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一口馬主のすゝめ

りくぜんです。馬主やってます。
いや、馬主って言っても一口馬主なんですけどね。だいたいJRAの個人馬主資格ってこれですよこれ!
 
・今後も継続的に得られる見込みのある所得金額が、過去2か年いずれも1,700万円以上あること
・継続的に保有する資産の額が7,500万円以上あること
 
こんな条件満たしてる時点で人生クリアじゃないですか。
一方、馬主と言えば企業のオーナーやってるような大金持ちだけしかいないイメージが持たれがちですが、一般人が寄せ集まって出資するクラブ馬主というのもあります。大富豪にならなくとも、クラブに一口出資するだけで自分の愛馬にターフを走らせられるわけですが、実際に一口馬主やってみたところ敷居は案外高くないなと思ったので簡単に解説書いておきます。
 
今の競馬界はクラブ馬主が席巻している状況になっています。
2016年以降、馬主リーディングのTOP4は、クラブ馬主である社台サラブレッドクラブ、サンデーサラブレッドクラブ、シルクホースクラブ、キャロットレーシングの4強が固定で独占し続けており、足元の2021年でもその状況に変動はありません。なお、この4社はいずれも日本最大の競走馬生産牧場の社台グループに属します。
 
日本競馬史上最多GⅠ勝利馬アーモンドアイ(所属:シルク)も、三冠馬オルフェーヴル(所属:サンデーTC)も、先般大阪杯を勝利したレイパパレ(所属:キャロット)もみんなみんなクラブ法人の所有馬。競走馬のオーナーは金持ちしかなれないものが、いつの間にか一般人が楽しむものになりました。
ウマ娘に最近の有名馬が出てこないのは、クラブ馬主がターフを席巻し続けている日本近代競馬の現状の裏返しとも言えます。クラブ馬主、権利関係ややこしいらしいんですよね。一方で権利関係のわかりやすい個人オーナーの有名馬は少なくなりつつあり、競馬という文化の移ろいを感じさせます。
要は、社台グループが作った馬に多くの人が投資して走らせるような形ができあがっているということですね(社台は売った時点で利益が確定するので収得賞金で業績が左右されないようリスクヘッジされる)。
 
で、そのクラブ馬主ってどんなものがあるのよってところなんですが、まとめるとこんな感じ。
 

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あら、競走馬のわりに案外お安い。
募集口は40~500口程度となっており、要は500口のクラブであれば3千万円の馬であっても6万円払えば出資できます。
出資価格はそのとき限りのイニシャルコストであり、あとはクラブ法人の月額会費と馬の月額維持費(500口の馬であれば千円/月程度)が必要となる費用です。
例えば500口のクラブ馬主で、3千万円の馬に1頭だけ出資しようと思えば、出資時に6万円払って月額で会費と維持費を5千円/月程度払うイメージ。
 
出資金は馬によって大きく異なります。ディープインパクト産駒の超良血であれば1億円程度はしますので、500口で割っても20万円。
一方で、実績の少ない種牡馬産駒であれば2千万円以下の馬もザラにありますので、仮に2千万円とするならば500口で割って4万円。
 
そんな感じで、ちょっと働いているような人であれば、値段的には普通に手が届く水準なんですよね。PS5買うより馬に出資する方が安いなんてこともある。特に一口馬主の特徴として「時間がかからない」というところがあるので、「カネはあるけど時間がない」となりがちな人にはドンピシャの趣味だと思います。
 
趣味には「お金と時間」の二律背反問題が付き纏うと思うんですけど、一般的に学生時代は「お金:かからない 時間:必要」な趣味に向いていて社会人になると持てる資源の関係から「お金:必要 時間:かからない」の趣味にシフトせざるを得ません。これは仕方ない。人生はそれがどのようなものであれ配られたカードで勝負するしか方法がないのだ。わりとそれを解決するのが一口馬主
 
「報酬へのアプローチ」問題ってありまして、報酬へは本来ならば自分の足で歩いていって手にするのが正しい姿。しかし、それが叶わないならば、金を払ってでも報酬の方から歩いてきてもらうしかないのだ!言ってみれば人生のスケジュール表にレースのイベントマスを埋め込むようなもので、自動的にイベントが発生するので、イベントを発生させる工数を使う必要がないんですよね。時間がないと本当にこれがありがたい。
 
自分が出資した馬がJRAのレース走ってるのをテレビで見るの、実際にやってみてわかりましたけど、応援してる馬がGⅠ走ってるのと変わらんかそれ以上の楽しみを新馬戦や未勝利戦ですら味わうことができるんですよね。仔馬の頃に出資して、成長を見守ってきた「きみの愛馬が」マジで競馬場で走っとるんですよ…。
 
仔馬と書きましたが、出資の募集があるのは一般的に1歳の6月~9月頃なので、出資してから出走するまでに1年以上あるんですよね。なので、かなり息の長い趣味になります。その間、定期的に会報やメールで愛馬の成長やトレーニングの様子、怪我・病気にかかったときの状態などが送られてくるので、一喜一憂しながら1年を待つことになります。ちなみに私の場合、後述のとおり色々あって出資してから初出走まで1年半くらいかかりましたが…。
 

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で、一口馬主は「出資」ですので、愛馬がレースに出て賞金を稼いでくれれば、馬主の懐に入ってきます(消費税取られるんだ…という驚き)。

馬主は賞金額の80%を得ることができますが、クラブ馬主の場合は運営手数料も多少取られますので、一口馬主への分配対象は賞金額の70%弱ですね。
例えば500口の馬が生涯収得賞金が1億円だったとすると、7千万円を500口で割って、1口出資の場合は総額14万円回収と、そういうイメージです。実際には1億円獲得する馬に巡り会える確率は低いので、基本的には儲からないと思ったほうがいいです。
 
ただ、一口馬主の場合、愛馬がレースに出ること自体が楽しいので、出資金も月額維持費も掛け捨てくらいのイメージで持っているので、レースに2着で入って数千円稼いできてくれるだけでマジでメチャメチャ嬉しくなるからヤバいですよ。「よく頑張った!」って感情が心の底から出てくる。人はおそらく淡々と人生を生きていくことは不可能であり、生活の中で多少こういった彩りを得るために、そういった投資を行っていくことも必要なのだと思いますね。
 

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一方で、実際に儲かる話もあるにはあるわけで、参考までに夢のある話をしますと、サンデーTCのジェンティルドンナは、牝馬三冠や2012年と2013年のジャパンカップを連覇した名馬ですが、総獲得賞金が17億2602万円となっていて、5077%もの投資回収率を計上しています(出典:一口馬主DB)。
ジェンティルドンナは募集口数が40口だったので、1口あたり4315万円の配当となっています。まかり間違ってジェンティルドンナに出資してたら、それだけで家が1軒建ってしまうんですよね。ファストタテヤマの馬券を買って家をタテヤマ!とか言ってる場合じゃなかったでほんま。
 
 
ここから自分の出資体験記なんですが、初めて一口馬主で出資したのは2019年の夏で、選んだのはシルクホースクラブでした。
理由としては、500口ということで1口価格は割安ながら、勝ち上がり率が高く安定した馬主成績を残してたからです。
 

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6頭応募して当選したのが1頭。ちなみに、特にシルクやキャロットあたりの一口馬主は人気が高く、出資もかなり競争が激しくて、抽選に勝ち抜かねば金を出す権利すら与えられません。
 
ラブリーデイの初年度産駒ということで実績未知数なんですが、馬券買った後と同じで、何もかもがよく見えて仕方がない。偶然選んだ(当選した)この馬は、歴史に残る名馬なのではないか。1分の1で大当たりを引いたのではないか。2年後の2021年の日本ダービーはこの馬が取るのではないかホンマ申し訳ないでぇなど勝利の確信が頭をよぎる…! 
 

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2019年9月のメール。鞍!鞍がついた!一口馬主、こういったメールを定期的に送ってくれるのがいいんですよね。1年後のデビューに向けて大きく育ってほしい。そして2年後の日本ダービーをとってほしい。

2020年1月。公募の結果、名前は「ベルンハルト」と名付けられました。そういや応募するの忘れてた。一口馬主のいいところとして、馬名が公募ってのがあって、アーモンドアイとかオルフェーヴルとか、命名した人は気分良かったんだろうなと思います。その後も順調にトレーニングを続けていって、年が明けて坂路調教も入ってきた。ハロン15秒とタイムもそこそこで順調順調。
 
3月。世間は新型コロナウイルスで大騒ぎとなっており、株価は暴落。そんな中でも順調に調教が進められています。これはデビュー早そうな気がする。日本ダービーの前に朝日杯獲ってしまうか??
 

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暗雲漂うのは5月から。左脚をぶつけたらしいけど、「患部を縫合」とあり、もしかして結構重い…?
早く直してトレーニング再開できるといいけどな、程度の感覚でこのときは思っていました。
 
6月には右脚を故障。同期はパラパラとデビューが始まっており、シルクの会報でも初勝利!なんて馬が出てきた。
この時期にトレーニングできないのは後々の成長を考えてもつらい。というか怪我だらけなんだけど無事デビューできるんですかね?
 

