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ゲーム業界各社決算まとめ - 2015年春

なぜ人は年をとるとゲームから離れてしまうのか。まず親離れしたほうが良いのではないのか。

ある人は言いました。「年をとるとゲームをする時間がなくなる。時間をおいて久々に遊ぶと操作を忘れていて楽しくない。かたや親の顔を忘れることはないので親離れができないのだ」

一理ある。しかし時間がないのなら会社をやめれば良いし、忘れっぽいなら脳をサイボーグ化すれば良い。君の言うことは甘えである。それといい加減親離れをしなさい。私はそう答えました。

ある人は言いました。「年をとると賢くなる。ゲームをする時間で他に何ができたか考えてしまい、比較してゲームが時間の無駄に思えてくるのだ。それに老いた親とともに過ごせる時間があとどれくらい残されているか想像してしまい、残り少ない時間をともに過ごそうとしているのだ」

一理ある。しかしゲームは元々時間の無駄なので有益か否かで比較すること自体が間違っている。君の言うことは甘えである。それと、いい話に見せても横で親が泣いているのでいい加減親離れをしなさい。私はそう答えました。

ある人は言いました。「年をとると新しいことを覚えるのが億劫になる。ゲームというのは遊ぶ前にルールを覚える作業が必要になる。かたや実家のゴミ当番などのルールを忘れることはないので楽である。だから親離れができないのだ」

一理ある。しかし新しいことを覚えられないのならレトロゲーをやり続ければ良いし、スピードラーニングのように楽して続けられる方法を探せば良い。君の言うことは甘えである。それといい加減親離れをしなさい。私はそう答えました。

彼女は言いました。「別に人がゲームやらない理由なんてどうでも良くない? それと、わたしも親のスネかじりたいんだけど」

一理ある。しかし逆に言うと、一日中ゲームばかりやってても良いということなのか。理由なんていらないのか。

「いいよ。それと、わたしも親のスネかじりたいんだけど」

こう言ってくれる人もたまにはいるものです。そんなわけで結婚しました。

いつも適当な事書いて大変申し訳ないのですが、実はここまで全部ウソの話というわけではなく本当の話です。なぜかと言うと、いい加減創作実話のネタが尽きてきたからです。

いつもどおり読み飛ばしていただけましたでしょうか。では今回も決算の話を始めます。

このまとめも最後回ですが、振り返るとかれこれ8年間もやってましたので、今回は収支については、売上と本業の儲けである営業利益を推移8年分、それから8期前の決算と直近決算の財務状況を比較してみました。8年もあればゲームのハード周期を超える期間ですし、それぞれの企業の大まかな歴史みたいなのを見ることができるかもしれません。

短信からアイドルマスターのアの字もなくなってしまいましたが、ちひろさん、お元気でしょうか? シンデレラガールズのアニメ、すごく良かったですね。あの妾の子がよくここまで大きくなったと涙を流しながら見てましたが、かな子の横幅が安定しない等、ところどころ作画がしんどそうなところあって、第2クールも7月からになるとは思いませんでした。課金が足りなかったのかな?

直近決算では過去最高益を計上していますが、ガンダム仮面ライダーといつもの主要どころが軒並み数字を落とす中、妖怪ウォッチが補って余りある売上を計上。当初予想が70億の商品が550億売れちゃうんだから、流行りモノってほんとわからないよね。来期はブームの経過を勘案して320億の売上予想と数字を落としていますが、バンナムって伝統的に流行商品は固めに計算する傾向があるのでアテにしないほうが良いです。それよりガンダム760億、仮面ライダー250億の来期予想というのが数字としても大したものなのですが、本来コンテンツ産業って流行り廃りなのに、新シリーズの投入で同じIPがここまで毎期それなりの数字残し続けるって方がすごいですよ。このへんの、コンテンツ定着させるぜパワーみたいなのがバンナムの見えない事業基盤というか底力みたいなところがあるのかもしれません。

一方で予想どおり非常に悪い数字が出てきたのがゲーセン事業。コンシュマーにおけるネット対戦の普及などもあり、ゲーセン事業は各社売上の下落が続き、青息吐息ながら効率化を進めてきましたが、そこに消費税の増税が直撃というのがここまでの流れ。

バンナムの場合、ゲーセン事業は前期から赤字転落していましたが、足元で更に悪化。売上555億、営業損失23億となっています。外部環境の好転が見込めない事業であることから、放っておくと更に赤字が悪化しますので近いうちにメスが入るのは間違いなく、またゲーセンが減りそうなのは頭痛いところですね。ゲーセンはコインいっこで遊べるのが強みであり、また弱みでもあるので、インフレや増税に対して構造上の弱みがあるんですよね。消費税10%という二発目のパンチも控えてるし、オーディエンスが「まっくのうち!まっくのうち!」コール始めそう。

今回掲載している8期での財務の推移を見てみると、さすがに大手だけあって安定的で気持ち悪いくらい構造の変化がありません。利益でカネが余ったら適度に株主に還元したりしてバランスシート自体大きく膨らみません。大きく冒険しない安定的な企業と言えますね。

ハードビジネスは恐ろしい世界です。任天堂がコケた。マイクロソフトがコケた。海外の旺盛なコンシュマー需要を背景にソニーの一人勝ちが始まりそうなご時世ですが、誰かを忘れていないか。セガは倒れたままなのか?

