当たり判定ゼロ

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ハチナイ走力影響調査2019夏 ~2塁からワンヒットでホームまで還るために~

ハチナイと言えば残塁地獄で知られるゲームですが、去年の夏に調べたところ、「相手に一定以上の守備力がある場合、2塁からワンヒットでホームまで還ることができない」バランスであったことがわかりました。そりゃ残塁地獄にもなるわという納得の結果。
 
しかし、今年の冬に走塁面のシステム改修があり、今では2塁ランナーがワンヒットでホームまで還るシーンもちょくちょく見るようになりましたし、1塁ランナーもライト前ヒットで3塁まで行くことがあります。
 
問題は「ランナーが誰なら、どれくらいの確率で」ってところなんですけどね。
というわけで調べてみました。例のとおり手作業で集計しています。集計条件は以下のとおり。
  • ランナー1塁で外野にヒットが出た場合に、ランナーは3塁まで進めるか
  • ランナー1塁でツーベースヒットが出た場合に、ランナーはホームに進めるか
  • ランナー2塁で外野にヒットが出た場合に、ランナーはホームに進めるか
の3点。犠牲フライについては、発生条件がよくわからなかったので今回は無視しました。
 

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1アウト1塁から単打を打ったら分母に1カウント、1塁ランナーが3塁まで進塁したら分子に1カウントして数えていきます。
結構ちゃんと見てないといけないし、手が忙しくなるのでゲームスピードは遅めにして地道に数を数える作業を繰り返していきます。お刺身にたんぽぽ乗せる作業の香りがするし、生きている意義を少し考えてしまうようになるので良い子は真似しないでくれよな。
 
同じ条件で繰り返し回さなければならないので、対戦相手は今の宇喜多イベントで出てくる聖ハピネス学園(ランク:A1)を選定。この実験、本当はもう少し早くやりたかったんですけど、特攻不要で適度に強い相手を繰り返し回せるイベントがなかったんですよね。
  

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聖ハピネス学園の外野守備力は全員4666で固定。なんと都合のいい。
多分ランクマで人間を相手にするときもだいたいこれくらいの守備力と思われますし、いい感じです。
 

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こちらのスタメンはこんな感じ。調子の数字は1(絶不調)~5(絶好調)を表します。 
とりあえず15戦回してみた結果がこちら。
 

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進塁率49%!!!

前回の夏調査では、犠牲フライを除いた進塁率が0%だったので、大きく数字が変わっています。2塁からワンヒットでホームまで還ってくることができるようになりました!ハチナイがだんだん野球に近づいてきている!!
 
未だにクロスプレイがないこととか、バントがないこととかを忘れると、これは大きな進歩です。喜ばしい。
しかもこの表をよく見ると、俊足の東雲や絶好調のいろはの進塁率がやたら高かったり、絶不調の坂上ちゃんの進塁率が低かったりと、走力の影響が露骨に現れていることが見て取れます。ちゃんと走力反映しててえらい…。
 
しかし、走力を反映している……?
ならば、彼女の出番じゃないですか!
  

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[分かち合う勝利] の竹富くんは単体性能だとそんなでもないけど、センターに配置したとき「味方全体の走力が大幅に上昇する」のバフスキルを持っていて、もしかしたらこのスキルが化けるかもしれない。
 
そんなわけでセンターを加奈子から竹富くんに変更。チーム全体に走力バフをかけて試してみましょう。
 
先ほどと同じく15戦回してみるとこんな感じに(ついでに先発投手を防御率測るために変えています)。
  

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なんということでしょう!
 
進塁機会は103回とほとんど変わらないのに、進塁数は50回から77回に激増!当の竹富くん自身に至っては、1塁にいるときにヒットが出れば9割以上の確率で3塁に行くし、長打が出ればホーム生還ほぼ間違いなしというレベルの快速。ハチナイ界の赤星や…。
チーム全体の盗塁の試行回数も20回から35回に増加し、成功率アップで成功数はちょうど倍増。たった一人入れるだけでこの違いですよ。
 
これが健大高崎の機動破壊…!じゃなかった、竹富くんのバフの威力…!
長打の少ないゲームバランスで、未だに残塁各駅停車が多い現状、これは大きなアドバンテージではなかろうかと思います。
 
ハチナイにおいてはセンターが不毛の地とされていて、これが鉄板という選手が存在しなかったところですが、ここにきて走力の価値向上で竹富くんが正中堅手に急浮上してくるわけですよ。
当の本人の打力が微妙だったり、守備も物足りないところがあるのは欠点ですが、バフの効果頼みに下位打線に置いておくというのも打線の組み方の一つの答えになるんじゃないでしょうか。
  

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ちなみに散布図にプロットするとこんな感じ。走力の割に極端に率が低かったり極端に高かったりするところは、調子が高かったり低かったりする選手です。だいたい5000を超えてくると、かなりの確率で追加進塁を得られるという結果のようです。
今回の実験相手の守備力が4666固定だったので、相手の守備力を超えていれば高確率になるのかもしれないですね。対人間でも守備力は4000台が多いのではないかと思われるし、そういう意味では走力は5000超えを一つの目安にしてもいいかも。
 
