当たり判定ゼロ

シューティング成分を多めに配合したゲームテキストサイトです

STG版 悪魔の辞典

【あい】自分の時間や金銭その他大切なものを捧げる祭壇。 

遊ぶ【あそぶ】何かを成し遂げたという達成感を得るために努力を重ねること。言い換えると、楽しみを獲得するために、わざわざ苦しみへ己を捧げる倒錯を意味する。 

当たり判定【あたりはんてい】「ここならば仕方ない」とプレイヤーに納得してもらえるであろうエリア。プレイヤーに気を使った結果、どんどん小さくなっていった。 

異常【いじょう】正常な状態でありつづけること。 

移植【いしょく】 少し手を加えてみることで古いファンになじられるゲームを作ること。 

撃ち返し【うちかえし】 手をかけずに難易度を上げる手段。一般的には敵機が発生させるが、『雷電』では自機が被弾して爆発した際に飛び散る破片に攻撃判定があり、自機が撃ち返しを行っていた。 

宇宙【うちゅう】 後半のステージであることをわかってもらうための背景。

宇宙人【うちゅうじん】 人類に虐殺されるために生み出されたバーチャル奴隷。類義語にゾンビ。

腕前【うでまえ】 その人物が実社会でどれほどのものを代償としているのか第三者が把握できる指標。多くを手に入れれば多くを失う。

懐古【かいこ】 画質の粗い映像を見たときに沸き起こる感情。

快楽【かいらく】 人が金銭を投じるに値すると感じる仕組みのこと。

会話【かいわ】 いかに自分がよく物事を知っており優れたシューターであるかを一方的に相手に吹聴する行為。

抱え落ち【かかえおち】 財産をたくさん残したまま死に、遺産が国に没収される相続税の一種。

記憶【きおく】 昔やりこんだゲームを遊ぶ際に発現する、自ら意図せず自分の体を動かす途方もしれない意思のこと。

決めボム【きめぼむ】 ゲームの一部を定例のセレモニーにする方法。

筐体【きょうたい】 内部に通電している賽銭箱。

協力【きょうりょく】 実力に優れたプレイヤーを最も簡単に殺すことのできる遊び方。

【くび】 「今のは何かの間違いで本当の自分の実力はこんなものではない」ということを周囲または自らに伝えるためのボディランゲージに用いられる体の一部。

喰らいボム【くらいぼむ】 「今押したって!絶対ボム押したって!」と文句をつけるプレイヤーを黙らせるために生み出された仕組み。

警告【けいこく】 仰々しい音とともに多くの場合英語が使われ、たいてい僅かな時間しか表示されないので何が書いているか読めないが、この後大変なことが起きることだけはわかる。すなわち人に物事を判断させるためには、文字などという大層なものは不要で、音で十分ということ。

幸福【こうふく】 最高のパターンで進めることができたとき、その後極めて高い確率で失われるまでに維持される一時の感情。

強欲【ごうよく】 過ちの母であり、成功の父でもある。

攻略【こうりゃく】 自分を人間からひたすら正確な作業を行う機械に変容させていく行為。

コンシュマー版【こんしゅまーばん】 1プレイ100円がかかっていないと、プレイヤーはすぐに命の重み、温かみを忘れてしまい、自機を殺すのにためらいがなくなる。

残機【ざんき】 今後与えられる苦しみの回数。

事故【じこ 】 自らの不手際を隠蔽し、責任の所在を曖昧にするための表現。

十戒【じっかい】 昔の偉人の教え。

  1. 適切な難易度を選べ!
  2. TVから1m以上離れよう!
  3. 「切り返し」を習得しよう!
  4. 死ぬ時も弾から目を離すな!
  5. 弾幕の隙間を見逃すな!
  6. ボムを抱えたまま死ぬな!
  7. 自機だけを見ていてはダメだ!
  8. コンティニューはするな!
  9. STGは1日1時間!
  10. 愛すべき強敵を持て!

 嫉妬【しっと】 自らの能力を向上させるための最も手っ取り早い手段。

自爆【じばく】 スコア稼ぎのために長時間の拷問を受けたボスが救済を求めて行う自殺。

順位【じゅんい】 ハイスコアという名の筐体の電源が切られるまでの刹那のみ存在するヒエラルキー

上級者【じょうきゅうしゃ】 価値観の凝り固まった獣。

初心者【しょしんしゃ】 自分の価値観を押し付けるべき羊。

処理落ち【しょりおち】 現実の時間の流れとゲームの中の時間の流れが異なること。現実の時間の流れが速くなったのか、ゲームの時間の流れが遅くなったのか確かめた人はいない。

衰退【すいたい】 「暇なのでこれから議論でも始めませんか」とする呼びかけ、または合図。主な議題内容は「誰に責任をなすりつければ良いか」。結論がいつまでも出ない点が便利。

スコアボード【すこあぼーど】 最高のパターンが組めたときに限って途中で死んで未クリアのプレイが1位になってしまうことを示す表。

脊髄反射【せきずいはんしゃ】 刺激を受けた感覚神経がインパルスを脊髄に送り、これが運動神経に伝達されて反射が起こる。具体的に表現すると、ミスをした時に首をかしげる動作のことを指す。