直近決算のバランスシートを見ると固定負債の金額が多く、ここに出てくる企業の中ではわりと借入のある方になります。ゲーセン運営があるので固定資産も多く、継続的な投資が発生する商売を行っていることもありますが、全体としては積極投資タイプと言ってよいでしょう。そんなわけで、日本でいつまでもカジノ法案が通らないから先に韓国でカジノ始めちゃいました。韓国のパラダイスグループと合弁会社を立ち上げ、仁川に2017年開業予定で統合型リゾートの開発に着手しています。そうなれば統合型リゾートの運営ノウハウは、国内企業であれば先んじてセガサミーが手にすることになるので、カジノ開業にあたって海外オペレーター必須と言われた状況は少し変わることになるかもしれません。まぁ法案通らないと身も蓋もないんですけどね。

ところでセガサミーの利益というのは大体旧サミーというか、パチンコ・パチスロから生み出されているのですが、このパチ業界ってのもゲーセン業界と似たり寄ったりな斜陽産業で、遊技人口は1996年の2,760万人から2013年には970万人まで下落しているとされています。同じ会社がパチンコ・ゲーセンとよりにもよって斜陽産業を二種類も抱えているのは先行きを考えると悲劇的なことではあります。したがって次の収益の柱としてカジノを見込んでいるという話です。もし法案が通って、セガサミーが国内で統合型リゾートに携わることになったとしたら相応な資金負担が発生するはずで、とてもじゃないけどギガドライブとか作ってる資金の余裕がないということになります。したがって、コンシュマーハード市場は当面ソニーの一強が続くでしょう(お天気お姉さん風に

そのセガなんですけど、セガゲームスとかいう名前に変わって実質的に株式会社セガガになってしまったのですが、ここ2年ほど調子が良くて増収増益が続いています。2年前は赤字だったのは内緒な。ここでも登場するのがスマホで、ぷよぷよクエストチェインクロニクルの好調によるものです。チェンクロは、かれこれ1年以上やってて気に入ってるっちゃ気に入ってるんですが、スマホのシングルプレイゲームって遊びの幅がそんな広いわけでもないですし、あまり語ることないところありますね。

プレイヤー同士の関与が薄い閉じた世界であれば遊びの幅が広いほうが良いし、そうでなければ社会性があると良いですね。トレードなんかで「経済」が具備されてるとか、善悪の行動をプレイヤーが決めて、UOみたいに裁きもプレイヤー同士が行う「治安」が具備されているとか。現実社会では会社や警察が行っている機能を、ゲーム的に翻訳して織り込んでいくと人間と人間の摩擦のようなものがたくさん発生して、その制御不能制が思わぬ面白さを生むことがあります。チェンクロに限らずですが、スマホのゲームはユーザー同士が事件を起こせるような社会的余地みたいなのあると良いなぁと思ったり思わなかったりします。

ドラコレで一発当ててから、あの人は変わってしまった…。と、成金の元カノみたいなコメントをしたくなる程度には、ドラコレ前後を機にスマホ大好きっ子に変身。決算短信がモバイルゲームについて書くところから始まったり、コンシュマーのパワプロにまで課金要素入れだすなどしていましたが、その方向性が産みだした歪がP.T.の悲しい最期に繋がったのではないかと邪推するところはあります。開発自体やめるって、プロダクション制廃止するからとかそんな問題じゃなくて根が深すぎでしょ…。というかP.T.は、人繰りの問題さえつけば、あれこそクラウドファンディング向きのような気がする。ネームバリューはあるわけですし。日本のゲーム開発は死んでなんかいないってアレだけで示せるような雰囲気あったんで、実にもったいない…。

あ、でもパワプロ2014の栄冠ナインはまだやってますよ。100時間から先は覚えていない程度には遊んでると思うのですが、また定期的にパワプロに栄冠ナイン搭載してくれればありがたいです。

そして、セガサミーと一緒に待てど暮らせど訪れないカジノ法案の可決。セガサミーコナミのカジノの話って相当前からの話でもう何言ったか覚えてないレベルなのですが、以前の段階からギリギリという話はあったので、もう今さら可決しても2020年の東京五輪に間にあわないんじゃないでしょうか。もう諦めてゲーム作りましょうゲーム。あんまりゲーム作らないとコナミワイワイワールドに出すキャラがいなくなっちゃって、いざという時困りますよ。

財務の推移に目をやるとバンナム以上に気持ち悪いほど昔と変わってないです。利益の積み増しで純資産が増えて借入が減っている以外は、特に固定資産とか償却の範囲内で投資してる感じで、8期前とほとんど金額が変わっていません。言い換えれば「儲けを溜め込んだだけ」。コンシュマーだけでなくスポーツクラブの売上も下がっていってるのだからもう少しリスクを取ってもとは思うんですが、例によって投資にカネがかからずに回収の早いモバイルゲームに、という考え方なのかもしれません。

 「まもののむれがあらわれた」という表現で、「あぁドラクエね」と感じられる人はたくさんいて、今でも多くの日本人の深層心理にドラクエ文脈が息づいているというのがスクエニの強みです。ユーザー層の裾野の広さとしてはFFも似たようなもので、だからこそドラクエ10FF14も下火になったMMOでこれだけのユーザー数を確保して、今やスクエニの安定収入源となりました。山っ気のあるパッケージソフトと違って、月額課金は収益の見込みが立てやすいので今後も底支えという形で収支に貢献してくれるでしょう。ドラクエの強さは、ドラクエモンスターズSLにも発揮され、こちらも引き続き好調。最近のスクエニの好調さはドラクエブランドによるところが大きいです。となると、気になるのはスクエニもうひとつの柱。

かれこれ10年近く続いた終わらない開発がもうじき終わろうとしています。どう着地するにせよ楽しみなFF15がリリースされる時が訪れました。厳密には明言されていないと思うのですが、来期売上予想が2,000億以上となっており、これはドラクエ9FF13が同時リリースされた平成22年度決算の売上高1,922億円を超えるものです。それほどのお化けコンテンツはそう転がっているものではないので、数字的には来期中の見込みで間違いないかと思います。長期休暇前になると思うので12月か3月でしょうか。

シリーズと言っても、枝番がつかない場合において、FFはRPGであるというジャンルとモノの名前くらいしか共通点がなくて、ジョブ・マテリア・スフィア盤・ガンビットとシステム的には毎回ほとんど別ゲーみたいなところあるので、なんだかんだで楽しみにしています。数十億の予算ぶっこんで数百万本売るビジネスモデルを堅持するという日本では稀有な例なので、位置づけとしては大艦巨砲主義というロマンに近いと思います。

零式付きの体験版は買わなかったんですが、この手のスクエニお得意の体験版付属ゲー久々ですよね。子供のころスターオーシャン2に付いてたアストロノーカが衝撃的で、そればっか遊んでて本編も買った記憶があります。今思えば一種のフリーミアムの先駆けみたいなところありましたね。あるいはヤフーの無料モデム配りみたいな。