ハチナイは、単純に性能が強い順に並べれば終わりというわけじゃなく、こうやって実証してみることで答えが出てくるという点は、野球ゲームとして本当にいいゲームだなぁというところありますね。統計のスポーツ、それが野球だから。
 

「私はあの時助けていただいたベイスです」

昔、「ゲーム業界決算まとめ」という記事を半年に一回やってたんですけど、5年前にDeNAの項目で、「君は……」「私はあの時助けていただいたベイスです。ご恩をお返ししに来ました」と書いたことがありました。
 
この記事を書いた前のシーズンである2013年は、DeNAが買収してから2年目のシーズンを終えたところ。このときのベイスターズというのは、ほんっっっっとうに弱くて、2008年から2012年までは5年連続最下位で、毎年のように90敗くらいしていました。
そして迎えた2013年はDeNA2年目であるとともに、中畑政権2年目。中日から獲得したブランコが首位打者打点王の2冠王に輝くなどの活躍で、6年ぶりに最下位を脱し5位に終わり、来期への上がり目を感じさせていました。今では打線の中軸を打つ宮﨑や、三嶋、井納のルーキーイヤーでもあります。ドラ1は白崎なんですけど。
 
それから5年が過ぎました。
キューバから獲得したグリエルに来日拒否されてMLBに逃げられたり、前半戦首位ターンからのシーズンを最下位で終了するアクロバットやってみたり、クライマックスシリーズで泥んこ野球やったり、倉本が平凡な正面の内野ゴロを内野安打にしてウィーランドにキレられたりと色々ありましたが、万年最下位だったチームが、今や毎年CSを伺うまでに生まれ変わりました。
 
一方、マーケティング面においても、DeNAの買収後、様々な集客施策が打ち出されました。
顧客が満足しなかったら全額返金するチケットを発売してキヨシにキレられたり、球場にシャボン玉を飛ばして応援する企画で客の弁当にシャボン玉を落として苦情を受けたりしましたが、失敗があるということは挑戦をしているということの裏返し。4367回安打を打つために必要なことは、14832回打席に立ち、失敗し続けること以外ありません。
 
データ分析から浮かび上がった「アクティブサラリーマン」と名付けた20代から30代男性の層にターゲットマーケティングを行い、集客増の端緒を掴んだことにはじめ、人口が多く巨大マーケットである横浜の優位性を生かして地元志向の広告宣伝を行ったことなど、とにかく「誰に球場に来てもらうのか」ということを明確に絞り込んだマーケティングを行っていたように思います。
 
結果として、買収初年度の2012年に110万人だった観客動員数は右肩上がりに増加を続け、2018年には200万人を突破。球場のキャパシティの問題で観客動員数は頭打ちに達したため、横浜スタジアムの座席数の増設工事を行うというところまで辿り着いたのは、DeNAの優秀なマーケターたちの努力の成果と切り離して考えることはできないでしょう。
 
それに伴い収支も改善。10億円以上の利益を計上するようになった現状は、大赤字でTBSのお荷物と言われた時代に想像した人なんて一人もいなかったんじゃないですかね。モバゲーの減速とともに毎年減収減益を続けるDeNAの2019年3月期の当期純利益は127億円ですから、赤字の広告宣伝どころか大いに利益の一角を担っているわけです。
毎年何千万人という観客を集めるプロ野球は、しっかりマーケティングやれば商売にならないわけがない、というポテンシャルを示したとも言えるかもしれません。
 
TBS時代からDeNA時代までの10年間の収支と観客動員数の推移をまとめるとこうなります。
 

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データの出処は官報とNPBの公式サイトから。
今回は、株式会社横浜ベイスターズ及び株式会社横浜DeNAベイスターズの決算を単体で調べたので官報をあたりましたが、古い官報は閲覧サービスのある図書館で調べることが可能です。例えば東京都であれば、東京都立図書館で官報を閲覧できるPCを使わせてくれます。都立図書館オススメ。
 
まず注目すべきはTBS時代の2010年とDeNA時代初期の当期純損益。これだけの規模の会社で当期純利益が1百万円とか、ほぼ0円とかありえますか。この数字で野球好きな人はピンと来る人もいると思いますけど、これが例の国税庁通達のやつですね。
 
1954年に出された国税庁「職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取扱について」という通達には、こう記載されています。

     ニ 親会社が、球団の当該事業年度において生じた欠損金(野球事業から生じた欠損金に限る。以下同じ。)を補てんするため支出した金銭は、球団の当該事業年度において生じた欠損金を限度として、当分のうち特に弊害のない限り、一の「広告宣伝費の性質を有するもの」として取り扱うものとすること。
平たく言うと「子会社のプロ野球チームの赤字補填した分については、親会社で損金処理していいですよ」という超法規的な措置で、長らくプロ野球チームを持つ親会社の節税対策として使われてきた通達です。そのため、プロ野球チームでは赤字になった分だけ親会社から資金が出てくる形となります。
2009年は親会社であるTBS自体が赤字だったため、節税効果が見込めずに収支補填が行われなかった数字であると見れば、観客動員数125万人程度であれば5億円程度の赤字が出る水準であると理解して良いものと思われます。赤字出してくれたおかげで目安の数字拾えました。ありがとうTBS!
 