戦車【せんしゃ】 コンボが途切れそうなところに都合よく現れ、身を挺してコンボを繋いでくれる献身的な乗り物。

戦闘機【せんとうき】 絶望的な状況になってはじめて人類の最後の希望として投入される兵器。

妥協【だきょう】 捨てゲーを厭わないスコアラーと言えどもワンコインを惜しむ場合があることを背中で教えてくれる。

弾幕【だんまく】 敵を殺す以外の目的を持った弾。

チョーカー【ちょーかー】 儀式を施したものを用意し、呪文の詠唱を行うことでトランス状態に入ってSTGをプレイするために用いられる道具。

【て】 脳がゲームを遊ぶために用いるコントローラーのひとつ。そのうち必要なくなるかもしれない。

電気【でんき】 ニコラ・テスラもこういう使われ方をするとは想像していなかった技術。

二週目【にしゅうめ】 これまで接待を受けていたことを機械から教えていただくこと。

二刀流【にとうりゅう】 コインを2個入れて1人でプレイすること。ひとつのアタマでふたつの操作。対義語に二人羽織。ふたつのアタマでひとつの操作。

熱情【ねつじょう】 テスト前や仕事中になると湧き上がる「ゲームをやりたい」という気持ち。

倍率【ばいりつ】 初心者と上級者の差を天と地ほど広げる仕組み。

発狂【はっきょう】 この世は狂ってる人間が一番強いということを教えてくれる振る舞いのこと。

平等【びょうどう】 ゲーム開始直後のみに訪れる一瞬の期間。

物理演算【ぶつりえんざん】 現実の世界が再現されていることをプレイヤーに感じさせる仕組み。ただし本当にその物体がそんな落ち方をするのか現実で見たことがないからわからない。

捕鯨【ほげい】 グリーンピースにまだ見つかっていない鯨を殺す遊び。

ボム【ぼむ】 問題を先送りにすることができる技術。

リプレイ【りぷれい】 自分が思ってたより自分のゲームプレイが上手くなかったことを示してくれる現実。

労働【ろうどう】 他人の意思のもとに行われる場合は対価として金銭が貰えるが、自分の意志のもとに行う場合は対価がもらえないという点に違いのある行為。ゲームのプレイは多くの場合後者に属する。

死んだらムラサキをもう一度遊びたい

「完璧」とは何だろう。

思えば世の中に完璧なんてものはないのかもしれません。『メジャー パーフェクトクローザー』は完璧どころか野球部分すら怪しかったですし、かつてキン肉マンは、完璧超人のタッグであるヘル・ミッショネルズ戦で「おまえたちもようやくわかったろうぜ、この世の中に完璧などというものがないことが―っ!!」と言っていました。ゆでがキン肉マンにそこまで言わせるのならそうなのかな、と思わなくもないですが、果たしてそうなのでしょうか。 辞書で「完璧」を調べるとこうあります。  

①欠点が少しもないこと、完全無欠  

②カタテマ作『ムラサキ』

ムラサキ!! えらく具体的に書いてますね。お手元の辞書もぜひ開いてみてください。必ず書いてあるはずです。

『ムラサキ』は一言で言うと調和のゲーム。断片的に見せられる設定、登場するキャラクター、音楽、すべては5面のラストバトルのために準備されたもので、ラストバトルを戦いながら、プレイヤーはすべての収束を1点で回収することになります。プレイヤーがすべてを終えたとき、そこには一切食べ残しのないキレイなお皿があって、「完璧……」というため息以外何も出てこないことでしょう。「いつかあの場所で」の楽器が1つずつ増えていく演出、良さみしかない……。

この完璧なゲームに何か刺激を与えるとどこか危ういところで成り立ったバランスが崩れて完璧が完璧じゃなくなってしまうんじゃないか、砂で作ったお城は消えてしまうんじゃないかみたいに思わせられるあまりの調和の取れっぷりに、続編が出るなんて考えてもみなかったですけど、ムラサキの続編ですよ、続編。そんな幸せなことがあっていいはずが……。

あった!!! ムラサキ劍!!!!

システムは『ムラサキ』同様、ショットは1発しか打てず、赤や青のブロックに弾をぶつけてビリヤードのように連鎖させ、爆発させるゲームです。

たとえばこの画面だと、左にある青いブロックを中心から左あたりの場所で一発打てばビリヤードみたいに玉突きで上にあるブロックとぶつかっていったあと連鎖爆発起こして敵弾も敵も全部消えます。ブロックは時間の経過とともに湧いてくるので、ポイントを見極めてショットを発射、連鎖、爆発、楽しい!