直近決算では、モンハン4というヒット作を抱えた前期から比べて大きく売上高が下落。今期はモンハン4Gはありましたけど、思ったほどの本数は出なかったですし、一方であとはデッドライジング3くらいしか大きなヒット作はありませんでした。

ちなみに来期売上予想は760億。来期中にバイオ7は来ないの確定でちょっと残念です。一方で事業戦略によるとスト5は一応来期中に入るようなので、PS4用のアーケードスティック買う準備しなきゃな! しかし本体の世代が変わるたびに謎のコントローラーが増えてくるのホント困るんですけど、みんなどうしてんでしょうね。

あと、先般のバイオ1みたいな過去のヒット作のHDリマスター続けていくみたいなんですが、一体候補作とは…。ハッ! まさかゴッドハンド?? 冗談抜きにわりと高画質向けのゲームだと思うので美麗なグラフィックでゴッド本塁打やりたいです。

最近カプコンの存在感薄いと思ったら、ソフトの発売本数でも前期42本、今期33本、来期予定が29本だそうで、モバイルにも手を伸ばしつつコンシュマーはDLCで一本の寿命を伸ばしていく方針みたいです。

しかしこれがあのカプコンかというくらい、最近は新規IPの話題が何もなくて新鮮味ゼロなのですが、実質新規IPと言いがたいブラッドボーンがあれだけ賛美される状況ですし、カプコンがここまで動かないということ自体がコンシュマー市場の状況を表しているみたいで残念感溢れます。暗いと不平を言う前に、自ら灯りを付けたら焼け死にました。みたいな火中の栗を拾って火傷することをみんな恐れている感じです。かと言ってUBIやロックスターみたいなバブリー予算でゲーム作る時点で、英語圏でのヒットを前提に作らないといけないので、筋肉とかドンパチとかゾンビとかなぜか1人は劇中に必ず登場しなければならない黒人とかが必要になってくるので、それは別に欲しくなかったねん……みたいな悲しい結末に。それに、たぶんですけど日本人が作るマッチョストーリーって、欧米人の描いた二次絵みたいな感じで、現地感覚からするとコレジャナイロボ感あるような気がします。

日本人にも欧米人にも文脈を共有できるような作品がホイホイと作れればいいんでしょうけどね。そう、例えばゴッドハンドのような…。

ホットケーキミックスって、だいたいパッケージの裏にアレンジレシピ書いてるじゃないですか。いくら美味しくとも、毎回ホットケーキばかり作って食べてると人間いずれ飽きるので、他の用途にアレンジしてホットケーキミックスを使ってみてねという提案です。供給側としては、可能な限り同じものを作って提供するとコストが低くなって儲かります。

無双もストレスが溜まった時など定期的に兵卒を草刈りしたくなる謎の吸引力はありますが、さすがにいつも同じ無双だと飽きてしまいます。そこでシェフは考えました。基本はそのままに、少しずつ味付けを変えて料理すれば良いのではないか。こうしてホットケーキミックスが同じ材料でパウンドケーキやクッキーに化けるように、今期も戦国無双4-Ⅱ、ゼルダ無双、海賊無双3、ドラクエヒーローズと多くの新しい無双の仲間たちが誕生。コーエーテクモは過去最高の業績を達成するに至ったのです。ありがとう無双! ありがとうホットケーキミックス

無双ホットケーキミックス説などという意味不明な供述をしているうちに無双という文字がゲシュタルト崩壊してきてしんどくなってきましたが、8年間の推移を見てみるとコーエーの場合は収支よりも財務のほうが面白いです。利益の蓄積で使用総資本自体は増加しているのですが、そのほぼ全てが固定資産の増加に回っており、流動資産の増加はわずかです。

バランスシートを見るときは、右側は「どのように資金を調達したか」、左側は「その資金をどのように運用しているか」で見ると左と右の数字が一致する意味もわかりますし、理解がしやすいです。コーエーの場合は、借入をせずに利益の蓄積で純資産を積み上げて、固定資産に投資しているということが見て取れますね。投資有価証券を多く所有して毎期多額の配当をもらったり、ガストを買収したりと、儲けたお金を遊ばせないタイプと言えます。

ただ、ソフトバンクの孫さんのようにガンガン資金調達してまで積極的かというとそうではなく、借入がないということは、あくまで儲けたカネの中で投資するという上限を設けていることになります。

バランスシートの負債側というのは、調達コストの低い順から上から並んでまして、流動負債は最もコストが低くリスクが高く、固定負債はコスト中間リスク中間、株主資本は最もリスクが低い代わりに最もコストの高いカネです。

東証の社長が「日本の経営者は株主資本のコスト意識が低い」と指摘していましたが、なぜかこの国では無借金が是とされる傾向にあります。自己資本比率が高ければ金利の安い借入を起こすことができるので、そこでレバレッジ利かすのが最も効率のよい経営でして、余ったカネは他の投資に回せば拡大戦略が取れるのですが、一方でリスクを高めることにもなるのでこの国では避けられがちなのでしょう。また、利益の蓄積を待って投資するのは時間がかかるので、人のカネで商売するのは時間を買うようなものです。ソフトバンクのように1代で王国を作ろうと思えばどれだけ他人資本を入れれるかが勝負となります。

そういう意味では、ここで出てくる企業の中では投資をしているタイプに見えますが、世間的にはまだ手堅い部類。というかゲーム業界って資本戦略的には全体的に手堅い。最近バンナムセガサミーのような超大手レベルの再編が見られないですが、「どこも逼迫してないから」というのがその理由の一つかもしれません。

思えば色々ありました。まじめに書いて伝説の呂布的な話になってもアレなので、とりあえずラップ歌ってごまかしてみたり、ラノベのイントロパロってお茶を濁してみたりしましたが、あんなにドラスティックな逝き方をするとまでは思いもよりませんでした。惜しい方を亡くしました。

毎期ものすごい勢いで売上が減っていくのは事業縮小として既定路線でしたが、循環取引で売上水増ししてもなお減ってて結果的に粉飾風吹かせてなかったという想定の遥か上を越えていく始末。普通循環取引したら不自然に売上増えちゃってそれが違和感に繋がるんですけどね。粉飾で資産増やしたバランスシートで債務超過回避ギリギリだったので、粉飾をやって一時しのぎするかやらないで債務超過に落ちるかという、1位がシャーロットで2位がラッスンというどっち転んでも地獄的な高崎山動物園のサルの名前みたいな悲哀があったわけですが、人間追い詰められるとなんでもやってしまうという事例でもありました。そりゃ古畑もカイジ騙しますわ。

