当たり判定ゼロ

シューティング成分を多めに配合したゲームテキストサイトです

大手ゲーセン運営会社の経営の立て直しについて

最近、ゲーセン行ってますか?

コンシュマー機の多機能化以降、ゲーセンはその独自性を大型筐体に求め、今やゲーセンに行くと、サイヤ人のポッドみたいな箱や洗濯機みたいな機械の展示場になっておりたいへんな未来感が溢れていてため息の出るような思いを体験することができます。

プレイヤーの皆様方も、戦国大戦を遊ばれている方々の手のひらを平行にスルスルと動かしているそのさま、何かの占いか、あるいはサバトの儀式なのか、というところでございますし、何もない空間で一人踊り狂っておられる方もいらっしゃいます。「音ゲー」や「シューティング」と呼ばれるジャンルを遊ばれている方は、絶えず首をかしげ続けることによって、首の筋肉の鍛錬を続けておられます。

このように、素晴らしい機械、素晴らしい人たちが貴方様をお待ち申し上げておりますので、ゲームセンターのお近くにお立ち寄りの際は、覗くような気持ちで結構ですので、軽く足を運んでいただければ幸甚にございます。

さて、今年もゲーセンを経営している会社の決算資料からセグメント別に数字を抽出し、ゲーセン業界の概ねの数字を俯瞰できる資料を作ってみました。上場企業の数字がベースとなりますので、必然的に大手ゲーセンの業況の資料となります。ですから、いわゆる近所のゲーセン的な中小・零細企業のゲーセン経営事情はまた異なったものとなってこようと思いますので、どうぞご理解を。

抽出対象としたのは、バンナムセガサミーイオンファンタジーラウンドワンアドアーズカプコン、ウェアハウス、スクエニ(旧タイトー)の8社。ですが、スクエニは開発と施設運営部門が合算されてアミューズメント事業部門として公表されており、ゲーセン経営単体での数字が明確でないため、合算値からは外しています。
記事の最後にそれぞれ個社の数字も置いておくので、参考値としてそちらで参照してください。

では、まずスクエニ除く7社の売上合算値の推移です。

05df91cf.png

ゲーセンからの客離れを受け、ここ数年店舗数の縮小・売上高の減少が続いていましたが、2012年度決算からはようやくそれが踊り場局面を迎えつつあることが伺えます。製造業で言えば、需要の低下に対応するため商品の生産量を落としているようなもんですが、ゲーセン含むサービス・小売業は建物を借家で確保し、店員をバイトで調達しているケースが多いので、元々スクラップアンドビルドと親和性が高く、撤退戦もやりやすいのですね。店舗ごとの採算は当然集計しますし、閉鎖するべき店舗が可視化されやすいのが特徴です。

ドラッグストアやコンビニなんかも、店舗を出してはたたみ、出してはたたみしているのをよく見かけますが、「撤退が容易」という商売上の特質がそうさせています。余談ですが、製造業だと工場及び生産設備を自前で所有するのが主流なので、投資に失敗するとエライことになります。生産設備は、汎用的なものが少なく機械自体も売却が難しいため、製造業の設備投資はより慎重さを求められます。

次に利益の推移です。

987928a7.png

すべての会社が利益改善傾向にあります。特にセガサミーで顕著な数字が現れていますが、不採算店舗の見直しにより、売上を落としつつも利益は改善している形です。ラウンドワン、ウェアハウス、スクエニアミューズメント施設単体での営業利益を公開していないので、省いています。しかしながら、3社とも全体の利益は改善傾向にあるため、ゲーセン事業だけ著しく悪いということはないと思われます。特にウェアハウスなんかは、全体の利益とゲーセンの利益が相当接近した数字になるでしょうし。

ここまでで全体としての売上下落・利益改善傾向が見て取れましたが、次は、社別の最近の動向を見るために、前期との売上高及び営業利益の変動についてまとめています。

f51706db.png

売上高減・利益増の傾向については、アドアーズがもっとも特徴的ですね。アドアーズはIRでの事業説明もカプコンに匹敵するくらいしっかりしており、劇的な事業改革でも恐れずに実施していく姿勢を対外的にアピールしています。ゲーム業界では、カプコンと並ぶくらいIRを真面目にやっている会社です。

ついでに店舗の増減と利益率の増減についても整理してみました。

0ef3ff3d.png

こちらもアドアーズが特徴的ですが、不採算店舗の削減により営業利益率の改善が達成されています。
全体的に営業利益率が改善されていますね。営業利益は、「売上高×営業利益率」で計算されますので、これら企業の業績改善は、売上の下落をカバーするくらいの利益率の改善によって達成されたことがわかります。

ちなみに、イオンファンタジーのみ店舗数が増加していますが、こちらは国内のものではなく中国・マレーシアでの出店による増加です。イオンファンタジーは、イオンの中にある子供向けゲーセンを運営している会社なので、いわゆる大きなお友だちが来るような一般的なゲーセンとは異なります。

全体的には、ゲーセン産業からの客離れに対して店舗の取捨選択を適切に行い、売上を落としながらも利益を回復させるという理想的な撤退戦略を取れている業界だと思いますね。もちろん当初述べたとおり、大手に限る話ですが。中小の難しいところは、撤退戦略を簡単に採れない点ですね。不採算だとわかっていても、そこに踏みとどまって戦わなければならないのが中小の辛いところです。

というわけで、後は個社の数字を置いておきます。

2012-08-26_180135.png

2012-08-26_180118.png

2012-08-26_175947.png

2012-08-26_180007.png

2012-08-26_180022.png

2012-08-26_180035.png

2012-08-26_175933.png

2012-08-26_180057.png

ラウンドワンは複合アミューズメント施設なので切り分けが難しいというのはわかりますし、ウェアハウスはどうせ親会社ゲオですし市場に大してそれほど説明する気がないというのもわかりますが、スクエニはもうちょい頑張りましょう。

少なくとも開発と施設運営は分けておかないと、いざ業況が悪くなった際どっちが原因なのかわからないですし、実際分けているけど公開していないのならIRにやる気がなさすぎます。社長はせっかく証券会社ご出身でいらっしゃるのだから、社員の整理をする前に情報の整理をしてくれると私が喜ぶのになぁと思うのでした。