前作と異なるのは、赤や青のブロック自体に当たり判定がなくなって敵弾だけに気をつければ良くなった点と、ブロックの色の種類が基本赤と青だけになってシンプル化した点ですかね。おかげで、本来連鎖を作る材料であるはずのブロックに当たって死ぬこともないし、ブロックの色が少ないので連鎖が作りやすい。

ゲームって続編になると前作のシステムに要素を付加して複雑になるパターンのほうが多いと思うんですけど、削ってシンプルになるケースって珍しい気がしますね。ブロックの当たり判定がなくなったことは、快適に遊べる一方で、ムラサキ特有の「考える要素」が減った気もするので好みの世界はあるかも。

連鎖が心地よいパズル感は『いりす症候群』をベースにしているような面もあり、カタテマお得意の分野ですが、『ムラサキ』はSTGにしてはショットを打つタイミングを図れるような時間がゆっくりと流れるゲームだけに、「今タイミングミスったな」という後悔する余地の大きいゲームです。

成功したか失敗したかすぐに教えてくれるのはゲームの素晴らしいところです。それに、良いゲームというのは、自分の選択に責任を持たせてくれること、そして失敗に気づかせてくれるゲームのことだと、亡くなったうちの犬も言っていました。

条件を満たすと徐々に解除されていくエピソード集も継続。「設定見てるだけで泣く」とさえ言われる不条理な内容が淡々とした文体で表現されるコレクション要素はムラサキのもう一つの本体。

いや文章一本でこれだけ実績解除に駆り立てる力すごくないですか。これ退屈な文章書かれてたらコレクション要素の欠片もないんですけど、2バイトの文字の積み重ね見るためだけに実績解除させるてつさんの筆力恐るべしですよ。あまりにも全部読みたいので『ムラサキ』も『ムラサキ劍』も泣きながらフルコンプした。前作の6面のお姉ちゃん戦やりすぎてツギハギプリンセスが頭から鳴り止まなくなったぞ。何回聞いても飽きないめっちゃいい曲で良かった!

ちなみに3面でライフ全開でボス前まで行くと、デカい魚が通り過ぎって行ったあたりで、画面端に海浬か沙月でいずれか選択しなかった方のキャラが出てきて会話が始まる隠し要素があります。前兆なしに唐突に始まるので注意。

実はここの会話がエンディングでの沙月のある発言に繋がってたりするので、そういう裏設定的な流れに意味を感じちゃう人は見といたほうが良いです。

昔、ファミ通の編集長やってたときの浜村通信が「君はファイアーエムブレムをやったことがあるか? なければ君は幸せだ。これからファイアーエムブレムを体験することができるのだから」と書いてたのが印象に残ってるんですけど、人間一度経験すると「知ってしまう」というデメリットがあって同じ体験に対してどうしても感動値が落ちてしまうという欠点があるのですよね。

「覚える」という能力は種が生存するのに最適であれど、生存が確定的な世の中で生を楽しむには最適ではない。ですので、正直言うと、どうしてもムラサキで初回に最後までたどり着いたときほどの心の震えはムラサキ劍に感じることはできないところがあったんですけど、それはゲームに問題があるのではなく、人間に問題があるのですよね。

人間が年をとるというのは、楽しみのパターンを経験して埋めていくことで、自分が楽しみを感じる要素を潰していく性質があって、それが故に年をとると心を震わされる機会がだんだん減っていって、不感症になってしまうのではないですかね。だから多分、人間が不老不死を得てもそれはきっと楽しみのない地獄。ならば死ぬことですべてを忘れて輪廻転生できるというワンチャンに期待して、あの楽しみをもう一度最初から体験できることに賭けてしまうような気もします。 あるいは人類は既に一度不老不死を手に入れたあと、それに不満を感じて輪廻転生の技術を開発した結果、すべてを忘れて我々がここにいるのかもしれません。だとすると先祖に感謝しなければなりません。

もしムラサキをやっていないなら幸せだ。あなたはムラサキをこれから体験することができるのだから。

生涯を添い遂げるゲームはありますか

年を食ってくるとご飯を食べる量が減ってきますが、代わりに昔に思いを馳せて暮らす時間が長くなって来るというバランスが設定されているのが人生というゲームです。

「物質的な食事」と「精神的な食事」の合計値は常に一定であり、子どもはたくさんご飯を食べて過去を振りかえることに人生を費やさず、老人は食の楽しみの代償に思い出話の楽しさを知ることができたわけです。

ゲームとともに生まれ育ったからには、それぞれの人間には一生遊び続けるゲームのシリーズというものは存在して、我々が死を目の前に迎える頃には20作も30作も遊び続けたシリーズがあり、その思い出話が残りの人生の精神的な食事になるのではないかと思うことがあります。自分の上の世代とかを見て考えても、おそらく人間は世代によって思い出話の内容が変わるだけで、思い出話をすること自体はおそらく避けられない生き物…。

未来に待ち受けるのが思い出話しかできない老人ライフであるならば、せめてその思い出話をしながら自分たちの人生を彩ってきたコンテンツに囲まれてそのまま死にたいじゃないですか。死出の旅には花なんていらない、ただコンテンツがあればいい。ちょっと前にやってた『セハガール』なんてのは未来のゲーマー老人ホームを疑似体験させてくれたアニメでしたけど、ああいう未来をこそ我々は獲得したい。

ついでに老人話をすると、今の老人ホームって趣味が混在している色んな人を押し込んでいるから、いわゆる「会話のプロトコル」が合わない人たち同士になっていて楽しくないんじゃないですかね。なので最大公約数的な娯楽である「歌」とか「トランプ」とかでしか楽しみを提供できない。非電源系ゲームを提供したところで「今更ルール覚えるのも面倒くさい」と興味ない人が殆どでしょう。 まだ若い大学生ですら「サークル」という形で趣味で分断することにより何とか集団を形成しているのだから、嗜好が硬直化した老人にとって趣味も人生もバラバラだった人たちで群を形成するのはさぞ辛かろうと思います。

ですので、サークル活動のように趣味で分断されたコンセプト老人ホームのような形態の方が人間は幸せになれると思うし、ニーズは実際にあると思うので、起業家の皆さんはぜひ未来のためにそういうビジネスを頑張っていただきたいです。ゲーム老人ホームに入ってダラダラ暮らせる未来が待っているならば年を取るのも怖くなくなるね! いいな、コンセプト老人ホームだぞ!