DeNA買収以降の当初は更に客足が落ちていますが、買収以降、他の事業と合算したセグメント別の収支が公開されているので、正確ではないですがおおよその参考にすることができます。
 

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2013年3月期の決算短信によれば、「その他セグメント」が12億円程度の赤字となっており、まぁ普通に考えるとその殆どがベイスターズ関連でなかったのではないかと思います。したがって、買収以降当面は旧来の節税方式に則り、DeNAは毎年10億円程度の節税効果を得ていたのではないかと思われます。
 
それでも、ベイスターズを単体で事業として成立させるための努力を続け、完全に潮目が変わったのは2015年。観客動員数は180万人にまで急増し、はじめての単体黒字を計上しますが、思い起こすとこの年は前半戦を首位ターンで折り返した年。やはり強いと客は入るんですよね。
しかし、180万人ともなると、ほぼ観客動員数に伸びしろのない状況。そこまで行って、たった1億円の利益も出すことができないという状況は厳しい。このままでは球場を連日満員にしても、トントンにちょっと毛が生えた程度の利益が上限なんですよね。そのためには、広告使用料や飲食店の売上などが株式会社横浜スタジアムに吸い上げられてしまう契約を何とかする必要がありました。
 
そして株式会社横浜スタジアムを買収する2016年へと至ります。
元々、株式会社横浜スタジアムという会社は、横浜市横浜銀行のほか、地元の財界人をはじめとした個人株主が株式の多数を保有する会社で、権利関係が分散しているために買収は難しいと見られていました。非上場の会社って、いくら金を積んでも株主が「売らん」と言えばそれで終わりなので、特に関係者の多い本件をとりまとめたこの買収劇がDeNAのやった仕事の中で一番すごい仕事なんじゃないかと思うんですが、池田社長などベイスターズ経営陣は粘り強く地元の財界人や個人株主を説得し、友好的TOBの成功にこぎつけます。
 
それにより2016年度決算からは利益が激増。ただ一方で、買収のために親会社であるDeNAから70億円もの借金をしているため、ちょっとやそっとの利益では十分ではなくなったという側面もあります。いわゆるハコもの商売、ホテルとか不動産賃貸業とかって、初期投資のために多額の借金を背負うビジネスモデルであるため、他の業種よりも高い利益を出し続ける必要があります。ホークスとかもそうですが、球場を買ってしまった以上、半ば不動産業者みたいなものになるので、利益は高くて当たり前。他の球団と同じ利益では借金を返す金が足らんのです。
とはいえ、これだけのキャッシュフローを計上できているのであれば投資は大成功の水準。この集客を数年続けていけば、70億円の返済なんて屁でもないでしょう。
 
買収からわずか5年で、マーケティングの仕組みを整え集客力を激増させ、市や地元財界とのコネクションを作って横浜スタジアムの買収に成功し、その間にチームも再建してその後CS進出まで導くという仕組みづくりを行った池田社長、マジでプロ経営者というか、めっちゃ仕事できるマンとしか言いようがありません。5年ってたった1800日ちょいですよ。毎日寝て起きて繰り返してたら1800日なんてすぐ過ぎちゃいますよ。5年間という時間の流れ方が我々とは違うとしか思えない。我々が快活CLUBでキングダムを読みながらアイスクリーム食べている時間で、池田社長はどんどんベイスターズを再建していく…。
 
いや、優秀な経営者って本当に価値があって、要は同じリソースを与えるなら優秀な人に与えるべきって話なんですよね。
DeNAと池田社長が手掛けたベイスターズの復活劇は一つの野球チームの経営再建と見ることができるとともに、成功した事業承継の話とも見ることができます。
 
経営者の高齢化が経済全体の課題となっている中、事業承継関連は国も結構データを取っていて、例えば2019年度の「中小企業白書」にはこういう記述があります。

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中小企業白書では事業承継を行った場合の売上高、総資産成長率や従業員雇用者数などの指標について検証を行っており、結論として
 
事業承継により業績が改善する、事業を引き継ぐ経営者の年齢が若いほど業績が改善する、といったこれまでの通説は、いずれもおおむね正しいといえることが分かった
と結んでいます。
 
TBSからDeNAに経営権が映った2011年の、当時の池田社長の年齢は35歳。まさに白書が最も効果があると指摘する年代への事業承継であったと言えます。老人たちが有効に活用できなかったベイスターズというリソースを、池田社長が見事に使いこなして見せた話と理解することができます。
 