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7月にはノドの病気まで発覚。呪われ過ぎやないですか。

その後、ノドは2回手術し、何とかトレーニングできる状態まで戻るも、ダービーどころか走る走らないレベルの問題になってきた…。
競走馬って結構ノドに病気を持ちやすい傾向があって、呼吸器の問題だけあってノドは競争能力に強く影響し、ノド関係の病気を発症した馬で大成する馬はほとんどいないんですよね…。
 
それから術後のトレーニングを何とかこなし、半年後の2021年1月24日。
ようやく小倉競馬場での新馬戦に出走することになりました。出資してから、かれこれ1年半経っていました。2回のノド手術から半年、ここまで辿り着いただけで感無量ですよ。多くは望まない。無事に一周回って戻ってきてほしい。そして贅沢は言わないから1着の賞金咥えて帰ってきてほしい。
 

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結果2着!
スタートは悪かったですが、道中で後方からまくるような形で上がっていき、直線で外から伸びるも僅かに届かずというレースぶりで、騎乗した団野騎手はよく乗ってくれたと思います。正直、調教のタイムがクソみたいに悪い馬なのでボロ負けも覚悟してたんですよね。
ところで前売の時点ではベルンハルトは1番人気だったんですけど、こうやって馬主サイドからの情報を持ってると「これで1番人気は飛ぶでしょ」ってわかるのは勉強になりました。
 
ちなみに次に出走した未勝利戦では4着だったんですが、その後また脚を悪くしちゃって4月現在放牧中です。
3歳未勝利は8月で打ち切りなので、勝ち上がってJRAに残るにはあと4ヶ月しかないというヤバい状態なのですが、近況メール見てると体重がブクブク増加してお過ごしになられているようなのがめっちゃ心配。お前あと4ヶ月しかないんやぞ…。
 
次の未勝利戦がまさに勝負の一線になると思うのですが、こんな感じなのを知り合いに話したら「貧しい時代のダビスタみたいだな」と言われ、まさにそのとおりだなと思いました。
信長の野望ダビスタも貧しい時代が一番面白いんですけど、一口馬主はまさに貧乏時代のダビスタがリアルで遊べる感じです。
 
日本で年間に生産される競走馬は年間7000頭以上と言われます。
一方、年間に開催されるGⅠの数はたった24。GⅠをすべて違う馬が勝つという前提で考えても、GⅠを勝てる確率は単純計算で0.3%しかない狭き門。そもそも未勝利戦で1勝を挙げられる確率ですら約3割強という厳しい世界なんですよね。
 
一口馬主をやるとGⅠに出走できるレベルの馬ですら超スーパースターに見えてきますし、ましてやクラシックを勝つような馬とか天上馬。だいたい18頭とか出てくるレースを連戦して殆ど負けないって、考えてみれば異常ですよ。
競馬界というのは本当に裾野が広いんだなという、天を見上げたモブの気持ちを肌感覚で味わわせてくれます。
 
 
ところで、最初の方で権利関係のややこしいクラブ馬はウマ娘に出てない的な話をしたの覚えてます?
実は例外として一頭だけ、一口出資ができた馬でウマ娘に出てる馬がいるんですよね。このウマです。
   

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タイキシャトル。生涯戦績13戦11勝。
一口馬主の話をしてきたレベルからするともはや神々の領域みたいな戦績ですね。
さっき掲載したクラブ馬主まとめの大樹レーシングクラブに所属します。 
 

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タイキシャトルは、負けた2戦も3着以内には入っており、いずれも1400M以下の短いレースで、マイル戦(1600M)に関して言えば、海外GⅠ含めて7戦7勝と生涯一度も負けることはありませんでした。今現在でも「日本競馬史上最強マイラー」と言えばタイキシャトルを挙げる人は多いです(netkeiba.com主催の「競馬ファンが選ぶ平成最強マイラーランキング」1位)。
 
デビューこそ3歳4月(年齢表記は現在基準)と遅かったものの、1つの2着を挟んで、3歳冬にはマイルCSスプリンターズSを勝つなど、一瞬で日本短距離界のトップに躍り出ました。あまりに規格外の能力に陣営は海外挑戦を判断。翌年の安田記念でも香港馬オリエンタルエクスプレスをぶっちぎって1着を取った際には、三宅アナに「もう日本に敵はなし!」と叫ばれ、日本競馬初の欧州GⅠ勝利を期待されていました。
 
そして迎えたフランス遠征。フランスのマイルGⅠの最高峰ジャックルマロワ賞に挑戦することとなりますが、その前週に同じくフランスのGⅠモーリスドギース賞に挑戦して日本馬初の欧州GⅠ勝利を手にしたシーキングザパールの森調教師が「来週のタイキシャトルはもっと強いですよ」と発言したことで、「日本からヤベー馬が来るらしい」と評判になり、なんとタイキシャトル単勝は1.3倍。海外レース初出走の馬の評価ではないレベルになってしまいます。
 
しかしやはりタイキシャトルは強かった。ジャックルマロワ賞は直線だけのレースなのですが、道中前目につけると後半先頭に立ちそのまま押し切ってゴール。フランスでも前評判どおりの強さを見せ帰国したタイキシャトルは、続くマイルCSでも2着馬を5馬身ぶっちぎっての1着。
引退レースとなったスプリンターズSでは体重増が影響し3着に敗れて生涯唯一連対を外すも、海外GⅠ制覇含めた圧巻の成績で短距離馬としては国内初の年度代表馬に選ばれます。
 
今でもそうですが、競馬界では2400mを中心としたクラシックディスタンスを勝てる馬が最も評価が高く、短距離馬が年度代表馬に選ばれるというのはほぼないんですよね。言ってみれば、前例を覆すほどタイキシャトルが抜きん出た成績を残したという裏返しでもあります。
ちなみに同年のフランスの代表馬顕彰での最優秀古馬にもタイキシャトルは選ばれています。海外で顕彰馬ってえらいことですよ。
 
なお、一口馬主に話を戻すとタイキシャトルの募集価格は5千万円でした。獲得賞金が6億1549万円なので、回収率は1231%ということになります。これまた馬主孝行な馬ですね。
それでも馬主としては、出資したお金が10倍にもなって返ってきたことよりも、ジャックルマロワ賞という権威ある海外GⅠを勝利し、日本の短距離馬として史上初の年度代表馬になった馬に関与し、レースの結果に一喜一憂できた思い出のほうが遥かに価値を感じたのではないですかね。
 
思い入れの数が多いほど、人生は楽しくなる。
「きみの愛馬が」JRAのターフを走る一口馬主、思ったより面白かったのでお伝えしておきます。まだ1勝もしてないんですが…。
 

「競馬ゲー」としてのウマ娘の良さについて語りたい

ウ、ウマ娘やりすぎて人とウマの区別がつかなくなってきた…
こんにちは。育成がB+で頭打ちになってきたので、今日は「競馬ゲー」として見たウマ娘の話をしたいと思います。
 
育成のことばかり言われますけど、ウマ娘は競馬ゲーという切り口で見ても良くできています。プロスピなんかの野球ゲームがリアルに近いことをウリにするように、競馬ゲーも長らくリアルに近づけることを追求してきましたが、ウマ娘は美少女から走るから関係ない? いやいや、そんなことない。
 
レース演出を見ても競馬ゲーとしてリアルを十分に追求した中で、ゲームとしての演出との兼ね合いがちょうどいい塩梅でできており、競馬ゲーオタクとしても大満足です。野球ゲーを例に言うなら、ウイポプロスピならば、ウマ娘パワプロと表現すると近いかも。育成がパワプロのサクセスに似ているということでなく、「ガワはポップに差し替えているけど、見た目に騙されるなかれ。中身はちゃんとしてるよ」という点でソックリ。
 

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ウマ娘のレース画面で間違いなく意識されているのは、テレビ中継の競馬画面。
府中競馬場の大欅の見せ方とか、中山をはじめとした右回りのコースの第4コーナーで外側をまくって上がっていく馬の見せ方とか、競馬を見てきた人間が数限りなく見てきたであろう、これぞ「競馬中継」というカット。
 
サイレンススズカの脚が止まった大欅の向こう側、ディープインパクト有馬記念で上がってきた第4コーナー、ウマ娘の画面からでも全部重ねて見ることができるようになっている。美少女を見せに来ているだけではなく、プレイヤーに「競馬」を見せに来ているのが伝わってきます。京都競馬場のコーナーの坂もいいぞ。
あと地味に言及しておきたいのが季節。春の阪神競馬場とかキッチリ桜が咲いてて綺麗。天気や季節は基本かもしれないけど大事。
 
それにスピード感。ダビスタウイポなんかの競馬ゲームと遜色ないスピードで、むしろ人が走っているだけにそれらより速くすら見える。人の競争ではなく、ウマの競争を描きたいのだというのがひしひしと伝わってくる。
スピード感からすると、「まず競馬ゲーを作った後に、美少女のガワをかぶせた」ような感覚があります。
 
これに加えて、府中の直線をゴールから見て坂を感じさせたり、カットインを入れたりとゲームならではの演出ができるのが強い。特にカットインは、リアル路線の別ゲームではなし得ない(むしろ不自然になる)表現なので、パワプロ路線のウマ娘だからこそ取れる固有の強みですね。
 

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「中団で溜める競馬を覚えさせようとした」とか「覚醒前は不振に陥っていた」とかの史実サイレンススズカのエピソードをシナリオに織り込んでいたり、「宝塚の主役はメジロライアンです!」とかの史実実況を織り込んでくるウマ娘
 
ローディング中の豆知識も小ネタだらけで、例えば「エアシャカールは右クリックのときだけ体が右に傾くクセがある」も、エアシャカールは右への斜行癖があって日本ダービーでもアグネスフライトの方にヨレて武豊が河内に謝罪したエピソードがあったりと、どれだけ競馬見てるんだってレベルで史実ネタが無限に出てくる。
 
それで、この間メジロマックイーン引いて初めて知ったんですけど「メジロでもマックイーンの方だ!」という実況がレース後じゃなくてレース中に流れてくるんですね。これ他にもあるんですかね。
将来的にでもいいので、宝塚記念スペシャルウィークグラスワンダーが抜け出したら「もう言葉はいらないのか!」と言われるとか、トップガンで追い込みしたら「おぉ!外から何か一頭突っ込んでくる!トップガン来たー!」と言われるとかレース中の演出で実装してくれたら熱すぎて泣いちゃう。
 
それで、元ネタ繋がりでいうとウマの走法まで再現されてる事に気が付きました。
 

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レース画面をよく見ると、ゴールドシップの歩幅は他のウマ娘と比べると大きくなっています。これは史実に基づくものです。
 