長くなりましたけど、おそらく自分にとって生涯添い遂げるゲームになると思われるのがパワプロで、初代パワプロからずっとやり続けてきていますが、この度めでたく2018版もリリースされるに相成りました。おめでてぇですね。 あと何年生きるかわからないけど、生きてたら絶対将来実況パワフルプロ野球2050とか遊んでるんだろうなぁ。というか書いてて思ったけどパワプロ2050とか数字増やしただけなのに語感ヤバいな! 言葉的には完全にサイバープロ野球感ある。めっちゃエレクトロであり、アンドロメダ高校の世界観だ。いや、実際その時が訪れれば普通の野球やってんだろうけど…。

まぁそんなわけでパワプロ2018ですよ。ゴールデンウィークどこにも行かずに、家でプロ野球見ながら終わったらスマホでハチナイの試合を走らせながらパワプロやるというバトルスタディーズもびっくりの野球漬けの毎日やってたので、今回もざっと感想入れていこうと思います。

パワフェスは、ほぼ前作の2016仕様そのままながら、余計なルーレットとか付いてきて、運が悪いと「大差付けて勝ったのに仲間になるのは敵のキャプテンのみ」みたいなことが起きるのがストレス。

回避法としては、全部同時停止させずに左と真ん中のルーレットを一つずつ止めながら、一番右のルーレットを止める際に「勝ったら3人」が9時の方向にあるタイミングで「option」ボタンを押せば、目押しで「勝ったら3人」を止められるくらいですかね。

ただ、そういう回避法使わないといけない時点で苦行ポイント高い。目押しめんどいねん。倒したチームのキャラを仲間にしながらトーナメントを進んでいくという冥球島方式の時点で面白いので、余計な要素は料理が油っこくなるだけという悲しみ。

 

ただ結局その冥球島方式自体が面白すぎるので、何周も何周も遊んでしまうですのよ。

パワプロをずっと遊んできたプレイヤーにとっては、過去のパワプロキャラと戦ったり仲間にしたりできるのは、それだけで思い出老人ホームの世界として楽しすぎるのよね。打席に立つたびに実況に読み上げられるキャラクターのエピソードとかつい聞いてしまう。友沢vsみずきの対戦だったら対戦中に特殊な実況が読まれるなどの演出もあり、キャラゲーとしての完成度は高い。

それだけに最近パワプロ遊びだした人にはわけわからんところはあるかもしれないけど、むしろ昔パワプロ遊んでて今遊んでいない人こそパワフェスを一度遊んでみてほしい。自分の脳にある過去の思い出とミックスして遊ぶゲームですよ、これは!

あと、過去のシリーズのキャラを持ってくるという体裁にすると、女にモテるキャラ付された選手が多すぎ問題。ミートの高い器用なショート(サブポジでセカンドとかサードができがち)とかエグザイル並に増殖してるし、イケメン属性ピッチャーの数はもはや不明。アゴがデカイ奴は大体パワーヒッター。このまま増え続けるとパワプロ2050のパワフェスとかイケメンだけでファランクスが組めそう。同じ顔の主人公とデブのキャッチャーとヒロインが毎回いるというあだち充現象に代表されるキャラクター構成の繰り返しはサクセスにおいても似たようなものであり、その作りを続けていくことが今後のパワプロに呪いとなって降りかかりそうな気がする。「あだち充の呪い」と勝手に名付けよう。

ちなみにパワフェスは難易度が高いという意見もちょくちょく聞いたので、一種の攻略法みたいなのも書くと、投球は緩急とコーナーです。プロスピやってた人だとわかると思うけど、パワプロも(おそらくだけど)内部ステータスとして緩急ゲージのようなものを持っていて、速い球、速い球と続けると、CPUが内部で持つ緩急ゲージが「速」の方に寄っていって速い球に強くなるんですよね。

そこでチェンジアップのような遅いボールを投げると空振りする確率が高くなります。だから、0-2に追い込んだシーンがあったとしたら、インハイのボールゾーンにストレートを2球続けた後にアウトローにチェンジアップを落とすと良いです。

左右のコーナーも同じで、アウトローが打ちづらいからと言ってアウトローを続けるとCPUの目線がアウトローに寄るので、適度にインハイを織り交ぜると良いです。やりすぎると投球も作業ゲーになってしまうので、左打者にバックドアのシュート入れて遊んでみたりとか、リアルっぽい投球するのが一番野球感あって良いよね。

サクセスはついにボイス搭載ということでテンポ悪くなるかと思ったけど、思ったよりストレスないし、ボイス入って良くなったね。市枝いちごの口癖である「○○、○○です!」のリフレイン表現の良さは、ボイスがあることで味わいが全然違った。ただ、会話フェーズで声ありなのはいいけど、試合まで声ありにしてしまったから、1球投げるごとに「おりゃあ!」みたいな男の掛け声を聞かないといけないのはちょっとつらい。