損益の方は、本まとめのグラフでは本業の収益である営業利益を並べているのでギリ黒字が並んでいますが、最終利益は引当金繰入とか有価証券評価損とかありますので、毎期赤字です。赤字になるとその分純資産が減少していきますので、その分借入などして調達するか流動資産・固定資産を減少させることになります。インデックスの場合は、無駄な資産をたくさん持っていましたし、借入を増やせるような状況ではなかったので、必然的に資産処分でバランスシートを圧縮していくことになったわけですね。

その結果がH20/8期とH24/8期の財務状況の差として露骨に現れたことになります。4年でここまで変わるのは大したものですね。

資産処分による借入の減少、赤字による純資産の減少で、H20/8期の121,316百万円からH24/8期の23,132百万円まで使用総資本が大きく圧縮されています。使用総資本というのは簡単に言うと会社が商売に使ってる資金の量です。コーエーの欄で、バランスシートは左側が資金の運用先、右側が資金の調達元と言いましたが、その片側の合計が使用総資本となります。調達してきたカネと運用しているカネの金額は必ず一致しますからね。

そして最後の姿では、流動資産・固定資産という商売に使ってる資産の資金を、ほぼ流動負債だけで調達しているという形まで追い込まれたわけです。会計原則では、一年以内に現金化される資産を流動資産、一年以内に支払われる負債を流動負債と分類します。つまり、ほとんど1年以内に支払期限のくる債務(22,365百万円)が1年以内に現金化される資産(7,713百万円)を上回っているわけで、上場廃止とかそれ以前に財務的には倒産にいたるような非常にマズイ状況です。

実際は、流動負債のほとんどが借入金なので期限を伸ばした借換をすればよいわけですが、これが取引先に切った支払手形やら買掛金などであれば、支払いを待ってもらわない限り倒産します。金融機関から期限を伸ばした借換を拒否されるか、手元資金を超える支払いが来て払えなくなる、これがだいたい倒産のパターンです。

とまぁインデックスの場合の直接的な死因は粉飾発覚だったのですが、企業が倒産にいたるまでの一般的な道筋を示すモデルケースみたいな事例でもあるので、インデックスの名前は教材として人々の心に永遠に生き続けることでしょう。ありがとうインデックス!

あ、でもアトラスが生き残ってくれたのはほんと良かったです。

いつぞやファルコムのことを「歩く現預金株式会社」と表現したことがありましたが、よくよく考えてみると誤りでした。どこが間違えていたかというと、会社というのは人間ではなく、足が生えていないため歩かないのです。訂正させていただくとともに謹んでお詫び申し上げます。

かつてファルコムの年間周期は、第3四半期まで赤字が続き、決算前の9月頃にイース英雄伝説の主力タイトルを発売して一気に黒字転換するという、夏休みの終わりに一気に宿題終わらす小学生みたいなルーチンが続いていました。ところが主戦場をPCからVitaに移してから軌跡シリーズが大ヒット。旧作品も継続的に売れるので上期から黒字になって下期の大型タイトルでブーストかけるという、夏休み前半で宿題終わらせた小学生みたいな無敵っぷり。マーケティングのイロハのイに「とにかく市場のデカイ戦場で戦え」みたいなのがありますが、その教えを絵に描いたような成功でした。だからちょっとお勉強したカシコイ人たちは、すぐにドヤ顔でスマホスマホ言ってしまうのですけどね。

財務に余剰を抱えながらも積極的な業容拡大をせず、なのに軌跡バブルが来てしまったので毎期毎期膨れ上がる現預金。直近の3月の財務状態だと35億の総資産のうち32.5億が現預金。上の表の固定資産とか固定負債のところも、変な棒が出てこないと表現できない状態に。これは一体全体何なのか。なぜ上場しているのか。いったい何がしたいのか。インフレが来たらどうするのか。まるで老人がタンスに入れた壺に現金を貯めこんでいくような運用放棄系の財務戦略については、その余裕が東亰ザナドゥみたいな新規IPやるゆとりにつながってるのだと思うと、遊ぶ側的にはいいぞもっとやれというところがあります。結局のところ、ゲームを遊ぶ側からすると、とどのつまり自分の遊びたいゲームさえ出てりゃ、儲かってても儲かってなくとも、貯めこんでても投資してても、どうでも良いのです。あ、でも潰れたらゲームできなくなるので困りますね。

東亰ザナドゥの発売日は、例のとおり9月30日。今年のファルコムの夏休みの宿題です。ゲーム性は全然違いますけど、個人的にはタイトルからエクスペリエンス臭がするというか、ちょっとオペレーションアビス思い出します。ファルコムの現代ものということで、まさか立川かと思ったら本当に舞台は立川らしいですね。これはゲームの中で第一デパート復活あるで。

苦戦が続くEVAC社。わりと早い時期にソシャゲ参入して「しろつく」で一発当てたは良かったものの、その後はヒット作に恵まれずかれこれ3期赤字が続いています。今期も赤字だと4期連続。ソシャゲと比べると劣るものの、平成23年ごろまで毎期安定して1億程度の利益を生んでいたアーケードを切り捨てたのは判断として正しかったのか。

経営とはリソース管理です。持てる人間や時間、投入できる資金も限られていますから、将来的に閉鎖が続いていくゲーセンにリソースを割くよりも拡大していくモバイル市場へ、というトレンドを視野に入れた事業展開だったかと思います。財務を見ると、規模が縮小しているように、現金商売になるので資金負担が減るのも良いところですしね。

その判断によって一発当てたのがガンホーであり、コロプラであり、ミクシィであるとは思いますし、小さいところではドリコムなんかも別業種からモバイルゲームに事業転換して生き残りました。大きな海を目指していくという方向自体は正しかった。ただ、大海で戦う武器だけが無かった。