馬も生き物ですから走り方や歩幅には個性があって、歩幅の広い走り方のことを「ストライド走法」、歩幅の狭い走り方のことを「ピッチ走法」といいます。
 
ゴールドシップは典型的なストライド走法の馬で、歩幅が広いがゆえにゲート直後の加速が悪いという欠点がありました。一方で、ストライド走法のメリットとして歩数が少ないので長く脚が使えるという点があり、ゴールドシップのレース中盤からの大まくりはこのストライド走法のメリットを活かしたものと、祖父メジロマックイーン譲りのスタミナによるものと言われています。
 
演出としての走りは同じでステータスで差をつけるだけで終わることもできたんだろうけど、こんな走法レベルの違いまでちゃんとゲームに織り込んでくるのはすごい。ゴールドシップの走り方みたとき「んっ?」とは思ったけど、よく見たらやっぱりストライド走法だった。
他のストライド走法の馬としてはマンハッタンカフェもそうなんですが、ウマ娘でもマンハッタンカフェの歩幅は大きくなっているので、ストライド走法設定になってるんじゃないかと思います。
 
反対に、脚の回転数が速く歩幅が狭いピッチ走法の代表的な馬としてはグラスワンダーが挙げられます。ピッチ走法は速いので少し分かりづらいですが、ウマ娘グラスワンダーも脚の回転が速くてピッチ走法が再現されているように見えます。
ピッチ走法は回転数が速いことから、加速の速さとコーナリングの良さが強み。グラスワンダースペシャルウィーク宝塚記念有馬記念の二度対戦していますが、両方とも直線が短く、カーブへの対応が重要なコースなのでピッチ走法のグラスワンダーに有利に働いたとも言われています。
 
美少女が走るゲームなんだからここまで作らなくとも誰も文句言わないだろうに、ウマ娘作った人たちほんと競馬好き過ぎる…!
 
 

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あとコースの表現についても話しておきたいです。
競馬場のコースは多くの場合スタート直後に直線があり、ある程度位置取りができる作りになってるのですが、東京2000Mはスタート直後からカーブが始まり、外枠の馬が超絶不利な構造になっている鬼畜コース。2003年に行われた府中競馬場改修工事前の時代はもっとひどく、外枠の13番を引いたメジロマックイーンが無理に内側に切り込み、内側の馬の進路を邪魔したことでブッチギリの1着入選だったはずが審議で18着への降格を食らったエピソードはこのコース構造によるものです(若かりし頃の武豊がやらかした)。
  

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東京2000Mの天皇賞・秋はそんな特殊なコースなんですが、ウマ娘はその外枠不利を後ろからカメラに写すことでちゃんと表現してる。すごい。一般的な競馬ゲームだと横からの映像なので、有利不利があるのかどうかもよくわからんし、東京2000Mのコースの特殊性も伝わってこないんですよね。
このカメラからは、プレイヤーに対してそういう競馬場の性質を伝えたいという意図がある。これを競馬愛と言わずして何と言いますか!
 
一方で、競馬は内枠だから必ずしも有利かというとそうでもなく、差し・追い込み馬は外枠の方が良いこともあったりします。多頭数のレースともなると、道中、内側で包まれてしまい、直線でバラけるまで動きが取れないなんてことになりかねません。なので、力の抜けた有力馬であれば、仕掛けどころで外からまくっていけるような位置にいれるほうが案外良かったりするものです(それでも東京2000Mはいきなり大回りで距離損させられるので外枠は問答無用で辛い)
 
枠というものはまさに運の賜物なんですが、「運もまた競馬」というところをゲーム性に織り込んできてるの"わかってる"感あるぞ……! そうなんだ、そこも含めて競馬なんだ…!
 

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それぞれのウマ娘は出走実績等に応じて「称号」を得ることができますが、ここの条件置きにもこだわりがありますよね。
 
サイレンススズカのように「重賞6連勝かつその中に宝塚記念を含み、宝塚記念ではスタート200M以降からゴールまで1度も先頭を譲らない」みたいな史実準拠(厳密に言うと史実のスズカは重賞含む6連勝であって、重賞6連勝ではないが)なものもあれば、キングヘイローのように「スペシャルウィークセイウンスカイグラスワンダーエルコンドルパサーにそれぞれ3回以上勝利」という史上最強と言われた「98世代」を意識したものもあったりする。
 
史実を前提とした称号を獲得するシステムは、競馬ゲームでは自分が知ってる限りウイポで導入されたものだと思いますが、それに留まることなく、キングヘイローのように史実とシナリオをいい感じにミックスさせた解釈の称号はエモさある。
エグい同世代に恵まれてしまったキングヘイローが手にしたかも知れないもう一つの未来。中長距離路線突っ走って叶えてあげましょうよ。
 

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ゲームシステムと関係ない部分でウイニングライブあるじゃないですか。あれ自分最初は要らない派だったんですよね。
「こっちは競馬ゲーやっとるのになんでボーっとライブ映像みなあかんねん」と思ってたときが私にもありました。
 
メチャメチャいいなこれ!
3Dビジュアルのレベル高すぎて人類の表現能力もここまで来たかって感嘆もあるんですけど、それとは別に歌うウマ娘の声が変わったりするじゃないですか。
驚いたこだわりとして「史実でそのレースを勝ったウマ娘だけボイスが変わる」ってのがあるんですよね。
 
例えば「Winning the soul」は牡馬クラシックを勝ったときのウイニングライブですが、皐月賞を勝ったアグネスタキオンとか、ダービー勝ったトウカイテイオーで再生すると、ちゃんとそのキャラが歌ったライブに変わる。さすがに牡馬クラシック勝ったウマ娘全員にボイス変更があるってわけじゃなくて、ウオッカとかは変わらないんですけど、少なくとも有資格者制度にはなってる。菊花賞しか勝ってないマチカネフクキタルはしっかり「Winning the soul」のボイス変更対象者になっており、ここしかないというところにちゃんと入れている。この辺のセレクトに手を抜かないの良すぎますよ。
ちなみにナイスネイチャが「本能スピード」のボイスチェンジ対象になっているのは、ナイスネイチャ自身はGⅠ勝ったことないけど、当時GⅡだった高松宮杯(2000M)を勝っており、それが現在高松宮記念(1200M)としてGⅠに衣替えされたことに由来するのだと思います。
 
あとURAファイナルクリア後のうまぴょい伝説は絶対に再生してる。「終わった~」という感があり、メチャメチャ良い。
あの曲エンディング感というか大団円感ありますよね。
 

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「競争が終わったらなぜかライブを始める」という若干意味不明な点についても、史実でも同じことをしていてちゃんと元ネタもあり安心。
 
 

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いいことばかり書いてますが、敢えて悪いことも書くならば(賢さを上げれば改善するにしても)ちょっと直線が詰まりすぎる。
 
直線で他馬の後ろに張り付いたまま馬群に沈むいわゆる「ケツアタック」は競馬ゲーの宿命みたいなもの。ウイポでもダビスタでも歴史上この問題は常にあって、先般久々に発売したダビスタSwitchでも、発売直後はあまりに直線が詰まるので差し・追い込み脚質がほぼ死んでて、差し脚質のアーモンドアイがいつもケツアタックして馬群に沈んでいる駄馬になるという悲しい事件もありました。
 
ちなみにダビスタSwitchはケツアタック問題をどう解消したかというと、アップデートにより、直線に入ったとき広く外にコース取りするようになったので、後ろの馬がちゃんと間を割れるようになり、全てではありませんが緩和されました。
ウマ娘でも本来後ろからの馬が届きやすい長い府中の直線で、馬がバラけなくて後ろの馬がケツアタックして沈むみたいな光景はよく見ます。賢さ上げれば改善しますが、それでも詰まるときは詰まる。もう少し直線で馬群が横に広がれば「差し追い込みは詰まるから脚質はとりあえず逃げ」みたいなのはなくなるような気もします。その辺もまだリリースされたばかりなので、ウマ娘スタッフの競馬愛を鑑みれば、今後絶対良くなりそうな期待があります
 
ウマ娘、育成ゲーとして面白いのは、適度にランダム性を折り込みつつプレイヤーに「失敗」させてくれる点と、マスクデータが多いので試行錯誤が機能する点だと思うのですが、それだけではなく「競馬ゲー」として見ても競馬に対する愛に溢れている。コーエージーワンジョッキーの新作を出してくれないし、競馬ゲーのリリース自体が少なくなる中、これだけ競馬愛に満ちたゲームを出してくれたのは感謝しかない。
 
 
ついでなので今後の話をすると、シナリオの実装を期待したいウマ娘タマモクロスですね。ウマ娘の何がいいってこれから実装できるキャラが山ほど残ってる点ですよ。まだ脚を残している。
 
タマモクロスは「白い稲妻」と呼ばれた芦毛馬で、エピソードが波乱万丈すぎるのでぜひ紹介させてほしいです。
  

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タマモクロス1984年に誕生。父親は種付け料わずか10万円のシービークロス

生産した錦野牧場は経営難の貧乏牧場で、生産者である錦野氏は幼駒のときからタマモクロスの才能を見込むも、資金難のため泣く泣く売却。しかし、牝馬のように体が小さく華奢であったタマモクロスにはわずか500万円の値段しかつかなかった。白い仔馬タマモクロスの才能を信じていたのは錦野氏ただ一人だった。
それでも、売却したとはいえ勝ってさえくれれば生産者賞の賞金が入ってくる。そう信じて錦野氏はタマモクロスの母であるグリーンシャトーも売却。自分と牧場の命運をタマモクロスに賭けた。
 