前にもどっかで言ったことあるけど、自分はパワプロのサクセスやる時間を捻出するために高校で野球部辞めた人間なんで、サクセスにはわりと思い入れがある方だとは思います。その人間から見ても、このご時世になって3年のサクセスはさすがに長く感じる。ここ最近のサクセスが1年間だったんで、昔と比べて物足りなさを感じてたけど、我々は既に短時間で幸福回路を全開にする最近のエンターテイメントに脳が飼いならされてしまっている。パワプロが変わったのではない、変わったのは我々の方だったのだ…。

一方で一番変わったのが、実は栄冠ナイン。明らかにCPUの打撃の思考ルーチンが弱まっており、三振率が高まって全体的に打率が下がったことで投手戦になりがちという大きなゲームバランスの変更がある。かと思えばオートプレイだと打ち込まれたりして、難易度もシビアで甲子園に行くのすら大変なリアルさ。昔こんな難しかったでしたっけ…。『ラストイニング』の鳩ヶ谷監督が神に見えてくる。

今作はエラーの発生確率が高く、捕球Gだと野球にならないくらいポロポロしてしまうので、性格内気の選手を集めて亀のように守備を固め、イニング終盤で魔物に襲いかからせてエラーの発生を祈るという戦法が強い。アフリカの呪術師か。

ちなみに今作から、投球画面で俯瞰視点というメジャーリーグ中継みたいに真上から見る視点が追加されており、良いです。リプレイの際の変化球の曲がり方とか打球の飛び方も見てて楽しい。野球ゲーム部分で不満があるとしたら全力ストレートが球威高すぎて打球が飛ばないから強すぎるというという点くらいですけど、それは今後のアップデートで修正予定らしいんで、全体的に良いバランスに仕上がってるんじゃないかと思います。

パワプロって初期の頃は、ヒットと言えばセンター前ヒットで、一二塁間と三遊間抜けるゴロヒットが殆ど出ないバランスだったりしたのが徐々に改善されて、今ではどの方向でもヒットが出るようになったり、カーブやチェンジアップがただの打ち頃の球だったのが、パワプロ2011くらいあたりから緩急で空振り取れるボールになってたりと、地味に本来の野球部分で細かい進化を遂げてきたゲームだと思うんですよね。

シリーズを続けていく中で新しい取り組みやゲームバランスの変更なんかをやらないわけにはいきません。毎回同じ仕様のゲームを買う人はいないし、変わらないということは自ら死を選んだに等しいので、ゲームというのは生き延びるためには変わり続ける必要があるのでしょう。

時にはクソみたいなゲームモードやクソバランスになることもあるでしょう。今回だって全力ストレート強すぎ問題のほか、栄冠ナインのバランスもうちょっと直してもらいたいし、能力アップの画面で動作がモタつくのも改善してほしいところある。しかし、科学の発展には犠牲がつきもの。逆説的ですが、生き残るためには失敗をする必要があるのです。

そしてパワプロは生き残り、パワプロ2050、パワプロ2060とリリースされるにつれ、SFC時代から遊び続けてきた多くのプレイヤーがその人生に幕を閉じていく。 その時きっと、死ぬ間際こう思うのでしょう。

「何かパワプロやってるだけで人生終わった気がする」と。

野球賭博2018

唐突に安楽が開脚前転ができないことを教えてくれるスラッガーの選手名鑑は最高。 野球賭博とか若干馬鹿にするタイトル毎年つけてたら本当に野球賭博の解禁検討しだすのな。ランダムとかいう面白みもなんでもないクジ方式とかじゃなくてぜひ12連単でやってほしいですね。というわけで今年も当たったときドヤ顔できるように12連単置いときます。 ちなみに順位の計算方法は想定レギュラー、控え、ローテ投手、リリーフ投手の3期WARの平均に35歳以上の選手は75%の掛目を入れて、あとは個人の独断と偏見でプラスマイナスを加算減算して出した数字で並べてます。
 
1位 東北楽天ゴールデンイーグルス(昨年順位:3位)
攻撃力に難点があるものの、則本岸の2枚看板を中心とした投手力はリーグNo.1。安仁屋算で言えば、則本岸がそれぞれ15勝、美馬藤平でそれぞれ10勝、その他先発で合計15勝、リリーフで15勝してくれれば十分優勝に手が届く。というかポイントは藤平なんですよ。高卒2年目に2桁勝てというのは酷なところはあるのだけど、ルーキーの去年の投球内容があまりにも良すぎて期待してしまう。43イニングしか投げてないとは言え、先発投手で奪三振率9.0超えは将来のエースの資質十分。一方打線はリーグで下から数えたほうが早いレベルで、大きな補強もなく攻撃力不足は解消されず、茂木ペゲーロが何とか通年で出場できることを祈るのみ。オープン戦大活躍の内田は、去年2軍で3桁の三振を喫した打者なので、シーズンでもブレイクが続くのは期待しづらい。
 