正直、ドンパッチンはさすがケイブと唸らされるようなキチガイ…じゃなかった独創的なロボットが多数登場して、ガチャを回すたびにプレイヤーが白目になっていくという今までにない前衛的なゲームでしたし、本来かわいらしくプレイヤーを導くはずのナビゲートキャラクターが、電源を切って東京湾に沈めたくなるタイプのロボットという点も刺激的すぎて、普段ゲームを遊ばない一般のプレイヤーにはウケが悪いのではないかと心配していました。逆にパズドラ遊んでる若い子たちがドンパッチン遊んでるようだと世の中の方を心配してしまいます。ぶっちゃけゲーム的にも、アタックモード発動するたびに攻撃の演出でゲームが止まるSTGの良さを殺すようなテンポの悪さがあって微妙感がありました。

そんなケイブの救世主となるべく、先月リリースされたのが「ゴシックは魔法乙女」、通称ゴ魔乙。誰がこの略称言い出したんでしょうね。ファミ通提灯記事だと「ゴシまほ」って略されてたので、ホントはそう読んで欲しいのかもしれないですよ。

ゴ魔乙は、とにかくコンボを繋げて稼ぐという従来的稼ぎの面白さもある一方で、難易度の低いモードでもケイブシュー独特の破壊感を堪能できるようにできてて、わりと万人向けの良作だと思います。ただ、利益の面で言うと、正直スコアアタックでもしない限り課金の必要性がないので、普通に遊ぶ分にはどこで課金したらいいのかわからないレベル。スマホという万人向けの筐体で、一般大衆に課金してもらえるのがモバイルゲーのいいところなのに、それを活かしきれずに相変わらずコア層から集金している構造になっています。この不器用さ、実にケイブっぽい。

そもそもスマホSTGやるの自体向いてないですよね。クソみたいに操作しづらいですし。みんながSTGを楽しめるにはどうしたらいいんでしょうか…。

あ、そうだ。いいものがあるんですよ。ちょっとゲーセンに来てください。これこれ。アーケードスティックっていうんですけどね。これで操作できるようにしたらどうでしょう。ひょっとしてゲーセンとSTGって相性いいのかも?

こうしてみると3年に一度調子の悪い年があるという隔年選手みたいな様相もある中、売上は着実に伸びていっていますが、未だにディスガイア頼みの状況が続いており、ネクスディスガイアを作るという課題自体はかれこれ10年くらい続いています。コーエーの無双ホットケーキミックスの話じゃないですが、思い起こせばファントムブレイブあたり、ディスガイア・フォーマットで味付け変えて食ってこうとしてたのかもしれません。ディスガイアシステムって結構味付け濃いので、一回食べたら当面いいやみたいなところがありますから、難しかったのかもしれません。

というわけで、有力IPをこれから作る必要があるという課題を抱えているため、新規IPにこれからもチャレンジしていく方針ということで非常にありがたいことです。逆に言えば、日本一は有力IPを持っていないからこそチャレンジをしますが、ほかの大手どころは既に有力IPを抱えてしまっているからこそ、企業が合理的に動いた場合、チャレンジのインセンティブが働かず、結果的にシリーズ物が溢れてしまうのかもしれません。ほんと合理性というのは、正しくあれど面白くないですね。エンタメ産業が不合理を作らずして誰が世の中を面白くするというのですか。みんな、自分で作れない不合理を待っているのです。

従来からディスガイアの英語版もリリースしてきましたが、短信と同時に公開された成長戦略によると、これから海外需要に応えるためにSTEAMへの展開を始めるみたいです。特定の本体に依存しないリスクヘッジ的な側面が強そうですね。ちなみにこの「成長戦略」(注:リンク先PDF)ですが、大手他社が大きな文字とグラフを活用したいかにもパワポ臭いカラー資料を作るのが当たり前な中、特に数字も並べることなく、抽象的な想いを言葉にしてWordにベタ打ちでPDF吐かせましたみたいなところが、いい意味でも悪い意味でも中小企業の延長線的な不器用さがにじみ出ててわりと好きです。具体的な施策が後半まで出てこなくて、最初のほう社員向けの説教読んでるのかと思いました。日本一は、本業以外にもこの辺のIR技術が課題といえば課題かもしれませんね。

短信の頭に「「ゲーム人口の拡大」という基本戦略に基づき~」という文言が何気なく復活していました。前にサラッと外れてたのは一体何だったのかわかりませんが、今後もこのビッグな方針を貫いていてほしいですね。

円安もあり久々の営業黒字を計上しましたが、こうして改めて見ると、わずか6年で売上が1/3になっててえらいことです。並の中小企業だったら半分になった時点でだいたい潰れています。そうならないのは、財務に食いつぶす余剰があったことと、元々の発射点が高かったこと。ピーク時の売上1.8兆規模で営業利益率30%を確保するのは相当高い水準です。

たった2万5千円で売っていたWiiやDSをどれだけ安く作ることができていたか、そして「ゲーム画面ではなく、遊んでいる人を見せる」というCMの見せ方の革命が当時どれだけ効果を発揮したかを数字が如実に示しています。その後Wiiの売上も頭打ちになってきたところで、転換点は平成23年の新携帯機3DS。当初「DSに3D機能付いただけなのに2万5千払うのきつくね?」という認識をしている人も多く、すれちがい通信なんかの新機能を周知できずスタートダッシュに失敗。あっという間に値下げに追い込まれ、赤字転落。

頭の痛いことは続くもので、泣きっ面にWiiU。こちらは台数が伸びませんでした。ファミリー世代にリーチしたWiiの強みを活かすためにWiiUという名前にしたのだと思いますが、逆に任天堂の新型機と認識されない事態に。未だにうちの親なんかはWiiWiiUの区別がついていません。また、ファミリー向けの機種でタブコンが1台しかないのは致命的でした。このアンマッチは帯に短し襷に長し。タブコン増やすとコスト的な問題が出ますし、タブコン使わないようにするとタブコンなんていらんかったんや問題になるという二者択一の構造問題があるので、新本体のNXに切り替えていくという判断はありです。今年の頭くらいから、ファミ通の発売予定欄見てもWiiUのソフトが全然なくなってきてたのでそれっぽい感は漂っていましたが…。