プロ野球のファンは3000万人とも言われ、この日本において依然として巨大なコンテンツ産業であり続けている一方、ステークホルダーの面子は大きく変わらず、「ビッグ&オールド」の産業であり続けています。
ベイスターズは言い方は悪いですが、所詮地方球団。そのリソースは限られています。「I ♡ YOKOHAMA」のターゲットマーケティング戦略は、裏返せば横浜以外の顧客はターゲットとしなかったということ。いや、できなかったという方が正しい。お客さんの数は多ければ多いほど良いに決まっていますが、全方位戦略が取れるほどベイスターズのリソースは大きいわけではありません。ターゲットマーケティングは、弱者の戦略のような性質があります。
 
すなわち、一地方球団にしか過ぎないベイスターズよりも更に巨大なリソースを持つ球団や組織などがあるわけで、それら組織のリソースを有効に活用できる池田社長みたいな人が現れたときに日本のプロ野球の構造は大いに変わることになるでしょう。しかし、同一の人間の性格や組織の特質は急に変わることができないのは時代が示しています。長く続ければ続けるほど、長く生きれば生きるほど、人は保守的になっていきます。新陳代謝を促すために、人はいずれ死なねばなりません。
 
未来は誰かが誰かにタスキを繋いだ先にしかなく、TBS、ダイエー近鉄、阪急、それだけではなくかつてプロ野球チームを持ったすべての会社がバトンを次の走者に渡してくれたことはとても大事なことだったし、TBSが球団を買ったときも、ダイエーが球団を買ったときも、きっと改革はあったのでしょう。
 
ここまで書いて、「あ、これはもう事業承継しかないな」という気になってきたし、クラウドファンディングで株式会社読売巨人軍を買収する資金を集めるしかないなというお気持ちになってきている。桃鉄だと東京の球団は100億円で買えた気がするし、それくらいで足りるかな?
 

SEKIROが言うには「続けると、きっといいことがある」

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SEKIRO、ようやく4週が終わって5週目に取り掛かっているところです。
ゲームとしてやるべきかやらぬべきかと言えば、それはやるべきだし、お金がないならば今すぐアルバイトでもするか、働きたくないならばブックオフにゲームかCDでも売っぱらって買うべきと言いたい。これは自分自身の「内面における体験」を買うゲームなのだから、見るのではなく自分でやる必要があるわけっすよ。ボヤボヤしているとお前の人生の残り時間なくなってしまうぜ、ムーブ!今すぐ動け!と言ってしまえばそれだけの話なのですが、はて、ゲームゲームと言いますが、フロムのゲームは10回、20回、100回と失敗を重ねて、敵の動きと対処を学習し、乗り越えていくゲームで、むしろ修行でもしているかのような感覚。これは果たしてゲームなのか。

ゲームという定義に関しては、フォン・ノイマンというおじさんが、ザクッとまとめてこんなことを言っています。
「チェスはゲームではなく、明確に定義された計算の一形式なんです。実際に答えを出すことはできないかもしれないが、理論的には正しい『手』が存在するはずです。それに対して本当のゲームはというと、全然違います。現実の生活は、はったりやごまかしの駆け引きからなっています。それこそが私の理論で言うゲームなのです」
まぁいかにもゲーム理論考えたおっさんらしい言葉ですね。この言葉どおりだとマリオですらゲームではなくなってしまう。

現代でゲームという言葉が用いられる慣用的な意味からすると「SEKIROはゲームじゃない」とか言い出したら何言ってんだこいつという話なんですけど、狭義な話としてノイマンの定義に従うのならば、最適解のあるSEKIROもまたゲームではないのでしょう。
じゃあSEKIROはゲームでないとするならば何なのか。

SEKIROは難しいゲームだと言われますが、その難しさを一言にまとめると「正確な動作をミスなく繰り返し続けなければならない」という点に集約されるかと思います。その本質は音ゲーとかSTGに通ずるものがあります。しかしこれってどこかで見たことないか…。そう、製造業の工場ですよ。工場。緻密な加工をひたすらミスなく続ける職人たちの姿ですよ。これこそがSEKIROです。

かつて日本は「技術立国」と呼ばれ、製造業で飯を食っていました。金属の切粉が空気に混じった鉄臭い工場で、熟練工の男たちが汎用旋盤やフライス盤を駆使し、金属に穴を開け、切り、削り、曲げ、時には溶接し、部品や金型を作っていました。その精度は正確にして繊細。
男たちは最初から高精度かつ正確な加工ができたわけではありません。はじめ、アメリカにおける「メイドインジャパン」と言えば「安かろう悪かろう」の代名詞でした。しかし、それでも繰り返し繰り返し長く作り続けたことにより、技術力は向上し、どんな難度の高い作業でも毎回正確に行える実力を身につけ、「メイドインジャパン」は「高品質」へと意味を変えたのです。
つまり、技術力は継続からしか得られない。
音楽にしても、最初は楽譜も読めなかった子どもが何年も続けるうちに、遂には2時間のオーケストラの楽譜を一度も間違えずに演奏できるようになる。1回の成功の前には、1万回の失敗がある。しかし、1回成功してしまうと、そこからの失敗確率はグンと落ちる。これが技術ですよね。