2位 福岡ソフトバンクホークス(昨年順位:1位) 人間が年を取ることから人間の集合体であるチームにもピークというものが存在するけど、ホークスの場合、今のチームのピークは2016年だったのではないかという印象がある。特に松田が年々打撃成績を落として守備範囲が狭くなっている点が気がかり。内川も今年36歳、そろそろ成績も下り坂に入ってくる可能性がある。とはいえ、長年ウィークポイントだった捕手が甲斐の成長で埋まったり、上林誠知が一軍でも通用するようになったりと世代交代も着々とできており、総じて盤石。ローテ投手には、千賀・東浜・武田・バンデンハークとエース級がズラリと並ぶ。
 
3位 オリックスバファローズ(昨年順位:4位)
そろそろ吉田正尚が通年出場するシーズンがあってもいいのでは、という順位予想。吉田正尚は打撃のアプローチ見ても、空振り率は低く四球率は高く、長打率も高いという、ホークスの柳田やライオンズの秋山に匹敵するほどいい打者だと思うけど、すぐに腰痛でどこかに行ってしまうのが難点よね。フルシーズン出場するだけでリーグの勢力図を書き換えるだけの威力はあるはず。マレーロも通年でいるので、野手陣の伸びしろはある。投手陣だと金子千尋が成績下降線なのが気になるけど、シーズン後半から一軍で出てきた山本由伸が面白い。二軍とは言え、防御率0.27を叩き出すのには何かあるはず。
 
4位 埼玉西武ライオンズ(昨年順位:2位)
野上以上に牧田の流出が痛い。野手陣は言うに及ばずリーグ屈指なので、一昨年の岸といい、野上、牧田が投手陣に揃っていれば…とも思えてしまう。ただ、野上の代わりに巨人から来た高木勇人は特殊な変化球持ちなので、巨人のときもルーキーの時に月間MVP取っていたように1年目はそれなりにやりそうな感じある。野手陣だとおかわりが年々成績を落として衰えてきているっぽいのが気がかり。若いイメージあるけど、いつの間にかおかわりも35歳なんやね…。昨シーズンはメヒアも調子悪かったし、山川穂高はさすがに出来過ぎの面があったので、秋山浅村は大丈夫にしても、クリーンナップの長距離砲系が崩れてしまうと一気にストロングポイントの打線が壊れる目もある。
 
5位 北海道日本ハムファイターズ(昨年順位:5位)
昨シーズンは大谷不在の予行演習みたいなもので、今シーズンはまさに本番。それにしても昨シーズンのエスコバー、谷本、メンドーサの放出に始まり、増井、マーティンまで抜けるともう投手がいない。防御率4点台の有原がエースではAクラスなんて見えやしないどころか、ローテに1軍級の投手を6枚揃えるのも苦慮するレベル。リリーフで獲ったトンキンはメジャーでの高い奪三振率を見るとパットンを彷彿とさせるけど、そもそも出番がない可能性がある。打線は西川近藤を始めとして、昨シーズンはさすがに悪すぎた中田翔さんの復活やレアード、それからメジャーでの実績があるアルシアもいるけど、とにかく投手の懐事情に苦慮しそう。
 
6位 千葉ロッテマリーンズ(昨年順位:6位)
オープン戦の成績はいいけど、さすがにフルシーズンともなると戦力の差が出てくる。日本人選手の実績は乏しく、ドミンゲスやボルシンガーがタイトルクラスの活躍してようやくAクラスが見えてくるレベルだけど、両選手ともさすがにそんな成績はムリよね。特に打撃陣の長打力の無さが辛い。他球団が柳田とか吉田正とかウィーラーとか揃えている中で、明らかにクリーンナップで見劣っており、要はその相手に勝とうと思えばそれ以外の点で相手よりもストロングポイントを持たなければならないのだけど、それも見当たらない。ルーキーの安田は思ったよりも早くチャンスを手にすることになるのでは。
 
1位 広島東洋カープ(昨年順位:1位)
オープン戦の調子は悪いけど、実績ベースでの野手のWARはリーグでも圧倒的なので心配なし。タナキクマル鈴木誠也のうち2人以上が故障しなければ優勝は固いのでは。タナキクマルはいずれも若いのでポジションの補強所は自然と絞れてくるとは言え、坂倉がいながら中村奨成獲るとは思わなかったけど、これほどの可能性を秘めた捕手が2人もいるというのは凄まじい。捕手というポジションは、優れた選手が出てくると他のチームとのアドバンテージが大きくなることから、ヤクルトの古田、ホークスの城島、巨人の阿部、いずれもチームの黄金時代を築いたけど、この2人のうちいずれかが出てくるようなことがあるとカープの黄金時代は長く続くかもしれない。
 
2位 読売ジャイアンツ(昨年順位:4位)
リーグ屈指の投手であるマイコラスが抜けた穴は大きいけど、去年いないに等しかった山口俊と澤村が戻ってくることに加え、野上とゲレーロの補強もあり、上原も帰ってきた。陽岱鋼もシーズン後半だけということはないだろうし、総じて去年よりは上積みがある。特にゲレーロはウィークポイントのレフトということもありピンズド補強。岡本はまだ確実性に難があるものの、明らかに衰えを見せていて特に走塁守備で足を引っ張っている阿部を代打専に持って行く決断ができれば、チームとしてはプラスだろう。どうでもいいけど、今年からセカンドに定着しそうな吉川尚輝の「運動神経いいヤツ」な雰囲気すごいね。クラスに1人はああいうタイプの奴いたよな。
 