今後については、ガンホーDeNAとの提携でも明らかなように、知的財産権でウハウハ方式に切り替える方針のようですので、売上1.8兆を回復するより利益率の向上で利益確保を行う方向に舵を切っていくものと思われます。かつて「遊び方にパテントはない」と言い切っていた会社と同じ会社かと思うと胸が熱くなるな。財務はきっとコンパクトに推移するでしょう。

自分ところで生産を行うと在庫リスクとか抱えることになるので、やっぱライセンスビジネスが一番よね、とは多くの製造業の経営者が羨ましがるところではあります。ああ、適当にゆるキャラ考えて誰かにぬいぐるみ製造させて遊んで暮らしたい…。

そしてUSJと提携という話。ついに夢見た任天堂ランドですよ。実際はハリーポッターみたいに、任天堂エリアみたいな感じで実現されるのだと思いますが、ファミリー呼び込みたいUSJにとってピンズドなコンテンツかもしれません。持参した携帯機を地面に落として、壊れたらメカ山内組長から鬼の形相で怒鳴られるアトラクションとかで子どもたちを喜ばせて欲しいですね。

中間期の流れから変わらず、営業利益ベースで言えばモバイル事業以外すべて黒字で、モバイルもソニー・エリクソン買収時の営業権償却を行ったことという一過性の要因により赤字と、好調でないにせよそれなりという形。PS4は依然好調ですし、懸案のテレビが赤字脱却するという今後に向けても見通しの良い決算になりました。やっぱPS4は良い本体でしたよね。全体的に動作が軽快で、ゲームが遊びやすく作られているところが良いです。PSPlusの月額課金も、多くのユーザーを獲得して予算も潤沢になったのか、フリープレイのラインナップも充実度が上がってきていて、歯車が良い方向に回りだしてきています。TrialsFusionとかもそうですが、最近はDLCで拡張するソフトが増えてきてるので、本体だけフリープレイに投入してDLC買わせるみたいな事例も増えてきそうです。

ところでソニーの稼ぎ頭といえば銀行・生命保険の金融機関業務ですし、今期も2,000億の営業利益と一番稼いでいる分野なのですが、財務を見ると負債額の増加にその成長を確認することができます。H20/3期決算の預金負債1.1兆円からH27/3期決算の預金負債1.9兆円と銀行業務の拡大を見てとれますし、H20/3期決算の保険債務3.3兆円からH27/3期の保険債務6.4兆円とこちらも大きく増加。金融機関というのは資金を調達してきて運用する利ザヤのスケールで稼ぐ組織ですから、債務は多ければ多いほど良いんですね。

今や金融が大黒柱なので「ソニー銀行」みたいな言い方をされることの多い会社ですが、逆に言えば製造業で稼いだ金を運用する先を見つけて、収益の柱まで育て上げる先見の明のあった会社だとも言えます。トヨタだって自社の信用力を背景に銀行から金借りて、車買う消費者に貸しつけて車の代金と金利で二重に儲けるビジネスモデルで成功してますし、カネを遊ばなさいことの重要性を実証した例と言えます。

余談ですが、トヨタって無借金の会社みたいに認識してる人もいて逆にこっちが驚いたこともあったんですが、それは全く逆でトヨタはむしろ日本一借金の多い事業会社です。借入というのは多いからダメというわけではなく、事業に見合った適切な規模と利ザヤで利益の出る運用方法さえ確保してさえいればそれで良いのです。

梶谷・筒香・ロペス・バルディリスと並んでいる打線を見れば、今期ベイスが強いなというのは予想していた人も多いと思いますが、現時点で首位に立っているのは2つの嬉しい誤算があったからでしょう。一つは、グリエルの代役元キャップの好調。相変わらず長打がないのでOPSは低めに出ますが、出塁率.350程度を維持してくれれば強力な中軸が返してくれますのでそれでうまく回るはずです。もう一つは、新守護神の小さな大魔神山崎康晃の活躍。接戦を取れるのは非常に効率的に勝ちを積み上げられます。また、野手も投手も中核選手に故障者がないというのも大きい。ここにきて梶谷がちょっと心配ですが。やっぱ優勝するチームって大きな故障者が出ずに、打つべき人が打ってることが多いですよね。今シーズンのここまでは巨人は阿部や坂本、広島はエルドレッドや黒田が故障してチームの当初計画を大きく狂わせています。かつて原監督は「強い選手が欲しい」と発言しましたが、どれだけ能力があっても会社に来ない社員は戦力にならないですからね。他の選手の負担も増えます。逆に阪神はなぜ主力に大きな故障もなく鳥谷も残留して去年の戦力そのまま持ってこれてるのにこんなに弱いのか…。メンタル故障してる選手が多いからですかね。守ろう! 社員のメンタルヘルス!(省略されました。続きを読むには番長にもう一度優勝を経験させてあげてください

直近決算ではトレンドを変えられず減収減益でした。この数字が訴えてくるのは、売上が下落する際の撤退戦の難しさ。たとえば平成24年3期と直近期の売上は同じくらいなのですが、利益は大いに落ち込んでいます。事業が絶好調なときは、もっと仕事をやっていくために人を増やしたり、投資をしたり、ベイスを買ったりして規模を拡大するのですが、天井を叩いて右肩下りになるときは、その投資が招いた固定費は減りませんから損益分岐点は一段高くなっています。

無理して手を広げなくていいじゃんというのは簡単ですが、それはそれで次の弾がなくなるんですよね。んで、今ヒットしてるものが終わったら、残るのは小さなショボくれた企業だけです。今まで何をやっていたんだと、株主はブチ切れます。そうならないために、企業は次から次に投資を行って新しいものを生み出し続ける必要があるのですね。回し車で走るハムスターみたいに終わることなく。そして、規模を縮小する撤退戦の難しさを今味わってるのがDeNAGREEのソシャゲプラットフォーム勢と、任天堂です。

任天堂DeNAと組んだのは、任天堂の弱点とも言えるモバイルとネットワークの補強じゃないかと思うのですが、この秋くらいにはニンテンドーネットワークの新しい形が見えてきそうな感じで楽しみなところです。