この学習の過程をグーッと圧縮して煎じ詰めるとSEKIROになります。
2時間ほど同じボスと戦って、回数も覚えていないほど「死」の画面を眺め続けて「難しすぎる。これ一生勝てないんじゃ…」と思っても、繰り返し繰り返しプレイすることで技術が身につき、正確な作業を行えるようになることで撃破できる。なんということだ、葦名城は工場で、狼は汎用旋盤の扱いに長けた職人だった…。

そうなると、これまで戦場の敵として戦っていた相手が、全て工場の部材として立ち上がってくるぞ。
最初は新米工員として工場に入ってきた狼。初めは荒い精度の加工にも手間取り、少しずつ慣れて腕に覚えが出てきたところで、新規受注した大型案件で心が折られる。それでも諦めずに難度の高い加工に挑戦し続けた結果、今ではミクロン単位の加工も正確にこなす熟練技術者だ。

技術力は継続からしか生まれない。
続けると、きっといいことがある。

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ところで、SEKIROにはその評価を確たるものとした良ボス「葦名弦一郎」がいます。彼こそはSEKIROのすべてを体現した存在であると言えましょう。

こんなことが心に思い当たるところはないでしょうか。MIDIをやろうと思ってSC88Proを買ったけれど、色々音を出してみた時点で「自分には才能がない」と終わってしまった。憧れの絵師のようになりたいとペンタブを買ったが描き心地を試しただけで終わってしまった。つまり、どのような道にせよ継続は容易ではないし、人はすぐに諦めてしまうということです。

葦名弦一郎は、そのような技術の向上を前に道を断念した人間の思いを具現化した怨念。
弦一郎の素晴らしいところは、まず第一に、意気揚々と辿り着いたプレイヤーの心を必ず叩き折って、どこかに諦めの気持ちを生み出してくれること。押し入れにしまってあるSC88Pro。カップラーメンを作る置き場になってしまったペンタブ。そのすべてが弦一郎に敗れて、続けることをあきらめてしまった夢の残骸です。一言で「成功の鍵は続けることだ」なんて言っても、その継続が難しいんだってばよ。継続は決して口で言うほど簡単なものではないんですよね。

ところが、折れそうになる心を押し留め、何度も何度も挑戦し、弦一郎を倒したとき、世界が転換します。
2週目にもなるとあれだけ強かった弦一郎の動きが手に取るように見え、繰り出された刀は間違えずに弾くことができ、下段はジャンプで躱し、突きは当たり前のように見切ることができる。3段階目の雷は相変わらずボーナス行動。弦一郎の素晴らしいところの2つ目は、それを乗り越えた者にとっては、弦一郎ではなく、「弦ちゃん」と愛されるキャラクターに変わりうる点です。

それが示すことは、あの凶悪な「葦名弦一郎」が「弦ちゃん」になる瞬間、確かにお前は継続という壁を乗り越えたのだという祝福が与えられるのだということ。それはすなわち、ハードウェア音源やペンタブを使わずにしまってしまった過去とは違った結末を導くことができたに等しい。よくやった、お前は諦めずに練習し続けたことにより確かな技術力を手にすることができたのだ。そしてそれは決して失われない。
「どうだ…お前の中のSC88proは切ることができたか…?」と倒したときに言ってほしいくらいですよ。

技術力は継続からしか生まれない。
続けると、きっといいことがある。

ただし、続けるに足る十分な時間が人生に残っているならば。

「子供には無限の可能性がある」というのは残酷な言葉で、裏返せば大人は過ぎていった時間とともに可能性を失っていったということ。あのとき諦めてしまったものに、あのときに戻って再び取り組むことはもうできない。
みんな今更やり直せない何かを心の何処かに引っ掛けながら生きてるし、何かを諦めてしまった大人にできることは、挫折した過去を乗り越える代償行為として葦名弦一郎を踏みにじり続けることくらいなもんですよ(ラスボス戦で100回くらいやり直しながら)。

まだ間に合うやつは急げよ。楽器でも良い、絵でも良い。
とにかく諦めないで続けて、そして葦名弦一郎を倒すんだ。

八月のシンデレラナイン、実はあまり野球をやっていない

年間90敗くらいしてた頃の横浜ベイスターズは、楽天から移籍してきた渡辺直人に「グラウンドは野球をやるところ。みんなの練習が終わってからやるならまだいいけど、周りが野球をやっているときにサッカーをやるのはおかしいと思う」と練習中にサッカーやってることを暴露されていましたが、プロ野球選手ですらサッカーをするのだから、もちろんハチナイでもサッカーのシーンは実装されています。
 

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椎名ちゃん、野球やってないときは本当に楽しそうだよね…。
ハチナイは野球ゲームであるとともに美少女ゲーでもあるので、キャラクターの魅力にスポットを当てたイラストを提供していく必要があります。そのため
 

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ビーチバレーやってたり
 

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果ては麻雀までやりだす有様。麻雀が出てくる野球ゲームなんてパワプロのマイライフでくらいしか見たことないぞ。
 