3位 横浜DeNAベイスターズ(昨年順位:3位)
去年は対広島の9回裏3連発あたりから完全に流れが来たという感じでそのまま日本シリーズまで行ってしまったけど、ああいう一過性の奇跡に頼らないためにはウィークポイントの補強が重要で、その点大和の補強は的確。倉本から大和ということで相当失点は減りそう。これで懸案の二遊間問題が片付いて…と思ったら倉本二塁コンバートという衝撃。まぁ遊撃手で使うよりは全然いいと思うけど…。投手陣は今永が開幕出遅れという話もあるけど、ルーキーの東は即戦力だと思うし、枚数自体は揃っていないわけじゃない。それにしても去年の外国人はパットン以外は外れだと思ってたけど、ウィーランドの大成功が意外だった。結局OPSも.739と並のレギュラークラスだし、DH使ってるようなもんだからこれは引き続き大きなアドバンテージになりそう。
 
4位 東京ヤクルトスワローズ(昨年順位:6位)
去年は96敗と、負けに負けた。5ヶ月程度のシーズンで96敗というのはほぼ毎日負け続けているような感覚だったのでは。しかしブキャナンの13敗、原樹理の11敗はいずれも神宮をバックに防御率3点台にまとめながらのものだし、そこまで投手陣が揃っていないわけではない。今年は川端も戻ってくるし、いわゆる「ヤ戦病院」状態が解消されれば、案外ひょいっと上に行ったりする力はあるんじゃないかと思う。あと、青木宣親が帰ってきたのは大きい。年をとって衰えたという見方もあれど、メジャーで2割8分打てる打者が日本の環境に慣れてきたらそれなりの数字は残すだろう。NPB通算打率.329の打者の技術を侮ってはいけない。
 
5位 阪神タイガース(昨年順位:2位)
明らかに特にリリーフを中心とした投手力に偏ったチーム。リリーフ陣は石崎ドリスあたりは投げてる球が別格だなというところあるし、マテオ高橋聡文桑原と面子も揃う。糸井福留鳥谷と出塁率タイプの選手が揃っているので、それを返すクリーナーの打者が必要とされており、その役目がロサリオに期待される。ただそのロサリオがオープン戦で散々なのが気がかり。KBOで無双して日本に来た瞬間サッパリというのはロッテのナバーロが思い起こされるだけに、ナバーロコースにならないことを祈るのみ。糸井鳥谷は37歳、福留は41歳とチームの中心打者が高齢化しており、いつ成績が急落してもおかしくないことも気がかり。
 
6位 中日ドラゴンズ(昨年順位:6位)
かつてメジャーで開幕投手を務めたジーはよく獲れたねという感じだけど、若干下り坂に入っているだけに、一人でチームを浮上させるだけの成績を期待するのは厳しい。打撃力守備力ともにリーグの他のチームと比して優れているというわけでもなく、全般的に苦しい。落合時代以降の立て直しにはまだ時間がかかりそう。打線はゲレーロが抜けて迫力が落ちたので点を取るには一工夫必要になりそう。少なくとも低出塁率の京田を上位打線で使うのはやめたほうがいいと思う。あと、去年も同じこと言ってた気がするけど、ホームランバッターなのに空振り率が低いビシエドは急に成績向上する余地ありそう。 そんなわけで今年も野球の季節だー!

口を開けながらVRができない

百聞は一見にしかずオブザイヤーの近年における頂点として君臨しているのがVRというコンテンツだと思うんですけど、「面倒くせえ」というハードルを乗り越えてみてみると、支払った面倒臭さの対価以上のリターンは得られます。

特に大型筐体は視覚聴覚だけじゃなくて体感が乗ってくるので、向こうの世界に持って行かれる感が1段階上がって良いです。でも、どこもそうなんですけど、風を演出するために筐体の前にサーキュレーターが置いてたりして、ゴーグル付ける前に目に入ってくる光景の手作り感が一番良さみある…。

前にハウステンボス行ったらVRコンテンツ面白かったんで、東京戻ってから渋谷の『VR PARK TOKYO』と池袋のサンシャイン60(なぜか展望台登ると大型VR筐体がいくつか置いてる)行ってきたんすよ。

大型筐体のVRって、クソビジネスライクな話をするとそれほど儲かるとは思えなくて、遊ぶための工程やルールが複雑すぎることが要因で、1人2人の人間が遊ぶのにスタッフも専属で同じように1人2人ついているような状況なので、それでいてサンシャイン60の1回400~600円だったり、『VR PRAK TOKYO』の90分遊び放題3,000円前後だったりするのは破格の安さ!