タマモクロスは、体質が虚弱で1987年3月にデビューするも、新馬戦は1着から11馬身離された7着の大差負け。その後「ダートのほうがいいかもしれない」という判断からダートを中心に使われるも、デビュー後8戦で未勝利戦を1勝したのみの、「底辺に近い条件馬」の一頭でしかなかった。途中で落馬事故に巻き込まれて競走中止になる不運にも見舞われている。
 
錦野牧場はタマモクロスを手放した後も経営状態は改善せず、頼みのタマモクロスも活躍しなかったことで、万策尽きて倒産。タマモクロスを産んだ母のグリーンシャトーも、転売を繰り返される中で、牧場の倒産と同じ1987年に死亡した。
 
しかし、牧場の倒産と母の死を馬が知るはずはないだろうが、ここからタマモクロスはまるで別の馬のように変貌する。
運命が変わったのは9戦目の「400万以下」の条件戦。ダートで結果が出なかったため、半ば諦め気味に再び登録された芝のレースだったが、突如ここで2着を7馬身千切る快勝。その次走では更に差を広げて8馬身差の圧勝。
 
そこから1987年12月の鳴尾記念を皮切りに重賞に挑戦して3連勝。更に1988年は「天皇賞・春」で初のGⅠ勝利。続く「宝塚記念」で当時最強の中距離馬ニッポーテイオーを下してGⅠ2連勝。
 
そしてタマモクロスのハイライトたる天皇賞・秋がやってくる。
1つ年下の世代に怪物と言われる馬が現れたのだ。その名はオグリキャップ笠松から中央に移籍して以降6戦6勝と無敗街道を歩んでおり、観客はタマモクロスではなく未だ底知れないオグリキャップの方を一番人気に選んだ。
芦毛対決」と呼ばれたこのレースでは、タマモクロスがいつもの後方待機ではなく、先行策を選択。オグリキャップが中団からタマモクロスを見ながら進める形となった。そして府中の長い直線に入るが、タマモクロスは追い出さない。追い出さずに手なりで先頭に立ち、オグリを待っている。そしてオグリキャップが爆発的な末脚で迫ってきたところでタマモクロスの騎手南井はスパートを開始。1馬身の差はゴールまで永遠に詰まらず、オグリキャップは中央に来て初めて戦績に土がつくことになった。これでタマモクロスの連勝は8まで伸びた。
 
続くジャパンカップでは覚醒後初めて敗れるも、米国のペイザバトラーの2着。オグリキャップはこのレースでも3着に終わり、タマモクロスに連敗している。
 
だが、タマモクロスの引退は早く、次走の1988年有馬記念が最後のレースとなった。小柄で体質の弱いタマモクロスの体は、わずか2年の競争生活でボロボロになっていた。関係者の努力で何とか出走にこぎつけたが、3度目の芦毛対決となったオグリキャップとの叩きあいに敗れ、2着に終わった。
オグリキャップです!3度目の対決にして、初めてタマモクロスを下しました!」
今度は、天皇賞・秋とは逆にタマモクロスの方が後ろから並びかけたが、並んでからオグリキャップは粘りを見せ、どこまで走ってもその差は詰まりそうになかった。
 
1年前にはそのへんの条件馬に過ぎなかった一頭の馬が、時代のトップどころかシンボリルドルフですら成し遂げられなかった天皇賞・春秋連覇を達成。一気に歴史的名馬への仲間入りを果たしたその姿は、今現在でも日本競馬史上屈指のサクセスストーリーとして語り継がれている。
 
なお、前述のとおりタマモクロスを生産した錦野牧場はタマモクロスの活躍を見ることなく倒産したため、タマモクロスが勝利したときの表彰台の「生産者」の台は常に誰も立っていなかった。しかし、錦野氏本人は錦野牧場倒産後もタマモクロスを見るために競馬場に足を運び、タマモクロスが勝つ姿を大観衆に混ざってスタンドから見守っていたという。いかな心境だったであろうか。
 
ターフの主役を張ったのはわずか1年であったが、「白い稲妻」タマモクロスには熱狂的なファンが多く、競馬好きの漫画家つの丸が描いた『みどりのマキバオー』の主役マキバオータマモクロスがモデルとなっていることが知られている。
  

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タマモクロス、待ってるで!!
 

ウマ娘から入った人に見てほしいプレイアブルキャラ競馬レース集(解説あり)

ウマ娘始めまして時間溶かしてます。りくぜんです。
 
ウマ娘、ゲームの良さもあるんですが、改めて競馬の面白さを再確認できるゲームだと思います。とにかく競馬愛に溢れてますね。
ウマ娘のレース描写は良くできていると思いますが、実際の競馬もレースが面白いんですよ。スペシャルウィークグラスワンダーのマッチレースや、無双しすぎて戦う相手がいなかったマルゼンスキー、異常な競馬を見せるゴールドシップ等、実際の競馬を知ってると、ウマ娘はより一層楽しめます。
 
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(こういうセリフの一つ一つに元ネタがある…)
 
なので、ぜひウマ娘から競馬に触れた人にもスペシャルウィークサイレンススズカのことを知ってもらいたいと思って動画と解説書きました。よろしければご覧ください。
 
ちなみに競馬って馬券のイメージが強いですが、スポーツとしての側面もあって、レース見ているだけでも無限に楽しめます。競馬場の入場料金は200円なので、馬が走ってるの一日見てられるのコスパ最高の娯楽ですよ。日曜のGⅠ開催日の鳥肌が立つ雰囲気も良いのですが、土曜に行くと一日座って見てられるのでオススメ。
 
各馬、紹介したい代表的なレースを1レースずつまとめたのですが、長くなりますので、動画は「みどころ」のところから再生するように設定してます。全部見たい場合は戻してみていただければと思います。
また、プレイアブル25頭(JRA所属でないハルウララ除く)分ということでかなりのボリュームになってしまったので、適宜飛ばしていただいても良いかと思います。
 

生涯戦績:17戦10勝 主な勝鞍:日本ダービージャパンカップ
 
スペシャルウィークは、サンデーサイレンス産駒の超良血馬で、武豊に初めてダービーを勝たせた馬でもある。ジャパンカップでは「日本総大将」とまで称され、見事外国馬を蹴散らした。日本ダービー(動画)は「セイウンスカイが……並ばない!並ばない!あっという間に交わした!」と叫ぶ三宅アナが熱い。
同期にエルコンドルパサーグラスワンダーセイウンスカイがいる屈指の好世代で、特にエルコンとグラスの両馬とは「エルグラスペ」と常に比較され、今でも競馬ファンにエルグラスペを語らせたら10時間は議論できる。ただし、スペシャルウィークは直接対決ではエルコン・グラスに負け続けであった。グラスワンダーとワンツーを決めた宝塚記念有馬記念は日本競馬史上屈指の名レース。ちなみに競争心の強いことが有利に働く競走馬では強い馬は気性が荒いことが多いが、スペシャルウィークはとても大人しい性格だった。
 
 

生涯戦績:16戦9勝 主な勝鞍:宝塚記念毎日王冠
 
サイレンススズカが今でも伝説となっているのは、大逃げを打ちながら直線に入って更に伸びてくるというレースぶりで、武豊に「58秒で逃げて、58秒で上がってくる競馬もできる。こんな芸当ができれば負けようがない」という夢を語らせた。3歳の頃は精神的に未熟で惨敗を繰り返したが、その辺のストーリーは「ウマ娘」にも反映されている。しかし武には可能性が見えていたようで、殆ど志願しない名手が珍しく自ら「乗らせてください」と志願し、翌年度から覚醒。
1998年の毎日王冠(動画)は「史上最高のGⅡ」と言われるレース。エルコンドルパサーは後に凱旋門賞制覇寸前まで行った馬で、グラスワンダーは宝塚・有馬を連覇。それを負かしたスズカの評価は今をもって揺るぎない。この次のレースが最期のレースとなった天皇賞・秋であり、大欅の向こう側で「沈黙の日曜日」が訪れる。
 

生涯戦績:12戦9勝 主な勝鞍:日本ダービー有馬記念
 
トウカイテイオーは無敗で皐月賞日本ダービーを制した。あまりの強さに鞍上の安田隆行皐月賞を勝った時点で指を一本高く掲げるなど、誰もが父親のシンボリルドルフ同様、無敗の三冠馬の誕生を期待した。しかし、ダービーのレース中に骨折していたことが発覚。菊花賞を棒に振り、無敗の三冠は夢に終わる。
復帰後、天皇賞・春で当時の古馬王者メジロマックイーンとの対決に挑むが5着に終わる。このときテイオーの鞍上岡部幸雄が「地の果てまで走りそうだ」と言えば、メジロの鞍上武豊は「こっちは天まで昇ってやりますよ」と応酬している。その後、年末の有馬記念で11着に終わるが、再度骨折が判明。1年間の療養を経て、次に出走したのが1年後の有馬記念(動画)。1年ぶりのレースを勝利で飾り「奇跡の復活」と言われたが、その後再び骨折し、引退。最後まで故障に悩まされ続けた名馬だった。
 

生涯戦績:8戦8勝 主な勝鞍:朝日杯3歳S
 
昔、日本競馬は国産馬を保護するために、ダービー等クラシックレースは外国産馬への開放をしていなかった。マルゼンスキーはそんな時代に輸入されてきた持ち込みの外国産馬脚部不安のためわずか8戦しかしていないのに、2着馬につけた合計着差は計61馬身。マルゼンスキーが出走するレースは、他の馬が出走を回避する現象まで起きており、そのあたりの下りも「ウマ娘」のグラスワンダーシナリオに描かれているのでぜひ見てほしい。
脚質は逃げとされているが、ただスピードが速すぎるため他の馬がついていけなかっただけである。これほどの強さを持ちながら、当時のJRAのルールのためクラシックには出走できず、鞍上の中野渡騎手が「大外でもいい。賞金もいらない。他の馬の邪魔もしない。ダービーに出してくれ」とこぼした伝説がある悲運の名馬。
 
 