ともあれ、その結果、数字で見たことこそなくとも、ハチナイを長年やっている人は「ひょっとして野球やってるシーン少なくないか?」ということに薄々気がついているのではないですかね。いや、しかしそんなはずは…。これは野球ゲームだぞ…。
 
というわけで、本当にハチナイのキャラクターは野球をやっているのか調べてみました。
すべてを対象にするとキリがないので、調査対象はこれまで排出されたすべてのSSRとしています。ただし、ライバル校とキズナアイとのコラボの8キャラ分は除いており、合計162キャラ分。ライバル校の人たちは、基本的に対戦中の1枚しか出てこないから絶対野球やってるので、対象にする意味がないんですよね。なので除外。
なお、パリーグコラボに代表されるような野球場で応援しているシーンや、私服でのトレーニングのシーンは「野球をやっている」にカウントしています。野球と関係性のある何かをやっていればそれは野球だ。
 
それを踏まえて、「野球をやっている/野球をやっていない」のキャラクターごとの割合は以下のとおりとなります。
(75%以上が青、25%以下が赤)
 

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合計で見ると野球をやっている確率は40.12%。なんと6割が野球をやっていないという調査結果に。ガチャの更新情報見ても「今回も野球やってないな」という印象を受けることのほうが多かったことも納得。ハチナイは野球ゲームであるだけでなく美少女ゲーでもあり、キャラクターの魅力の掘り下げには野球以外の部分を描く必要もあるからね、仕方ないね。
 
キャラクター別に、まずは高いところから見ていくと、しのくもこと東雲龍の野球やってる率が87.5%と極めて高い。
唯一野球をやっていなかったのは、お正月ガチャで羽子板を遊んでいたシーンのみ。ガチャの登場回数自体も全体4位の8回と高頻度であり、普通は登場回数が多ければ、野球面以外の掘り下げのために野球以外の部分が描かれるだろうという常識を足蹴にして野球&野球。キャラクターとしても他人を叱りつけまくる野球の鬼みたいなところあるけど、見事にその性格を表しているような偏りっぷりでした。野球辞めたら脱魂してそう。
 
後は直江たゆたゆも75%と高いけど、これはトレーニングの描写を野球カウントしたことによる影響。ショートは有原が絶対的なレギュラーなので、控え選手の試合のシーン自体が描かれることが少ないんよね。
 
一方で、野球やってない勢を見ていくと花山栄美、本庄千景、塚原雫の3人は野球やってる率0%。
花山は「冬の登校シーン」と「文化祭のライブ」というオシャレ勢らしい描写。
本庄千景は「お風呂入ってるシーン」「買い物に行っているところ」「お正月の参拝」「クリスマスパーティー」「文化祭のお茶会」「春大会のメンバー発表後、塚原雫と抱き合うシーン」の6枚全外し。
塚原雫は「笛を吹いているシーン」「書道をしているシーン」「打ち水をしているシーン」の和風な3枚。
 
その他、近藤咲・新田美奈子を含めた「おいしいものクラブ」の面子をはじめ、全体的に倉敷舞子を除いて控えメンバーの野球やってる率が低くなっています。シナリオ上も試合に出てこないからどうしてもSSRの描写も日常シーンになってしまう感じですかね。唯一の例外の倉敷先輩は、ほとんどのシナリオで先発ピッチャーやっててチームのエース格のはずだけど、途中で声優さんが変わった特殊事情が影響しているのかもしれず、SSRの枚数自体が控えめとなっています。
 
んで、赤色(野球やってない勢)が控えメンバー中心ということはわかりましたが、更にこれジッと見てると傾向があって、赤色のメンバーはそれぞれ仲が良い組み合わせが多いということに気が付きます。
 

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実際の野球あるあるなんですけど、チームの人間関係って、レギュラー勢はレギュラー勢で仲良くって、控え勢は控え勢で仲が良くなる傾向があるんですよね。
ハチナイは何でか知りませんけど、このあたりの表現に無駄にリアルで、例えば近藤咲・永井加奈子・新田美奈子の『おいしいものクラブ』は全員控えで、3人中2人が本表では赤色。上級生コンビで野球やってるシーンが二人足して9-0と9タコの本庄千景と塚原雫も仲良し。それなりにSSRが出ている勢だと、泉田京香と直江太結も仲が良い描写が多いけど、かたやベンチ外でかたや有原の控え。
一方でレギュラー勢を見ると和気あいあいという雰囲気ではなく、それなりに緊張感を維持しつつ絡みが多いという関係になっていて、有原翼・東雲龍・柊琴葉・竹富亜矢は競争相手として高め合っている側面があるし、椎名ゆかり坂上芽衣は贔屓の球団をダシに煽り合う関係。投手の倉敷舞子はいつもピリピリしている。
 
このあたりの「レギュラー勢はしまった雰囲気を出してて、控え勢はゆるい雰囲気を出している。誰も口には出さないけれど、そこには明確な違いと壁が存在する」という空気、野球のチームを描いた本質でしょう。
 