そういやモバゲーの海外事業って最初から赤字が続いていて黒字になったの未だに見たことがないのですが、やっぱガチャの成功ってギャンブル好きの日本人の性格特有のものだったんですかね。パチンコとかJRAとかやらの積み上げで日本人のギャンブル支出って世界一らしいですし、モバゲーの本質はゲームでなくギャンブルであるとちゃんと認識していればこんなことには…。友達と酒飲みながらガチャ回すのは盛り上がりますけど、友達と府中競馬場行って馬券買う盛り上がりとぶっちゃけ一緒みたいなところあります。

最後に、ベイスは真剣に経営してくれる本当にいい会社に買ってもらいました。「つまらなかったら返金チケット」とかの失敗もありましたが、フロントが能動的にアクションしていった結果、観客動員数も2012年16,194人、2013年19,802人、2014年21,730人と右肩上がりですし、今ではもっとお客さん入っています。今期の赤字は21億。来期は縮小して13億の赤字を見込みます。短信上、現在「その他」に分類されている事業セグメントも来期から「野球事業」として独立して区分するので、より収支が見やすくなりそうです。チームもいよいよ強くなってきて、苦しむ親会社に「あのとき助けてもらったベイスです…」のベイスの恩返しが本当にあるかもしれません。

なんだかんだでプロ野球というのは古い企業で運営されてきた組織です。プロ野球が継続的に続いていくには独立採算でやっていけるようになる必要があると思うのですが、今後プロ野球をメジャーのような近代ビジネスに育てるのは、IT企業3球団にかかっているところが大きいと思うのです。

ビジネスモデルがほぼ同じなのでトレンドとしてはDeNAと同じ軌道を辿っています。シンデレラガールズやワンピースに相当するヒット作がなかったので、頭打ちの時期はDeNAより少し早かったですね。直近四半期の決算では、商売の利益である営業利益は黒字ではあるものの、子会社の「のれん代」について207億円ほど減損損失を計上しているため最終赤字となっています。

前回のソニーの項目でも説明しましたが「のれん代」というのは、いわゆる営業権のことで、例えば150の価値を持つ会社を200で買収したとき、残りの50について会計的には資産として処理します。一応200払ってるわけですから、50については見えない価値があるものとして解釈するわけですね。ここから、日本会計基準を採用している会社は、5年に分けて償却で損失計上して処理します。国際会計基準を採用している会社は、定期的に償却で処理せず、その価値がなくなったと判断されるときに一括で処理します。

GREEは、日本会計基準を採用しているため本来5年で償却処理するところ、買収時に見込んでいた収益の回収期待が薄くなったとして、今期前倒しで損失処理したというのが、「のれん代」の減損損失が発生したという理由となります。具体的には、ポケラボとオープンフェイントの買収の件ですね。端的にいうと買収額算定の失敗となるでしょうか。ぶっちゃけ自社ですらよくわからないのに、他社が将来生む利益を適切に算出するというのは実に難しい作業です。コンサルは「市場規模がこれだけですからこれだけのシェアを取るとして~シナジー効果が~」と言いますが本当は適当なものです。コンサルはわかったふりをするのが仕事であって、本当にわかるのであれば自分で商売をやっています。

ところで城姫クエストって周りで誰もやってないんですけど、どんな感じなんでしょう。完全に見た目がDMMそのままという感動的なトップページ見ただけで頭痛くなってチュートリアルすらやる気も起きなかったんですが。おっ、次はDMMと裁判か? と思ったら城姫は角川が噛んでるのでそうはならなさそうで残念、じゃなかった良かったです。

GREEでリリースされたゲームで数年数十年経って評価されるゲームは特にないと思いますが、ただエグザイルが仮装してる聖戦ケルベロスの画像のシュールさだけは後世必ず再評価される時代が来ると信じています。

タイムマシンがあったとして、Gravityを子会社にしたりDS版ラグナロクオンラインを出したりしていた平成20年頃の自分に「6年後のガンホー、利益100倍になってんぞ」と伝えたところで「お、そうか。ガンホーがんばってんな」とゲラゲラ笑われるのがオチでしょう。

まるで一発当てたお笑い芸人みたいな利益推移ですが、正直思ってたより息が長いですね。一本のゲームにしてはホントに息が長い。ユーザー層の移り変わりが気になるところではあります。パズドラ一本で、ピーク時のDeNAGREEの全社での利益を凌ぐ数字を上げているというだけで、これがホンモノのお化けコンテンツかと言った感。一応足元ではパズドラも前年比での落ち込みが見えてきてますし、この一発ネタのブームが終わった後どう食ってくかが芸人としての本領が問われるところなんでしょうが、財務にも反映されているとおり、貯めこまれた利益が現預金に積み重なっただけで特に使われていることもないので、当分遊んで暮らせそうな状態。これが自分のお財布なら今すぐ会社辞めてゲーム買い漁って暮らすところですが、ガンホーは上場企業なので利益を増やす方向に使わねばなりません。繰り返しになりますが、経営とはリソース配分の仕事です。カネの集め方、それからカネの使い方を知っているのが優秀な経営者です。銀行に預けていても雀の涙みたいな利回りにしかならないご時世なので、ここからはカネの集め方だけではなくカネの使い方について期待されるフェーズに入ってきます。いいスタジオあれば買っちゃうみたいな話も出てくるかもしれません。

ところで現『Let it Die』になってしまった元『リリィ・ベルガモ』が音沙汰ない感じですが、お元気にされてるのでしょうか。ぶっちゃけ原型留めてないので別ゲー扱いで良いと思いますけど、リリィさんはすげえ尖っててコアユーザー向けゲームのオーラプンプンさせてたんで返す返すも残念でなりません。

敵が強ければ強いほど~TAITOにぶつかり合うだけ~。テニスの王子様ミュージカルの運営会社として知られるマーベラステニミュも息の長いコンテンツになっていますけど、そのノウハウを活かして弱虫ペダルや薄桜鬼も舞台化して、いつの間にか収益の柱の一つとなっています。ニコ動の空耳動画で完全に黒歴史化と思いきや、多くの人の耳目に触れたという点で結果的に成長を遂げるという事例。一方その頃ドワンゴの経営陣はブラウザ三国志にアホほど課金していた。後にブラウザ三国志AQインタラクティブマーベラスに吸収されるのですからドワンゴマーベラスには縁遠からんものを感じます。