生涯戦績:32戦22勝 主な勝鞍:ジャパンカップ有馬記念
 
オグリキャップは、キャリア最初の12戦を岐阜県地方競馬場である笠松競馬場で走っている。地方において圧倒的な強さを見せる中、オグリキャップは売却され馬主が小栗氏から佐橋氏に代わり、中央への転籍が行われる。クラシック登録をしていなかったため、日本ダービーに出走することはできなかったが、中央重賞を5連勝し、地方から来た「芦毛の怪物」と呼ばれ、時代を代表するアイドルホースとして人気を博した。
その後同じ芦毛タマモクロスの壁を乗り越え、ジャパンカップでのホーリックスとの競り合いで当時の世界レコードを記録する等、一線級の活躍を続けてきたが、5歳秋には衰えをみせ、天皇賞秋は6着、ジャパンカップは11着と「オグリは終わった」と言われた。そして迎えた有馬記念でのラストラン。全盛期を彷彿とさせる勝負根性で競り勝ち、有終の美を飾った。
 
 

生涯戦績:13戦11勝 主な勝鞍:ジャックルマロワ賞マイルCS
 
タイキシャトルを「日本史上最強マイラー」に上げる人は多い。13戦11勝と安定した強さだが、マイル(1600M戦)に限れば7戦7勝と生涯一度も負けなかった。マイル戦においては日本国内においても敵のいない状態であったため、フランスに遠征してジャック・ル・マロワ賞(GⅠ)に出走し、見事勝利。芝の違いも乗り越える強さも見せた。
マイルチャンピオンシップ(動画)は、フランスから帰国して出走したレースだが、まるでマキバオーにおけるカスケードのように、2着で5頭が横一線に並ぶ中、ブッチギリで先頭を駆け抜けた。レースでは常に先頭2番手につける先行策で付け入る隙のない安定した走りを見せる馬だった。
 
 

生涯戦績:21戦12勝 主な勝鞍:天皇賞・春宝塚記念
 
メジロ87年組」の一頭で、同期にメジロライアンメジロパーマーがいる。当初、3頭の中で最も期待されていたのはメジロライアンであり、そのためライアンとともに出走した菊花賞を勝った際にも「マックイーンだ!メジロでもマックイーンの方だ!」と実況の杉本清に言われている。
タイプとしては距離が長ければ長いほど良いステイヤータイプで、天皇賞・春(動画)のように長距離ではトウカイテイオーらを子供扱いする強さがあったが、一方で瞬発力には欠けていた。スピード競馬の潮流からこのタイプの馬は珍しくなってしまったが、サンデーサイレンス以前の中長距離が本流であった時代の日本競馬を代表する一頭。
 

生涯戦績:16戦13勝 主な勝鞍:三冠、有馬記念
 
日本競馬史上初の無敗の三冠馬。2歳馬の頃は、将来を見据えて1000Mのレースに出たときは「1600Mのつもりで乗ってくれ」、1600Mのレースに出たときは「2400Mのつもりで乗ってくれ」という指示が騎手の岡部幸雄に出されたほど、若いうちから格の違いがあったという。また、日本ダービーでは岡部の指示に反応せず、勝手に仕掛けどころで自ら加速し、岡部に「ルドルフに競馬を教わった」と言わせた逸話がある。
日本では「アッと驚くギャロップダイナ」と言われた天皇賞秋の敗戦などあったものの、ほぼ敵はなく、有馬記念(動画)を最後にアメリカ遠征が企画され「世界のルドルフ、日本のミホシンザンを離す!」と実況された。しかし、アメリカ遠征初戦で故障し、そのまま引退。夢は見果てぬまま終わった。
 
 

生涯戦績:25戦6勝 主な勝鞍:天皇賞・春菊花賞
 
生涯6勝しかしていないのに、3勝がGⅠ勝ち。しかも、中身がミホノブルボンの三冠阻止の菊花賞と、メジロマックイーン天皇賞・春三連覇の阻止であり、菊花賞では「あ~っと悲鳴に変わりましたゴール前!」と言われ、天皇賞・春(動画)でも「今年だけもう一度がんばれマックイーン!」とか言われる役回り。おかげで「関東の刺客」とか「黒い殺し屋」とか呼ばれる独特の立ち位置にいた。
勝鞍でもわかるように生粋のステイヤータイプで、距離が3000Mを切るとサッパリだった。マックイーンの後、自身も天皇賞・春を2連覇するも、その次に出走した宝塚記念で故障し、予後不良に。阪神大震災の影響で、その年だけ宝塚記念京都競馬場で開催されていたため、最期は自らが得意とした淀で生涯を終え「淀を愛し、淀に散ったステイヤー」と言われた。
 
 

生涯戦績:28戦13勝 主な勝鞍:宝塚記念有馬記念
 
GⅠを6勝した名馬だが、とにかく勝ち方が凄まじい。皐月賞(動画)では、内側の荒れ馬場を全員が敬遠する中、ゴールドシップ内田博幸が突っ込んでまさかの最後方からのマクリ勝ち(通称ゴルシワープ)。菊花賞でも向こう正面で最後方からスルスルと上がっていって、第4コーナーは先頭集団に取り付いている大まくりで勝利。基本的には無限のスタミナを誇るタイプで、母の父のメジロマックイーンの血がここに生きてるんだなと思わせられる。
気性が荒く何かと奇行が多いことで知られているが、集団のボス馬的な性格で、そのために池江厩舎のボスだったトーセンジョーダンと仲が悪かった。宝塚記念のゲート内で立ち上がって出遅れたことも、「隣のトーホウジャッカルが騒いだので怒ったため」とラフィアン岡田代表から指摘されている。
 
 

生涯戦績:26戦10勝 主な勝鞍:日本ダービー天皇賞・秋
 
ウオッカといえば、64年ぶりに牝馬でダービーを勝ったことが有名だが、安田記念(動画)もレース内容がぶっ飛んでいるので必見。直線に入って前に壁ができてしまい、武豊がコースを見失って立ち上がって追えない中、ウオッカがグイグイ前に体をねじ込んで勝ってしまうのは、もはや笑いさえこみ上げる。鞍上の武豊はレース後、「下手でしたね…」と語ったが、その後「満員電車を無理やり降りていく大阪のおばちゃんみたいでした」とも言っていた。
勝ったGⅠの7勝はすべて東京競馬場。府中の直線勝負以外では脆いところがあり、成績は安定しなかった。ダイワスカーレットとは生涯5戦して2勝しているが、そのうちの1勝を挙げた天皇賞・秋はリプレイで見てもどっちが勝っているかわからない競馬史上に残る名勝負。ウオッカは名レースが多い。
 
 

生涯戦績:12戦8勝 主な勝鞍:有馬記念エリザベス女王杯
 
ダイワスカーレットは勝てなかった4回は2着であり生涯すべてのレースで連対している。うち2回はウオッカに敗れたもので、この2頭の歴史的名牝が同い年で生まれてしまったことは、名勝負が見れた点では良かったがお互いにとっては不幸だったかもしれない。レースぶりは常に先頭ないしは2番手を進む極めて安定した進め方でとにかく大崩れしない優等生。ウオッカは不器用なところがあったが、スカーレットは「競馬が上手」だった。
ウオッカが64年ぶりにダービーを勝ってみせれば、ダイワスカーレットは37年ぶりに有馬記念(動画)を勝ってみせたが、このとき三宅アナが放った「夢の扉が今開かれた!」というセリフはウマ娘ではダイワスカーレット有馬記念を勝ったときに流れる。
 
 

生涯戦績:15戦9勝 主な勝鞍:宝塚記念有馬記念
 
入厩した頃から評判は抜群で「怪物」と呼ばれ、初のGⅠとなった朝日杯では4番手にいるのに直線に入った瞬間に三宅アナから「どこまで千切るんだグラスワンダーァァ!」と叫ばれる等、格の違いが明確に意識されていた。それで、実際にレコードタイムで勝つのだから強いものは強い。ところが競馬とは不思議なもので、同い年にエルコンドルパサースペシャルウィークセイウンスカイがおり、グラスワンダーの一強時代が訪れることはなかった。
特にスペシャルウィークとは、宝塚記念有馬記念でお互いの1頭だけしか見えてないようなレースを繰り広げた。宝塚記念(動画)ではグラスの的場均スペシャルをピッタリマークする乗り方で差し切ったが、もはや他の馬が来るという前提で乗ってないのがシビれる。
 
 

生涯戦績:11戦8勝 主な勝鞍:サンクルー大賞ジャパンカップ
 
「エルグラスペ」の一角だが、国内では結局サイレンススズカ以外に負けることはなかった。3歳のときにスペシャルウィークエアグルーヴを抑えて、ジャパンカップを制し、翌年からはフランスに挑戦の舞台を移す。迎えた凱旋門賞(動画)で当時の世界最強馬モンジューに挑戦するが僅差で敗れる。その日のロンシャン競馬場は不良馬場で、重馬場に強いモンジューに有利に働いたと言われるが、3着以下をぶっちぎったこともあり「勝者は2頭いた」と讃えられた。
世界の競走馬を格付けするワールドサラブレッドランキングでは、134ポンドで評価されており、この数字は現在でも歴代日本馬で1位。マイル、クラシックディスタンス、ダート、海外とあらゆる条件で結果を残したオールラウンダーで、日本競馬史上最強馬を問われたときに名を挙げる人は多い。
 
 

生涯戦績:19戦9勝 主な勝鞍:天皇賞・秋オークス
 
ウオッカダイワスカーレットの前には、牝馬の最強馬といえばエアグルーヴだった。特にエアグルーヴの時代には牡馬と混ざって一線級で戦える馬は、ヒシアマゾン等一部を除いてほぼいない時代で、エアグルーヴは異色の存在であり、男勝りの「女帝」と呼ばれた。
当時の中距離最強馬バブルガムフェローと真っ向勝負しての天皇賞制覇(動画)は牝馬としては17年ぶり。続くジャパンカップでもピルサドスキーの2着。翌年のジャパンカップでもエルコンドルパサーの後塵を拝するも2年連続2着と高い実力を証明し続けた。ちなみに2歳の頃のいちょうステークスは不利を受けても自ら持ち直して完勝しており、武豊から「これはただの牝馬ではできない。男馬にも勝てることを確信したのはこのとき」と言われている。
 