ハチナイは野球ゲーム部分はともかく、こうした空気の描写が非常に上手いゲームです。
 
野球ゲーム部分?
SSRの野球やってる確率40%が暗示するように、ちょうどシナリオ描写力の40%くらいの投球といったところでしょうか。しかしこれは手抜きをしているんじゃない。完投するための力配分をしているんだ。
 

アニメ化の『八月のシンデレラナイン』、無駄に闇が深い美少女でスタメンが組める

美少女は大人気じゃないですか。
野球もたくさんの人が見ているじゃないですか。
 
ならば「美少女×野球」なんて、マスマーケットとマスマーケットの相乗効果で一見無敵の組み合わせみたいに見えるんですけど、なぜかヒット作の出ない死屍累々の修羅道なのですよね。美味しいとんかつと、美味しいパフェを組み合わせたら美味しいのかと思いきや、マズイ、みたいなもんですかね。
その中において、今もっとも美少女が野球やってるコンテンツとして熱いのは、ハチナイこと『八月のシンデレラナイン』でしょう。美少女が野球やってるゲームなんて他にほとんど無いので、時代を代表するゲームと言っても過言ではありません。しかも普段セルラン200位くらいをウロウロしているのに、何をトチ狂ったかアニメ化までしてしまう点でまさに唯一無二の野球ゲーと言えましょう。
 
まぁ、建前上は。
 
実際ハチナイをやってみると美少女ゲーらしく、イラストの良さと読ませるシナリオという、野球ゲームというよりもキャラゲーとしての側面が強いことに気付かされます。というより、結局ガチャ引いてスタメン強化してCPUを殴り続けるというゲーム性に、若干「野球かこれ?」という点もないではないですが、まぁ一応野球ゲームではあります。ヒットとかホームランとか書いてるし。守備位置とかもある。
 
で、そのハチナイなんですが、このゲーム、キャラクターにスポットを当ててシナリオを書くと変に闇が深くなるという謎の傾向があって、今日はそのあたりの話をします。
闇が深いと言っても「あははははは、私に生きている実感を感じさせてみせろよぉぉぉ!!」みたいなファンタジーな性格しているキャラクターが出てくるわけでもなく、登場人物はわりと喜怒哀楽のハッキリした普通の女子高生だし、なんかシナリオで無駄にレイプとか出てくる暗い話というわけでもないのですが、家庭環境に問題があったり、イジメだったりと地味に暗い。
 
「~で打線組んでみた」は一時期よく見たフォーマットですが、ハチナイは1ポジションに3~4人程度キャラクターがいるので、まさに当初の意味合いどおり選手で打線が組めてしまうんですよね。見ていきましょう。
 

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1番右翼手 倉敷 舞子(家庭崩壊)
俊足で投手も務め、攻撃に守備にと頼りになる倉敷先輩も、家に帰れば家庭が崩壊している。父親は他に女を作って家を出ていき、母親は娘に精神的に依存をして生活をしている。家族の関係改善を図りたい舞子が、せっせと貯めたバイト代で食事会をセットするも、スマホを気にする父親に母親が罵声を浴びせ大喧嘩。絵に描いたような家庭崩壊を見せられて金八先生かよと思うけど、本当にこれ野球のゲームなんですか?
 
 

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2番遊撃手 直江 太結(虚像の自分)
中学の頃の友達に再会して「今、投手をしていて皆から頼られていて…」と話してしまい、友達が練習を見に来たときにチームのみんなからリーダー扱いされることを演じてもらう羽目になる。口は災いのもと。ネットの世界でもハンドルネーム「棚尾ゆえ」を名乗り、頼りになる自分を演じる生活をしている。なぜかHR率が上昇する「一発の極意」のスキルを持っており、バントでホームランの絵が出てきて別のゲームを再現してしまう。
 
 

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3番投手 有原 翼(主人公)
本作の主人公。野球のことしか頭にない野球星人。その実力は高く、対戦した相手、肝心の有原は対戦した相手の存在自体を忘れていて心を傷つけることがよくあるナチュラル畜生。彼女の興味は野球という概念そのものにあるのであって、対戦した人間のことではないので仕方ない。ゲームにありがちな「設定だけ強いがゲーム上の能力は微妙」こともなく、設定同様どのレアも強い。現実は残酷である。
 
 

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4番三塁手 東雲 龍(有原翼被害者の会1号)
3人の兄のうち2人がプロ入りしている野球家族に生まれた野球エリートで、ぬるい練習をするチームメイトには厳しくあたる癖があり、「お前と野球するの息苦しいよ」と言われるタイプ。シニア時代は強豪チームに所属していたようだが、どれだけリードしても笑顔でプレイする有原翼のチームに逆転負けを喫したのがトラウマ。が、肝心の有原翼はそのことを忘れており、東雲が指摘しても全く思い出すことはなく、いたく傷ついた。
 
 

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5番左翼手 柊 琴葉(有原翼被害者の会2号)
東雲と同様、かつて有原翼のチームと対戦して破れている。その際に「世の中には才能というどうしようもない壁がある」と絶望し、一旦は野球を辞めている。クラスメイトが野球部に入ると言うので練習を見学した際に野球部を主宰する有原翼と再会するが、有原からは完全に忘れられており「はじめまして!」と、ひどいことを言われる。地を這う蛇の気持ちは、空を飛ぶ鳥にはいつまでもわかりはしない。
 