本業のゲームの方は平成24年頃までコンシュマー部門の赤字が続いていましたが、閃乱カグラの登場により回復基調に。25年度、26年度の稼ぎ頭になるのですが、直近決算ではコンシュマー部門が減収減益となり、変わって躍り出てきたのがオンライン部門。ほんとどこも似たような流れだなと思いつつ、その流れを決定的にしたのがコナミにおけるドラコレ、スクエニにおけるドラクエSLだとすると、マーベラスのそれは、剣と魔法のログレス。実はちょっと遊んだことがあるっちゃあるんですけど、昔のMMOみたいなゲーム性で個人的にはそこまでハマれませんでしたが、言ってみればこの場合、ゲーム性に価値があるんじゃなくて、PCでしか遊べなかったゲームが誰もがスマホで遊べるようになったことに価値があるのかなと思いました。

ところで「IT土方」と最初に表現した人が意識してか知らずですが、ソフトウェア製造業というのは建設業によく似ていて、作るものについての会計処理もほとんど同じです。デベロッパーは土建屋さんで、パブリッシャーが不動産販売会社みたいなものです。

そういう意味では一流の開発者というのは宮大工みたいなもので、技術の継承というのが非常に重要になってきます。宮大工の技術が継承されずに過去の寺社仏閣を復元できなくなるのは悲しいことですよね。つまり何が言いたいかというと、テクモマーベラス(というか厳密にはタムソフトですけど)のおっぱい技術が世界的に見て非常に高い水準にあるのならば、それは職人芸とでも呼ぶべき技術であり、この職人芸を失わせることは国家の文化的損失とも言うことができるということです。我が国は、本来技術で身を立てた技術立国だったはずではありませんか。スパロボに例えると、テクモをリアリティのあるエロさを追求したリアル系おっぱいとするならば、マーベラスは夢のあるエロさを追求したスーパー系おっぱいと言えるでしょう。

おっぱいに限らず、閃乱カグラは全体的なモデリングについて「二次元的かわいさ」が上手く落とし込まれていて、800年後の人類が「21世紀の人類はここまで2次元に近づいていた!」と驚くような歴史的遺物となるべき技術と思われますが、ぜひロストテクノロジーとならないよう、中世から今にまで宮大工の技術が伝えられているように技術力の継承を行っていただければと思います。

【総括】

  • この8期の流れを大きく括ると、平成22年頃までのWii・DS時代、平成23年頃からのソシャゲ時代、平成25年頃からのスマホネイティブゲー時代という感じでしょうか。コロプラミクシィはここには入れていませんが、大きなトレンドとしてはガンホーと同じセグメントで良いかと思います。こうしてみると、時代の寵児の寿命は3年といった感じなんですかねぇ。
  • サードパーティは、よりユーザーの多い、マーケットの大きいハードに移っていく傾向がありました。PCからVitaに戦場を移して劇的に利益を伸ばしたファルコム、コンシュマーからスマホに展開し利益体質を作ったマーベラス、その他バンナムスクエニ等も次々とスマホに戦場を移しています。スマホゲーム市場も、中小メーカーが活躍した黎明期と違い、グラフィックもリッチ化し開発コストも上がって海の色が赤く染まりつつあります。一方で、スマホに早くから活路を求めながら失速したケイブのような会社もあります。
  • コンシュマー市場ではソニーが躍進。とはいえ、国内販売数は大きく伸びておらず、旺盛な海外需要の取り込みに勝機がかかっている状況。海外志向のソフト割合が増えていくものと思われます。むしろ国内メーカーのコンシュマーって、それ一番遊びたいやつなんですけどね。
  • ところで小川一水の『天冥の標』って読みました? 読んでない? それはなんてラッキーなんだ。君は一から『天冥の標』を読めるチャンスを持っているのだから(アメリカ人みたいに両手を広げながら

    本作に「進化は無指向性であり不可避である」と語られるシーンがあります。無限の可能性と無数の失敗を経て、どこかしらに動き続けるのが進化です。この期間のゲーム業界の大きなビジネスモデルの変化として、古くはパンヤなんかのPCゲーム市場であったアイテム課金制がソシャゲとセットで浸透。深く狭く課金させ、最も効率的に売上をあげられるメカニズムが市場を席巻しています。ネタバレになるので細かくは言いませんが、『天冥の標』でいうアレと似たような話です。植物生態系。面白いのでみんな読もうね、『天冥の標』。市場経済では最も効率が良い方法こそが正しく、古いメカニズムを駆逐するという原理はあれど、それで良いのかという疑問は常にあります。ほかに答えはないのでしょうか。

  • できうるならばゲームの中の世界にくらい現実のカネをリンクさせるのは勘弁願いたいですし、それはゲームがゲームでなくなってしまうので、ゲーム作ってる人たちもそう考えていると思いますが、現実的に資本主義という枠組みの中でそれを変えるには「基本無料」に勝てる効率的なメカニズムが発明される必要があります。遊んでる姿を親に見られたくないバーチャルボーイとか、謎の配信システムのサテラビューとか、奇抜なコントローラーの64とか、取っ手を掴んで鈍器としても便利なゲームキューブとか、画面が2つあるDSとか、いい年した大人が棒振り回して遊ぶWiiを作ってきた任天堂あたり何か革命的な仕組みを思いついてくれるのではないかという期待はあるのですが、あるいは今我々が思いつきもしないようなえげつないシステムが生み出され、アイテム課金を駆逐する日が訪れるのかもしれません。これが、資本主義のサガか…。
  • たった8期でこれだけ状況は激変したわけですし、8年後は今から想像もできないような事態になっていることでしょう。だいたいの場合、今あるものが逆転ホームランを打つというより、今ないもの、無から生まれるものが勝ってますね。だからこそ未来はわからないのですが。ただわかるのは、ゲーセンがヤバいってことだけです。
  • ゲーセン事業だけを抜き出したデータについてはこれとは別個に作っていますが、ゲーセンの状況整理は誰もやってくれないので、そちらはしばらく続ける予定です。「ゲーセンと消費税」というのは、今見ておくべきテーマです。
そんなわけでこのまとめは今回で終わりです。最後だからと色々書いてたら2万字を超えてしまいました。ネットの長い文章は例外なくクソ。長い間お付き合いいただきありがとうございました。えんいー。