 

生涯戦績:21戦8勝 主な勝鞍:天皇賞・春有馬記念
 
マヤノトップガンは様々な脚質でGⅠを勝った馬で菊花賞は好位抜け出し、有馬記念は逃げ切り勝ちをしていたが、天皇賞・春(動画)では後方待機からの大外強襲で、サクラローレルマーベラスサンデーを交わしたところがゴール板だった。騎手の田原成貴は「どう考えてもトップガンサクラローレルに勝てない。しかし答えが見つかった。意識を消すことだ」と言って従来の乗り方から一新し、一世一代の大騎乗を見せた。
また、トップガンといえばナリタブライアンとの阪神大賞典のマッチレースに言及せずにはいられない。故障して「終わった」と言われたナリタブライアンが最後の一瞬の煌きを見せた名レース。トップガンは決して最強馬ではないかもしれないが、ストーリーのある馬だった。
 

生涯戦績:16戦8勝 主な勝鞍:菊花賞天皇賞・春
 
若き天才武豊菊花賞(動画)を勝たせ弱冠19歳にてクラシックを取らせた名馬だが、セリで売買されたときは脚が外向していたこともあり、わずか810万円、しかも牧場と懇意にしていた馬主が買ってくれただけという全く期待されていない馬だった。スーパークリークの配合はラフィアン岡田繁幸が考案したもので、父はノーアテンションで母もスタミナ系で固められており、字面を見ただけでは期待できないのも無理はない。
デビューも遅い大器晩成型で、菊花賞も獲得賞金が19位でエントリーしたが、回避馬が出たことによりなんとか出走でき、そのチャンスをモノにして勝ってしまうのだから競馬はわからない。ちなみに出自からすると泥臭いイメージはあるけど、ニンジンを4つに分けないと食べないなどワガママな性格だったという証言がある。
 

生涯戦績:19戦7勝 主な勝鞍:宝塚記念
 
メジロ87年組」の一頭で、同期にメジロマックイーンメジロパーマーがいる。華の同期組の中でも最も期待されたのがライアンであり、弥生賞を勝った後はクラシック戦線に臨むが、皐月賞ハクタイセイの3着、日本ダービーアイネスフウジンの2着、そして菊花賞ではメジロマックイーンの3着と勝ちきれないレースが続いたばかりか、ついに同期に出世で逆転を許してしまい、「未完の大器」や「ジリ脚」と呼ばれた。
鞍上を務めた若き日の横山典弘はライアンを勝たせられなかったことに強く責任を感じており、翌年の宝塚記念(動画)ではライアンに前から行かせる競馬をさせ、見事GⅠ勝利に導いた。このときの実況「宝塚の主役はメジロライアン!宝塚の主役はメジロライアン!」はウマ娘でもライアンを宝塚記念に勝たせると聞くことができる。
 

生涯戦績:4戦4勝 主な勝鞍:皐月賞
 
サンデーサイレンス産駒としては初期の頃の名馬。デビューは遅く12月になったが、その才能は高く評価されており、新馬戦を勝った後、一気に重賞のラジオたんぱ杯(動画)にエントリー。ここでの対戦相手となったのが、後にダービーやジャパンカップを勝つジャングルポケット、芝ダートでのGⅠ制覇を成し遂げたクロフネだったが、両馬を子供扱いする圧勝。皐月賞でも危なげない競馬でまずは無敗で一冠を達成したところだったが、屈腱炎を発症。そのまま引退に追い込まれた。
種牡馬としてもダイワスカーレットを輩出するなど高い能力を示し、サンデーサイレンス亡き後2008年にリーディングサイアーに君臨するも、2009年に心不全のため急死した。競走馬としても種牡馬としても底を見せることをなく、まさに「タキオン」のごとく去っていった馬だった。
 
 

生涯戦績:14戦6勝 主な勝鞍:日本ダービー
 
ウイニングチケットを語るには、鞍上の柴田政人騎手をおいて語ることはできない。柴田政人騎手は1960~90年代まで一線級を張り続けたトップジョッキーだったが、なぜかダービーだけが勝てなかった。ウイニングチケットに騎乗してダービー(動画)に挑んだときは既に45歳。ラストチャンスは迫っていた。柴田政人を乗せたウイニングチケットは、ビワハヤヒデナリタタイシンに迫られるも微差を守り続ける根性の走りで最後まで先頭を譲らなかった。
ウイニングチケットのダービーには魔法がかかっていたのだろうか。ダービー後、ウイニングチケットはわずか1勝で引退し、柴田政人も翌年度落馬による事故で引退した。そのためウイニングチケットは「柴田政人にダービーを贈るために生まれた馬」と呼ばれた。
 
 

生涯戦績:21戦11勝 主な勝鞍:スプリンターズS
 
短距離戦にめっぽう強く、スプリント戦(1200M)では7戦6勝。後にロードカナロアが出てくるまでは「日本競馬史上最強のスプリンター」と言われていた。引退レースとなったスプリンターズS(動画)でも、短距離戦のGⅠでこれだけ後続を引き離すのだからスピードの絶対値の高さが伺える。同期にニシノフラワーがおり、唯一敗戦したスプリンターズSの勝ち馬がニシノフラワーである。
一方でマイル(1600M)以上のレースになるとめっぽう弱く、9戦0勝とこれだけの馬にも関わらず生涯一度も勝つことができなかった。競走馬にはそれぞれ得て不得手があるものだが、あまりにもそれが極端な一頭だった。
 

生涯戦績:22戦6勝 主な勝鞍:菊花賞
 
この年のクラシックはサニーブライアンが大穴を開けて皐月賞日本ダービーを制覇し「これはもうフロックでもなんでもない!」という名実況が生まれた年。しかしサニーブライアンは三冠を前に故障で引退、サイレンススズカは中距離路線を進む等、クラシック戦線の層が薄く、菊花賞の一番人気は「届かない追い込み馬」シルクジャスティス。まさに福が来た!と言える巡り合わせで菊花賞(動画)を取ったフクキタルだったが、これが生涯最後の勝利となった。
ちなみに同期のサイレンススズカとは、生涯4戦しているが、スズカの路線変更後、最後に相まみえたのは金鯱賞(GⅡ)で、スズカの大逃げからの大差勝ちでぶっちぎられている。この辺の下りもウマ娘のフクキタルのストーリーに入っていたりする。
 

生涯戦績:41戦8勝 GⅠ勝ちなし
 
有馬記念3年連続3着という不滅の大記録を持つ「ブロンズコレクター」。有馬記念には5年連続出走しており、ダイユウサクメジロパーマートウカイテイオーナリタブライアンマヤノトップガンの勝利を全て後ろから見守ってきた歴史の生き字引。ちなみにナイスネイチャの3着記録が途絶えた年に3着を取ったのが「レコードブレイカーライスシャワーだったりする。動画は生涯最後の勝利となった高松宮杯
馬場さんという厩務員によく懐いており、引き綱なしで馬場さんの後ろをついていくほどであった。本来は6年目の有馬記念にも出走する予定だったが、ナイスネイチャの蹄にひびが入っていることを偶然馬場さんが発見し、調教師を説得して出走を取りやめたエピソードがある。
 

生涯戦績:27戦6勝 主な勝鞍:高松宮記念
 
父は1980年代世界最強馬と謳われたダンシングブレーヴ、母は米国GⅠ7勝のグッバイヘイローという超良血だったが、悲運なことに生まれたのが「エルグラスペ」世代であり、スペシャルウィークグラスワンダーセイウンスカイに何度も何度もチンチンに負けまくった。グラスワンダースペシャルウィークのマッチレースとなった宝塚記念も後ろの方を走っていた。それなりにはやるが、良血として期待していたレベルではないというのが世間の評価だった。
ところが古馬になってから短距離路線に変更。マイルCSで2着、スプリンターズSで3着と可能性を見せ、高松宮記念(動画)でついにGⅠのタイトルを手にする。良血馬が挫折を乗り越え、泥臭く、最後はGⅠを掴んだ緑のメンコ、キングヘイロー。そんなストーリーが、この馬が愛される理由なのだろう。
 

生涯戦績:26戦14勝 主な勝鞍:秋古馬三冠、宝塚記念
 
ヨーロッパの重たい芝向けの血統もあり、日本の芝には合わないとみられ、セリで竹園氏がわずか1000万円で落札。しかもこの値段はセリの初値だった(誰も競りかけてこなかった)。この馬が後に同一年度に8戦全勝で天皇賞春、宝塚記念天皇賞秋、ジャパンカップ有馬記念を連勝し、「世紀末覇王」と言われる馬になると誰が思っただろうか。当時20代前半の和田竜二騎手が鞍上を務め続けたことで「オペラオーが和田に競馬を教えている」と言う人までいた。
8戦全勝の最後を締めくくった有馬記念(動画)でも、他陣営から徹底的にマークされ、スタート直後からゴール前までずっと馬群に包まれ続けていたが、それでもゴール前でオペラオーは一瞬の隙を見つけて伸びてきた。後にこのレースはJRAのCMで「道は、消えたはずだった」と表現された。
 
 
 