 

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6番中翼手 永井 加奈子(貪食の罪)
美少女キャラのウェストとしては異例の66を誇る圧巻のデブセンター。ハチナイで最も守備の低いキャラなのになぜファーストでもサードでもなく守備範囲の広いセンターをやらせるのか謎。HRを連発しやすくなる「おかわり」のスキルなど、明らかに西武のおかわりを意識している。昔はさらに太くて周りからも色々と言われていたらしく、男性が苦手な性格になった。ハチナイのことだから拒食症になるエピソードとかやりかねない。
 
 

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7番一塁手 野崎 夕姫(心が弱い)
大きな体に優しい心を持つキレンジャーみたいなファースト。もちろんおっぱいはデカい。足は遅い。ゲーム内では投手をやらせるととにかく直球が速く、最速で170km/hも投げるサウスポー。チャップマンくらい速い。練習についていく基礎体力がないことに加え、気が弱い態度が東雲の気に障るのか「甘えるな!やる気ないなら帰れ!」みたいな少年野球のコーチから言われる罵声をよく浴びせられていてつらい。
 
 

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8番捕手 椎名 ゆかり(カインコンプレックス)
「あはっ」が口癖の、いつも笑顔でみんなの人気者の美少女。しかし内面はスーパープレイヤーだった姉と比較されて育ったコンプレックスでドス黒く染まっており、一旦は野球を辞めている。高校でも野球部に入る気はなかったが、同じく優れた姉を持ちながら意に介するそぶりもない有原翼を見て心を変える。入部理由は「姉と比べて自分が劣った存在であるという、ゆかり自身が苦しんだ劣等感で有原翼も苦しむ姿を見るため」。
 
 

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9番二塁手 坂上 芽衣(イジメ被害者)
中学から野球部に所属しており実力は高いが、当初は野球に関わることを拒む。その理由は中学時代に受けたイジメ。このイジメのイラスト、グローブにハサミ入れられているところまではまだわかるんだけど、更にライン引きの中に捨てられてたっぽい細やかな描写が「お前もイジメ受けてたんか?」と開発に質問したくなる謎のリアリティ。ソシャゲ遊んでただけなのに、なぜかリアルなイジメ描写を見せられる!それがハチナイ!
 
 

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改めて振り返ると、『八月のシンデレラナイン』は長期間のリリース延期を経て、2017年に、8月とか言いながらなぜか6月にリリースされたゲームで、サービス開始から2年弱が経過し、ついに4月にアニメ化されることになりました。
最初は、画面に表示されたスコアボードの前に数字だけが並んでいくだけの「これ本当に野球が行われているのか?」という疑問しか浮かんでこないゲームでしたし、個人成績の表示すらありませんでしたが、2018年3月の大型アップデートで試合画面が実装されるなど、少しずつ「野球かもしれない」というところが出てきています。
 

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今では過去100試合の野手成績を見ることができるようになっているのですが、そこで実装された指標がなぜかRCとOPS。RCというのは走力も含めた総合的な攻撃力を表すセイバー指標で、それはそれで良いのだけど、なぜ防御率や盗塁数のような一般的な成績を実装する前から色々すっ飛ばしてRCから入るのか。おにぎりでも普通は梅とか明太子から商品化するだろうに、先にチーズおにぎりから売り出してきたような感じ。このアンバランスさ、実にハチナイ。
 
 

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ストーリーは、前述のとおり無駄に登場人物が心に傷を負ったエピソードを描いた話が多く、1番の家庭崩壊から9番のイジメまで切れ目のない打線はリーグでも屈指。
特に下位打線ながら8番の椎名ちゃんのエピソードはどれもネガティブで、心の闇マニアにはオススメの一品。椎名ちゃん、いい子なので外向きにはいつもニコニコ笑って明るい性格してるけど、心が病んでて事あるごとにすぐ自分の中でスイッチ入ってネガっちゃうんだよな。野球をしてないときは本当に楽しそうなのに。
 
 

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イラストは抜群に良いです。リリース以来イラストの品質だけが右肩上がりに向上し続けていてもはや怖い。特に「クレヨン絵師」と呼ばれる謎の絵師のイラストヤバイ。何かの間違いでハチナイが流行ったらクレヨンイラストの威力を世間が知って、クレヨンが一世を風靡することになるのにワンチャンあるくらいすごいぞ。
 
ともあれ、ゲームとしてみると、弱いCPUの木偶を殴り続けてポイント稼いでいく初期のソシャゲモデルから脱しきれていないゲームシステムに、これ野球ゲームである意味あるのかな?と思うことは1日に2回くらいあります。アニメだって日曜の深夜1時半とかいう放送時間は決して恵まれたものではないです。
 
でも、一つだけ確かなことがあります。
 
美少女が、野球をやっているんですよ。
それだけでハチナイを始める理由には十分じゃないですか。