに徹します。
日本競馬では、競馬施行規約に「第41条 競走に勝利を得る意志がないのに馬を出走させてはならない」と定められており、例え同一のオーナーの馬であっても他馬をサポートするためだけに出走してくるのは禁止されていますが、欧州競馬ではむしろ当たり前。先ほど例に挙げたフランケルでも、本馬の実兄であるブレットトレインが殆どのレースでフランケルのためにラビットとして出走しています。
さて、タウラス杯に話を戻します。
タウラス杯で求められることは、「誰かが1着を取ること」。3着が2着になっても賞金が上がることもなく、2~4着を独占してもなにもない。ただ目指すのは「チームとして1着を取ること」それだけです。必要なのは全員80点を取ることではなく、例え他の2人が60点しか取れなくても、誰かが100点を取ることなのです。
なので、戦略としてはデバフを撒き散らすために走るウマ娘を1人加えるのが正解です。
そのウマ娘は、0点かもしれませんが、ただひたすらエースに100点を取らせるために走ります。自らの勝利を顧みることなく。可能性を追い求めることなく。エースをサポートすることだけを役割として走ります。
ラビットだこれ…。
ラビットという仕組みは誰かを犠牲にすることを前提としているので、一見畜生のような振る舞いに思えてしまいます。
それを結論づける前に、フランケルのラビットを務めたブレットトレインの話をもう一度させてください。
ブレットトレインは、元々フランケルのラビットを務めるまでは自身も競走馬で、重賞の勝利経験すらあるエリートです。しかし、フランケルのラビットに転向した後は、ずっと勝負を度外視して走り続けてきました。しんがり負けしようが、僚馬であり、弟であるフランケルを勝たせる、そのために、それだけのために走ってきました。
でも、最後の最後、「史上最強馬」フランケルが引退する際に、ブレットトレインにも光が当てられます。
馬であるブレットトレインを表彰者の名簿に加えたこの判断は本当に素晴らしいものであり、自己犠牲のためにレースを走り続けてくれた脇役の価値を広く世間に知らしめるためのファインプレイだったと思います。
タウラス杯、「少頭数」「ラビット」と、まさかのウマ娘・欧州競馬編だったの驚きだったよな。