ここまで見てくれたあなた、相当競馬好きですね。
そんなあなたに向けて、もう一つだけ話をさせてほしい。
 

GⅠに出るような馬には珍しく、生涯50戦も出走した馬です。
 
ただとにかくGⅠに勝てなかった。生涯で2着12回、3着8回という天性のシルバー、ブロンズコレクターっぷりで、主要な中距離重賞のレースを見るといつもステイゴールドがそこにいた。なんと29連敗を喫したこともある。重賞出走回数36回はナイスネイチャを凌ぐJRA記録にもなっている。
周りが引退しても時代を超えてずっとステイゴールドは走り続けた。一般的に4,5歳で引退する馬が多い中、彼は7歳まで現役で走り続けた。世代をまたぎ、サイレンススズカともエアグルーヴともエルコンドルパサーともグラスワンダーともスペシャルウィークともアグネスデジタルとも一緒に走ったことがある。
 
それでも一度もGⅠに勝てなかった。
そして現役引退は50戦目、海外GⅠの香港ヴァーズで締めくくられることになった。GⅠへの挑戦は実に20戦目に達しようとしていた。7歳の年末のラストラン。
 
そのレースが上記の動画の最後で出てくるんですけど、引退レース、最後の直線で奇跡が起きる。一旦は突き放され、もう届かない位置にいるように見えたステイゴールドが突然グングン伸びてくる。5馬身……3馬身……
実況が叫んだ「差し切れっ!ステイゴールド!!」には、そこまで辿ってきた6年間49戦の想いが込められているからこその心の熱さがある。最後の直線とか実況のほうが泣きそうになってて、こっちまでつられて泣きそうになってくる。
 
ステイゴールドが差し切ったのはゴール版の5メートル、いや2メートル前くらい。0.1秒ズレていても届かなかった奇跡。ステイゴールドの栄光は、50戦に渡る競争生活の旅路の最後の最後にあった。
ところで、このレースが「香港ヴァーズ」だったことを思い出してほしいんですけど、香港のレースだったのでステイゴールドには漢字の名前がつけられています。
漢字で命名されたその名は「黄金旅程」。いやいや出来すぎでしょ。
 
このステイゴールド、引退後は種牡馬となり、"三冠馬"オルフェーブルや"不沈艦"ゴールドシップなどを輩出する名種牡馬となっています。この血統の系譜が競馬の面白いところですね。
 
 
ウマ娘、現在のところ社台グループの馬が登場できないのですが、いつの日かステイゴールドがプレイできる日が来ることを夢見ています。

『One Step From Eden』には無限の忙しさと永遠の快楽がある、これこそ「天国のゲーム」

(リーン ゴーン リーン ゴーン)
いらっしゃい。あららお客さん、見た感じ若いのに亡くなっちゃってご愁傷さまですね。ここは現世でゲーマーだった死者が永遠の時間を楽しみ、そして過ごしてもらうための「天国のゲーム」を紹介する場所です。
 
「天国のゲーム」には条件があります。
それはプレイ中に「忙しさを感じること」。忙しいときは時間が早く経過するでしょう?
ここ天国では退屈を感じないように忙しいゲームが推奨されています。それに「忙しさを感じるゲームは良いゲームの証である」と誰かが言っていたのを聞いたことはないですか?
 
求められる条件の2つ目は、「受動的であること」です。
もうウンザリでしょう? 何かをやりなさい 何を? それは自分で考えてください、みたいな話は。
何をやるかは指示される方が楽ですし、さらには主体性を必要としないとなお良いものです。人間は案外考えたいようで考えたくない生物なのですよ。
 
前置きはこの辺にしておきましょう。
 

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今回はじめて天国にお越しになった貴方にお薦めするのは、『One Step From Eden』という名がつけられた作品です。
このゲームは先に述べた2要件、忙しいこと、受動的であることを満たし、無限の時間を過ごすための「天国のゲーム」に相応しいゲームですね。
 
何度タイトル画面に戻されても繰り返しプレイしたくなるリトライ性と、プレイ中に得られる快楽については私が保証します。
そう、快楽もまた重要な要素です。「受動的に与えられる快楽は一種の麻薬である」という考え方もありますが、ゲームで麻薬が摂取できるなんて素晴らしいことだと思いませんか?
 
さて、ここからは『One Step From Eden』についてより具体的な話をしよう。
 
f:id:rikzen:20210104221339j:plain ゲームシステムを簡単に説明しますと、自キャラは左の16マス、敵キャラは右の16マスを移動でき、それぞれ弾幕を撃ち合って相手を倒すとステージクリアです。敵味方ともに相手のフィールドへの飛び込み攻撃もあるので注意してください。
 
画面だけパッと見るとフィールドが3×3から4×4に変わった『ロックマンエグゼ』のようにも見えます。しかしそう認識した場合、すぐにそれは全くの誤りであることがわかるでしょう。
敵弾の速度は速く、貴方には常に迅速な対応が求められ続けられます。必要なのは、判断の速さ、速さ、そして速さです。何という忙しさ!立ち止まって考える時間はない。
 

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一方で攻撃面は、構築したデッキからランダムで選択された2枚のうち1枚のスペルを実行することで行います。
つまり重要なのはデッキの構築。強いスペルを高回転させるためには時にはデッキを圧縮することも必要です。シナジーの合うスペルだけを取得し、デッキコンセプトに合わないスペルはたとえ強力なスペルであれ、廃棄することもあるでしょう。
 
おや、この仕組みどこかで見た気がしますね。
 

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『Slay the Spire』ですね。最近のゲームは少し遡ると『Slay the Spire』のDNAに辿り着くものが多くなっています。

 『Slay the Spire』はベルトコンベアを備えた一種の工場と考えて良いでしょう。流れてくる部品を一つずつ選択する(処分する)ことがプレイヤーに与えられた仕事で、それらを処理することで前に進んでいくゲーム進行となっています。しかし、ルートを進むことで先に進んでいるようなビジュアルで錯覚させられますが、本当は前に進んでいるのは自分でなく、処理する部品のほうが一つずつやってきているだけです。また、その処理の方法についてもある程度の定石があります。デッキのパターンをいくつか頭に入れたらあとは引いたスペルを見ながらデッキ構築のための取捨選択をすることになります。
 
ツモが自動的に流れてきて、その中から何かを選択し続けるが、実は選択は定型化されている。
 
『Slay the Spire』は、非常に受動的であり、頭を使っているような気分にさせてくれる頭を使わないゲームです。特徴が最も似ているゲームを一つ上げろと言われれば、私は迷いなく「麻雀」と答えるでしょう。それほどこの2つの本質的な特性は似ており、それが故にともに「中毒的」と表現されるのではないでしょうか。
 
話を戻すと、『One Step From Eden』はデッキ構築部分について『Slay the Spire』のルールをほぼ踏襲しているため、その受動的で自動的な判断を繰り返す性質も受け継いでいることになります。
 

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デッキの話が出ましたので、あわせてデッキ構築のことも補足しておきましょう。
『One Step From Eden』において、デッキ構築は必須ではありません。極端な話、敵弾をすべて避けてしまえば攻撃手段などどうでも良いからです。
ただ、『One Step From Eden』の敵の攻撃はかなり激しく、後半になると基本「殺られる前に殺れ」の攻撃力が求められるので、デッキ構築は麻雀で言う手作りのように行っていくのが基本です。
 
ここでクリアしやすいデッキ構成をいくつかご紹介しておきます。
 

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氷系デッキ。アイスニードルやフロストバレッジなんかの凍傷スペルを中心的に拾っていき、アーティファクトはコールドプレスジュースやミントティーあたりの凍傷で発動するものを拾っていきます。初期デッキから考えてもキャラクターはセリシーで始めると構築しやすいです。ボスキャラで出てきた場合に強いセリシーを相手にしなくとも良いというメリットも。
 

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セラキャノンは引ける確率自体は低いものの、序盤で引けたらほぼクリア確定の壊れ武器です。『One Step From Eden』は1プレイ概ね1000少々のクレジット(お金)を取得することになり、お店での買い物を一切しなければセラキャノンの攻撃力は1000超になります。また、スイッチベイトとのコンボも強力。スイッチベイトの弾は2発射出されるので、1000超×2の威力となりセラキャノン本体の威力を凌ぐ低レアカードとなります。
 

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マナコスト0で小さなダメージを与えられるウイルスペルとスペルキャスト時にメリットが発生するアーティファクトとのコンボです。ウイルスペル以外のスペルはショップで廃棄を購入して可能な限り廃棄することが望ましいです。最初1枚だったウイルスペルがデッキを回すごとに2枚になり、4枚になり、1024枚になり…と増えていく様は圧巻。ウイルスペル自体の威力よりもスペルキャスト時のメリットに依存しているので、もはや弾が当たるかどうかはどうでもよく、ただボタンを連打すれば良いデッキです。
 

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脳への受動的な刺激が極めて継続的に、そして中毒的に繰り返される。手と頭はフル回転しているが、しかし思考しているように錯覚させられつつその実何も考えていない。これ以上天国に相応しいゲームはあるでしょうか。
何も考えず、永遠の快楽を享受してください。
 
どうか貴方の天国でのゲームライフが素晴らしいものでありますように。
 

ゲームの感想 2020

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今年もゲームの話をする時間だ!
長文感想書いたやつは、ゲームタイトルにリンク貼ってます。
 
極端な話、魏呉蜀が平等になるようなゲームバランスならば求めているシミュレーションになるのかというとそうではなくて、ファンが三國志ゲーに求めているのはそこに「三國志」の世界があること。そういう意味では本作は呂布が個性のおかげで強いのにクソ使いづらかったり、やたら固い剣閣を無視して山越えで直接成都に到達できるルート(ただし攻略に失敗すると引き返せない)があったりと、確かに三國志が感じられた。三國志14は確かに最高の戦略ゲームではないが、最高の三國志ゲームではあると思う。
 
仁王2(PS4)
びっくりするくらい仁王1そのままだったんだけど、仁王はわりとシステムが完成されたところがあるので下手にいじると崩れてしまうのかも。好みはあれど主人公が前作のウイリアムからカスタムキャラになったのは残念な点。一言も喋らないので印象に残らない。DLC平安時代もやり尽くしたことだし、仁王3は主人公を外人に原点回帰した上で未来しかない。戦国時代の未来の外人……となるとペリーか!開国を要求しながらペリーが幕末志士を殴り倒す仁王、絶対やりたいでしょ。
 
