当たり判定ゼロ

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秒速2640ピクセルの弾速 / AuroraBlast2

子供の頃、「しばらく試験勉強に集中するから邪魔をしないでほしい」と母親にそっと告げて、静かな自室で優雅にアニメを鑑賞していたところ、ブラウン管の中でストレイト・クーガーという偉い人がこう言っていました。「お前に足りないもの!それは!情熱!思想!理念!頭脳!気品!優雅さ!勤勉さ!そして何よりも!速さが足りない!!」
なるほど。この教えは、情熱よりも理念より勤勉さよりも、速さこそ最もプライオリティが高く、我々が優先して解決すべき課題であることを示しているわけです。確か作家の奥田英朗あたりが「小学生のヒエラルキーはかけっこの速さで決められている」と言っていたくらいですし、私も未だに脳みそが小学生のまま進化していませんので足の速い奴に会うと生物としての格の違いを感じて、思わず倒れこんでお腹を見せたくなります。
速さこそが重要であるという主張は、主観的な思い込みではなく客観的な事実として、我々は至るところで目にすることができます。
たとえばAC版北斗の拳でジョインジョイントキィという表現が生まれるほど恐れられたトキ、彼がなぜゲーム内屈指の強さを誇ったのか。それは、彼が誰よりも速かったからです。ウイイレのマスターリーグの初期チームでなぜババンギダが多くのプレイヤーに愛されたのか。それは彼が誰よりも速かったからです。ほか、ナポレオンの大陸軍(グランダルメ)、イチロー東方緋想天初期ロットの射命丸など、速さこそが全能であると教えてくれる存在は枚挙にいとまがありません。
「速さこそがすべて」。 そのような考えに基づいて作られたのが、弾銃フィーバロンであり、ストライカーズ1945だったのです!と先ほど思いついたのは私の妄想ですが、これら過去の高速弾STGを上回る弾速の同人STG「AuroraBlast2」の話をしてみます。(製作者Blog
このゲームは人類史上最速のSTGの謳い文句を冠するだけあって、何とその弾幕速度は、「弾丸瞬間最高速度秒速2640ピクセル」にも達するのです!
秒速2640ピクセル…。なんという恐ろしい速度でしょうか。時速にすると9,504,000ピクセルにもなります。凄い!ど、どれくらいの距離かというと…。ええっと……このディスプレイの解像度が1920×1080だから……と、とにかく速いのです!サラマンダーより速いのです!なんということでしょう!こわい!余計なことまで思い出した!
同じ高速弾STGでも弾銃フィーバロンとの最大の違いは、プレイ中にフィィィバァ~!とかいう奇声が再生されない点と、ダンスエナジーが存在しない点で、(わりとボムは多めに手に入りますが)基本的にガチで避けねばなりません。しかもフィーバロンより速い弾を。また、敵の装甲は紙のように柔らかく、風船のようにパンパン弾けていくので、殺るか殺られるか感が強くて良いです。
こういう尖りに尖ったSTGとしての極北みたいなゲームがサラッと出てくるのが、個人製作である同人の良いところですね。どう考えてもウメハラの反射神経でも避けられねぇだろこれ、みたいな弾が目白押しで初見殺しのエレクトリカルパレードやで~状態。その代わり、あのHellsinker.を遥かに上回るペースでエクステンドが発生しますので、「良く食べて良く出す」という快食快便的な感じで健康的に死んだり生き返ったりできます。
実際のところ秒速2640ピクセルはあまりに速すぎるがゆえに、弾を目で追って回避するのは人類的に困難。「無理というのは途中でやめるから無理なんです」とか言ってたワタミ会長に「オラ、目視で避けてみろや」と迫ってみたいところです。昔、空想科学読本で「ビームライフルってビームなんだから見えたということはそれは当たっているということなんだよ!」みたいな指摘がありましたが、そんな感じ。見えたら死んでます。 実際のところ、あまりに速すぎるがゆえに、何が起こっているか理解するのは困難ですが、こういう時に役に立つのがSTGの文法です。STGの文法には「奇数弾はチョンよけ」「偶数弾は動かない」など色々ありますが、AuroraBlast2では、多くの敵が自機狙いの弾を撃ってきますので、敵の弾なんて見てないでとりあえず経験則に照らして8の字で避けていれば案外避けられたりします。自分でも何をどう避けているのかさっぱり理解してないけどなぜか当たらないみたいな状況でステージを進められます。 自分が弾を避けている気がしないので、まるで弾が自分を避けている気分になります。つまり神の気分になれます。やったね!
「派手な弾幕をなんとなく避けられて俺SUGEEE」を体験できる快感は、自機の当たり判定を小さくした弾幕STGが開拓したフロンティアでした。適当に動くことで光の速さの弾幕をヒュンヒュン避けれて俺SUGEEEできるAuroraBlast2は、アプローチの方向としては似てるのかもしれません。
ところで本作でわりと好きなのがこのネーミングセンスで「殺戮装置 ザスチュラス・エグジュームド」とかいうクソイカス名前がエッジが効いててクソカッコよすぎて漏らしそうです。しかも「殺戮装置」って二つ名があるのがいいですね。前々から思っていたのですが、我々の社会でも二つ名を採用するといいのではないでしょうか。そしたら「殺戮装置 鈴木一朗」とかいう人がいたら、「あぁこの人は殺戮装置をされてる方なんだな」ってひと目でわかってコミュニケーションがローコストになってお得です。