大型筐体も汎用品じゃないので安いものではないし、何より世の中で一番高いのは人間っすからね。多分人間側のマス層が当たり前に使えるほどVRの使い方が普及するか、VR側の使いやすさが進化して誰でも使える道具になるかのいずれかの状況にならない限り手間がかかりすぎるので、VRはビッグマーケットにならないと思われるんですが、ともかくも現状ではこんな値段でやっていけるのかと心配してしまうほど安い価格で専属スタッフがついて、関口宏のフレンドパークのゲスト並に手厚いサービスを提供してくれているわけです。

VR PARK TOKYO』だとレーシングや鉄骨渡りのコンテンツそれぞれにスタッフさんが付いてくれて、遊び方について随時指導してくれるし、野球のゲームだと実況までしてくれるわけです。こんな値段しか払ってないのに、一体儲けはどうなっているのか。この3,000円からスタッフさんの時給、渋谷の高い地代、筐体の減価償却費、光熱費、小道具の諸経費……それらを引いてようやく利益……。他人事なんでどうでもいいですけど、社畜根性が勝手にそろばんを弾いてしまう…。休日なのにつらい…。

そんなわけで現状大型筐体VRはかなりお得な価格で提供されていると思うので、ぜひ遊ぶと良いのではないでしょうか。

ただこの手の体感VRにはひとつ大きな問題があるんすよね。

とても、とても大きな問題が…。

これ。

なんでVR遊んでる人の絵ってどいつもこいつも口をポカーンと空けてるのか問題。インタビュー受けてる時にろくろ回すIT企業の経営者並に定型化しているところがある。

広告の絵面的な話だと、顔のうち外に出ている部分が口しか無いから口で楽しさを表すしか無いというのがあるのでしょう。口だけで楽しさを表現できるのが上手い人には、手タレみたいな需要もあることでしょう。

しかし我々はどうすればよいのか。

「うおおおすげええ!」みたいに叫びながら楽しく遊べるかというとムリなわけです。いや、実際たまにそうやって遊んでいる人見かけるんですけど、ムリなわけです。内心「うおおおすげええ!」ってなりながら「ん? これがVR? おお、すごいね。うんまぁまぁいいんじゃない」くらいのリアクションしちゃうでしょ。ゴーグル付けて大騒ぎするの恥ずかしいという気持ちがすべての行動を押しとどめようとしてくる。

一方で、大型筐体のVRには、必ず専属のスタッフが付いてくれて遊んでいるところの実況までしてくれるんですよ。何というか「楽しいです!」ってしておかないとスタッフさんに申し訳なさあるじゃないですか。無表情でコンシュマーゲームやっているのとわけが違うんですよ。相手がいるんやで!

そう、これが『スタッフさんが親切にサービスしてくれてるので楽しんでいるようにしなきゃという気持ち』と『内心冷めてる気持ち』という、外部と内部の心のコンフリクト問題……。この問題を適切に解決し、正しい振る舞い方を身に着けない限り、我々は心から体感VRを楽しむことはできない……。

人に気を使わずにすむVRの世界に入るために人に気を使っている不思議。

バーチャルリアリティというのはね、誰にも邪魔されず、自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで、静かで、豊かで…。

入ったこと無いからわかんないですけど、きっと老人ホームでも同じ問題があることでしょう。

老人ホームってボケ防止のために「き~ら~き~ら~ひ~か~る」とか子どもの歌を歌わせたりするみたいですけど、やっぱりあれも「俺は○○商事の専務までやった男だぞ」とか思う心と「でもここで事を荒立てたら頑張ってるスタッフさんに申し訳ないし」と思う心が衝突しながら「き~ら~き~ら~ひ~か~る」とかクッソ冷めた心で歌ってるんじゃないかと思うんですよね。

つらい。未来にはつらさしかない。でもそうしなければならないのだ。

どうか一人でVRに入ってそのまま死ぬまで楽しめる機械が、老人になるまでに完成されていますように。

そんなわけで自分の中に体感VRプチブームが来てたんで色々調べてたんですけど、その中で今一番アツいのがこれ。

FIRST AIRLINESは、地上にいながら航空・世界旅行の体験を味わうことのできる世界初のバーチャル航空施設です。およそ110分のフライトの中で、NY、パリ、ローマ・ハワイ様々な国の様々なアクティビティを五感を使い、楽しみながら現地料理にあわせ、一流のシェフが趣向をこらした機内食をお楽しみいただけます。
VRで世界旅行を楽しめる『FIRST AIRLINE』というサービスです。そりゃVRというのはある種の「ごっこ遊び」みたいなところあるんでしょうけど、VR海外旅行を集団でやるというのはエッジが効きすぎてもはや一種のアート性まで生まれてやしませんか。

明らかに自分の脳は今いる場所が池袋だと認識している中で「お客様、ニューヨークに到着いたしました」という声を聞いてどんな顔をすればいいのだろう。間違いなく地上にいる状態で出された機内食機内食を感じることができるかどうかは、もはや自分自身にかかっているのだ。

自分は試されている。これは現実がVRに再現されているシステムではない。VRの情報が現実を侵食し、VRの世界を現実でも維持するために自分自身が適応しなければならないシステムだ。

この現実とVRの複合により作られた「ごっこ遊び」の世界を守るためには、『VR PARK TOKYO』で気を使うというレベルではない配慮が要求される。ゴーグルを外しても気を抜くことが許されないのだ。お前は今ニューヨークにいる。

これはルールの転換。自分がVRに行くのではなく、VRが現実に来るのだ。

ただ、なぜその発想を池袋で機内食を食べるサービスに使おうと思ったのかが最大の謎なんですが、技術の黎明期には往々にしてこういう試みが生まれて良いですね。