リメイクと言うより新解釈FF7。基本的には万人向けなんだが、その本質は「23年前にデジキューブで予約して当時バンバンやってたテレビCM見て発売日を楽しみに待っていたお前たち」に送るゲームだと思う。神羅ビルを登っているとき、JENOVAの音楽を聞いているとき、エアバスターと戦っているとき、当時の自分の人生を思い出さずにはいられない。ああ、あの頃は楽しかった。セフィロスが剣を振りながら放つ「懐かしくないか?」という言葉はクラウドだけじゃなく、画面の前のプレイヤーにも向けられている。
 
Cat Quest II(PS4) 
お手軽に遊べる2人用見下ろし型のアクションRPG。剣を振って敵を殴って魔法でボコってと、とてもシンプルなゲームシステムで脳に優しい点は地球防衛軍と方向性が似ているところがあるかもしれない。敵、出てくる、殴る、倒す、装備強くする、もっと強い敵出てくる、殴る、倒す。SEKIROのようなガッツリ気合を入れて遊ぶゲームも良いが、たまにはこういう定食のお漬物のようなゲームがあってもいい。昔と比べて画面の前で複数人で気楽に遊べるゲーム減ったのである意味貴重。
 
Call of Duty: WWII(PS4)
わりとマジにCoD2のリメイクだと思ってやったら全然そんなことなかったぜ。いや、第二次世界大戦ってのは合ってたんだけどね。FPS下手なのでライフ回復がアイテム使用になってたのがしんどかった。欧米の軍隊の強さの秘密はちょっと物陰で休んだらどんな怪我でも治ってしまうあの無限回復じゃなかったのか!そりゃ日本軍も勝てませんわと勝手に納得していたのに…。ラストのナチスの捕虜収容所はよく描いたなって感じ。被爆下の広島を描くゲームもいつか現れるのだろうか。
 
グノーシア(Switch)
良いゲームの条件の一つに「スタート画面で余韻が感じられる」ことがある。クリア後にスタート画面に戻る動線は、本や映画にはないゲームの特徴であり、良いゲームはそこで余韻があるんだよな。ゲームってのはプレイだけじゃなくて、最終的にはゲームをやめるところまでが含まれる。余韻とは、ゲームが素晴らしいほど発生する、それを終えるときの気圧差のことだと思う。クリアしてスタート画面戻ったところでBGM聞きながら「いいゲーム遊んだなー」と打ち震えることができた。
 
パワプロ 2020(PS4) 
前作からのマイナーアップデート感もあるけど、それだけに現行のパワプロにおいて最も完成度の高い作品。ペナント、マイライフ、サクセス、パワフェス、栄冠ナイン等、色んなモードを全体的にちょっとずつ良くするとそうなるよね、という安定感ある帰結。未だパワプロ2016から引かれた延長線を歩き続けており、進化の袋小路に入ってしまった印象も受ける。こういうシリーズ物は冒険をしない方がいいのか、あるいは驚きを与えるべきなのか、次回作に答えはあるだろうか。
 
Dungeon Warfare(Steam)
マジで時間がなさすぎる時期だったのにゲーム遊ばないと死ぬ症候群が出てきたので、細切れで遊べるタワーディフェンス買って心を消化しようとしたら想定外の時間泥棒を食らってヤバかった。「ステージクリアして新しいトラップをアンロック! 次のステージで活用してみよう!」みたいな仕組みを途中で自ら中断できる奴いたら鋼の自制心すぎる。新しい武器を手に入れたらすぐ試してぇだろうが!「ステージクリア型だからキリよくやめれて安心だね!」そんな安心はなかった。
 
The Last of Us Part II(PS4) 
エリーがギター弾いて気持ちぶつけたりとか同級生と言い争ったりとかするじゃないですか、自分がアメリカ人だったらアメリカンティーン・エイジャー的な振る舞いに何らかの感傷を覚えたりするのかもしれないけど、さっっぱりわからん。何の感傷もない。何というか文化的なコンテクストの差がある気がする。例えアメリカ人がいくらペルソナ好きでもペルソナの放課後感を心から理解するのは難しいだろうし、生まれる場所や文化によって理解できるものと理解できないものが生まれることは縛りみたいなもんだ。
 
Ghost of Tsushima(PS4)
クロサワ時代劇的な"カッコよさ"の演出に全振りしたゲーム。確かにカッコよかった。境井仁も顔だけ見りゃただのオッサンでイケメンではないんだけど、とにかく所作がカッコいい。待てよ、さっき文化的コンテクストの話したけど、これ作ったの外国人だろ? 完璧です、完璧に理解されています。これは実際の日本にはどこにも存在しないけれど、確かに「日本的」とされた美学そのものです。だとすると何だ。結局は知らない文化の理解は"共感"できるかどうか次第なのかな。
 
リングフィットアドベンチャー(Switch)
両方やってみた感想としては、脂肪を燃やすならばフィットボクシング、全身の筋肉をつける目的ならばリングフィットが上という感じ。言い換えれば表見上の体重減らすならフィットボクシングだ。リングフィットは筋肉がつくので短期的には体重が減らねぇ。本当に筋肉がついているのかもわからねぇ。基礎代謝が上がっているのかもわからねぇ。健康になっているのかもわからねぇ。何もかもがわからねぇ。ただそれでも何かを信じて運動を続けていく。そういうゲームだ。
 
お船のゲーム。死の瞬間を描いた断片的なカットを見て「その人の名前は何か。死因は何か」を推理していくという見たこともない異色の作品なんだけど、『Papers,Please』と同じ作者さんだったのね。これだけリメイクで発売されるゲームが多くなってくるとゲームのパターンは生まれ尽くしたように思えてきても、まだまだ題材や観点は存在することを教えてくれる。人はこのまま世の中の全てをゲーム化するように掘り尽くしていくならば、人類の計算資源は足りるのか。
 
ガレリアの地下迷宮と魔女ノ旅団(PS4)
アイテムの探索要素、日本一お得意のインフレしたダメージと、考えてみれば、画面をRPGに置き換えたディスガイアではある。が、その本質は魔女シリーズの泉達也によるシナリオ。エログロをNGとしない容赦ないストーリーはルフランの路線を継続し、今作でも健在。というか個人的にはゼロ年代のエロゲっぽさがあると思った。なぜかあの一時代のエロゲで花開いた尖った雰囲気を魔女シリーズは持っている。ただ令和のスペクトラルタワーなダンジョンだけは残念だった。
 
Crimzon Clover(Switch)
同人やフリゲのSTGでガッツリやり込んだのは、東方Project、StellaVanityそれからCrimzonCloverなんだけど、まさか任天堂のゲーム機で遊ぶ日が来ると思わなかったなぁ。いい時代になったけど惜しむらくはSwitchでSTG向けのパッドを持ってなかった。PCでのSTG向けパッドといえばスピタル産業のCT-V9が珠玉の逸品で何台も使い潰したけど、パッドの名機って最近聞かんね。STGは操作性の重要度が高いので、それだけにコントローラーの進化と共に生きてきたジャンルだと思う。
 
今年は桃鉄の久々の新作が出た年であり、ダビスタの新作が久々に出た年でもある。よく比較されるウイポとの話で言えば、能力や配合の爆発力がハッキリ見えるウイポと比べてダビスタはマスクデータが多いよね。同配合でも全然産駒の能力が違ったりするギャンブル性があるのよ。今作の美点はレースシーンの映像。内側の馬場が荒れてたら全馬第四コーナーを外ぶんまわしで回ってくるこだわりは必見。逃げ先行が強い前残りのバランスが気になるけど、思えばダビスタは大体バランス悪いのが特徴であり今更だった。
 
去年は新生の終わりくらいでまだ麻雀ばかりやってて、ガッツリ進めたのは今年になってからなので入れとこ。1年かかってようやくパッチ5.0までクリアしました。最近はローソンコラボでロッテのチョコレート食べて偏食してます。シリーズでは漆黒は蒼天の次に好きだけど、特に良かったのはユールモア。ああいう退廃的な享楽街好き。ユールモアと言えば、ティスタ・バイちゃんFF14で1番の美少女よね。話し方もアクがあってギャンブラーというキャラも立ってるし、あれでチョイ役なのはビックリしちゃった。
 
 

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今年の1作を挙げるならば『グノーシア』
 
人狼の仕組みを利用したシナリオも良かったけど、もちろん人狼を遊べるゲームシステムも上手く作られている。NPCがわりと賢くて、万物の霊長たる人間様であるところのこの私が騙されまくって吊られまくる。たかが機械にナチュラルに騙される人間様の尊厳ヤバい。
あと、キャラクターに個性があるので、キャラクターの特徴を覚えた後半になると「コイツがこういう振る舞いをするということは、こういうことか」と読めるようになる。仲のいい友達かよ。シナリオだけじゃなくて、そんなところからもゲームの中に入り込める。色々な仕組みに整合性の取れた美しさがあるゲームだと思う。
 
 
去年すげえ忙しくて「ここ10年で最高の労働」が来たと思ったら、今年はコロナ対応もあり「過去最高と言われた昨年を上回る労働」というボジョレーヌーボーになってしまって、十分にゲームできなかったのが残念。できれば『Library Of Ruina』とか『factrio』とか遊びたかったんだけどな。来年はがんばって時間作る。
今年はコロナでひどい目にあった人多かったんじゃなかろうか。本当に忘れられない年になったな。
 
ちなみに2016~2019の記録を見ると、過去の今年の1本はこんな感じらしい。
 
 2017:BLUE REVOLVER
 
あっという間に一年終わっちゃいましたね。それでは少し早いけど良いお年を。